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隠形吸血姫、クラス転移で勇者達の敵になる?〜いえ、戦力差が過ぎるので私は旅に出ます!〜  作者: 白ゐ眠子
第七章・面制圧と蹂躙戦。

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第161話 眷属の願いを叶える吸血姫。


 第八十六流刑島のダンジョンを踏破した後の私達は時計回りで後始末と踏破を繰り返した。

 後始末とは使い魔の成れの果ての回収だ。

 これは(カナデ)翔子(ショウコ)の回収後に判明した事だが、どこもかしこも異常体という扱いで人体実験ののち廃棄処分を行っていたのだ。


「全員分の遺骨回収完了〜」

「結局、皆も仏像だったり彫刻だったり、果ては子供のパズル(おもちゃ)だったね〜」


 肝心のダンジョンは案の定の簡単さで後始末を含めて午前中には全て片付いた。といっても四十八時間あるこの世界で見た場合なので異世界式で見たら一日掛けた事になるけれど。


「そうね〜。異世界人だから他と違うって示したかったんだろうけど・・・焼き切った肉やら臓器を晒したまま遊ぶ子供を見た時は戦慄したわね。組み上げて人を作るって猟奇的過ぎるわ」


 いや、ホントに。子供がなんとも思わず傷口やら臓物を触っていたのは気分の良いものではなかった。所詮は犯罪者の子供だからだろう。

 頭だけは生かし続け水槽に落とされていた。

 あれも延命魔道具かなにかなのだろう。

 ちなみにパズルだったのはキョウだった。

 それをキョウに伝えると──、


『姫を拐って倍返しよ!!!』


 というように猛烈に激怒していた。

 だから今度は覚醒状態を維持しつつ同じ状態にしてあげた。頭は水槽ではなく無邪気な子供等の行動が良く見える壁面に設置した。まぶたも固定しパーツが乱暴に扱われる様を示した。

 痛覚を完全に切り快楽を増幅させた。

 触れられるだけで水物を吐き出すように。

 それと流血沙汰を避けるため、血液の代わりに魔力だけで生存する身体と成し、周囲の魔力を吸収するだけで生きていける物とした。

 汚物の類いは魔力還元で消し去ったけど。

 容姿はキョウの見た目に見える幻覚魔法を施し、喉笛を潰して助けを呼べないようにした。

 それこそ第八十六流刑島も喉笛を潰せば良かったわね。絶叫響くオブジェとか誰得だから。


「姫の反応がおかしかったね〜」

「そうそう。子供達もずぶ濡れだし〜」

「それでも遊ぶ無邪気さには呆気にとられたけどね〜」

「あれが第二第三の犯罪者になると思うと」

「永久に外へ出してはダメね?」

「まさしく流刑されて然るべきな者達だわ」


 ともあれ、その後の私達はドロップ品を亜空間の一角で全展開した。最初に転送した野菜はレリィだけでなくユウカからも喜ばれた。

 作物の種子も一緒に入っていたから。


「これは目録を用意しないとダメね」

「ですね。管理が雑になりそうです」

「野菜類はレリィ達が行うからいいとして」


 ───────────────────

  以下、ダンジョンのドロップ品

  七十六:岩塩・にがり 十年分

  七十七:さつまいも  三年分

  七十八:香辛料    五年分

  七十九:小豆     二年分

  八十 :ヤシの実   三年分

  八十一:小麦     数年分

  八十二:こんにゃく芋 三年分

  八十三:大豆     二年分

  八十四:大麦     数年分

  八十五:石灰岩    三年分

  八十六:さとうきび  二年分

  八十七:米・餅米   数年分

  八十八:野菜全般   数年分

 ───────────────────


 目録を作ってみると有用な品物ばかりだった。これらも私達が求めた物そのものだから。

 量に関してはそれぞれがまちまちだったが。

 余った分は種子として育てればいいだろう。

 石灰岩はこんにゃく用途でしょうけど。


「なんというか求めていた物が溢れてる?」

「しらたきと豆腐の材料があるわね?」

「米なんてタイ米ぽいね? コレ」

「香辛料と合わせて色々作れそう?」

「米粉を作って生春巻きもいけるかも」

「野菜の中にパクチーがあるって」

「てことはフォーが食べられるかも!」

「ビーフンもいけるんじゃない?」

「これはレリィ達の腕の見せ所ね!」


 おそらくこれも先日手渡した辞典を有効活用したのだろう。そうでなければこれ程の物品は用意出来ない。これも二重三重のお礼があるのかもしれないわ。閉鎖と情報提供に対して。

 私達は広げたドロップ品を目録と共に食料庫へと移した。ダンジョン品ということもあって別途用意した食料庫となるけれど。

 私はスマホの時計を改めて眺める。


「作戦開始の少し前ね。このままナギサ達に任せておくか? 参戦するか? どうする?」


 それはこの後行われる掃討戦の事だ。

 マキナ達は「お任せ〜」と言っていたが。

 私達も疲れてはいないが必要とあらば参戦するつもりでいた。美味なる経験値はなくとも。

 するとナディは逡巡していた。


「ショウ? どうしようか?」


 ショウは問い掛けに苦笑しつつも答えた。


「私は妹達の教育に時間を取りたいかな。下に居るのは200以下が(ほとん)どだし」


 私は二人を改めて鑑定し納得した。


「足並みを揃えるって事でいいわね?」


 現状だと突出し過ぎだものね?

 私とマキナとシオンは除くとしても、この二人は暗部的な仕事を熟している関係上、他者よりもレベルが高い。普段は運転手を行ったり釣りに興じているが、ナディ達も呼吸するように無詠唱を使う程度には裏の仕事を熟している。

 次点ではショウと行動を共にするレベル200のユウカだろう。各種禁書魔法を作り出しては人族に何度もぶち込んでいるそうだから。

 主に先の戦争の残党狩りとかね?

 その次が魔物狩りを主とするユーコ達になる。フーコは対女戦のみの参戦なので古参眷属(けんぞく)の中では一番低い175だ。

 男が相手だと瞬殺する程度の技量はあるが。

 ナディも一瞬だけ思案し──、


「私も・・・ショウの案に賛成かな? 私達だけ上がり過ぎてもねぇ?」


 困り顔で応じる。

 ショウも同じ顔で主な理由を口走る。


「ユーマ達も上での経験値取得が限界になっているし、同じくらいになるまでは私達は参戦しないという事で」


 私は決意が固いとして仕方なく納得した。

 これ以上無理強いしても意固地となるし。


「分かったわ。そういう事にして起きましょうか。どのみち、地下神殿に向かう時は連れて行くけどね? そこは下限220らしいから」


 そのうえで道連れ要員である事も告げた。

 後詰めのシオンとナギサはともかく、マキナが付いていく神殿でもあるから。

 問題物が埋まっている場所でもあるけれど。

 それを聞いた二人は別の意味で驚愕する。


「に、220!?」

「私達はそこまでのレベルじゃないですよ!」


 私は驚く二人に対して、してやったりの笑顔で返す。あのダンジョンって、ボス部屋踏破は相当な経験値が得られるもの。これもあえて伝えてなかった事だけど、これを知るとユーコ達が付いてきてもおかしくない特典だった。


「気づいてないの? 今日の踏破ですっぽーんと軒並み上がっているわよ? 限定的なパワーレベリングみたいなものだし」

「「いつの間にか養殖されてた!!」」

「酷い言い草ね・・・今はナディが235、ショウが234になってるから、しばらくの様子見は私も賛成ね?」

「「ホントに増えてた!?」」

「自動消化でレベルアップおめでとう!」


 二人は自身を〈鑑定〉し更に驚いた。

 おそらくだが、これから増える者多数になると思う。同じようなダンジョンが開拓中の島にも現れるから。今回は例外的に閉鎖されたが、今後は一切閉鎖されないという。

 仮に踏破したとしても翌日にはリセットされて別物のダンジョンに変化するそうだから。

 経験値をガッポリ稼ぐには丁度良いわよね?




  §




 その後の私達はログハウスに戻り──、


(カナデ)翔子(ショウコ)だけ出して・・・記憶を少し弄って」


 二人の妹分を工房のベッドに寝かせた。

 今から行う事は本当の妹という認識を持たせる事にある。言うなればハルミ達に行った事と同じであり、ナディとショウも魔力経路を通じて移動の合間に弄っていたりする。

 これも本人達が気づかないうちにね?

 それもあって寝転がった裸を見た二人は妹達の変化に気づく。記憶では人族のままだから。


「あの? 生えてません?」

「ですです。育ってるような?」

「それはそうでしょう? ダンジョン踏破の間に種族改変を行ったから。尻尾が生えたり、胸が育つのは当たり前でしょう?」

「「ま、まさか!?」」

「ええ。ルミナのように丸くなったわね」

「やっぱりぃ〜」

「痛みなく転化出来てよかったぁ」


 それは良かったのか悪かったのか微妙な反応だった。ナディは惜しいという感情が流れこみ、ショウは安堵の感情が流れこんできた。

 惜しいという事はドM的な感覚だろう。

 今の(カナデ)翔子(ショウコ)は一応、銀髪碧瞳だ。スキルやレベルはナディとショウに同期しているため、姉が育てば妹も育つという扱いに変えてある。

 その方が管理も行い易いし、意気込みが増すというものだから。人族達から護るうえで。

 ナディとショウは胸が上下している事に気づき、その場で下着を用意する。

 裸のままは流石に可哀想と思ったようだ。

 ただ、その際に──


「き、気のせいかしら?」

「胸とか体型が似てない?」

「ショウもそう思う?」

「ナディも?」

「それはそうでしょう? 元々二人の魂の欠片だもの。身体も同じように育つわよ〜。個性というか性癖は別物だけどね? カナの方はドSにソラの方はノーマルになってるみたいね?」

「「えーっ!?」」


 二人は別の意味で驚いた。

 あっけらかんと伝えた私はメイド服を枕元に置いていたけれど。特注品の戦闘メイド服だ。

 成長は改ざん後に同期を始めたからだ。

 似てくるのは当然のことだろう。

 例えるなら私とシオンの関係ね?

 ちなみに、カナとは(カナデ)であり、ソラとは翔子(ショウコ)の事だ。

 これも二人が考えた名前そのものね。

 名前も改ざんと共に設定済みだけど。

 ただ、性癖の面は反面教師という扱いで真逆になった。ドMかと思えばドSだったり、百合に走ると思ったら異性が好きとあったり。


「ま、まって?」

「ということは・・・」

「「願望が叶ったぁ!!」」


 願望? ショウって異性もいける口なの?

 元々百合って程でもないの?

 あぁユウカが百合に傾いた時に引き摺られたのね。本音では異性に気持ちが傾いていたけど身体が受け付けない状態になった・・・か。

 ドMのナディは仕方ない話だけれど。

 何はともあれ、これはソラ向けの狐獣人をいずれ用意しないとダメかもね?





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