第160話 バカの所業に呆れる吸血姫。
ダンジョンを片付けた後の私達は次の島に向かう前に大陸縁に移動した。それは〈異世界の勇者ここに眠る〉という石碑を足元に設置するためだ。そのうえで外敵が来た時に目覚めるという記述を残し、その場を去った。
これも王城の姫と同様に神罰であると認識すればいいけどね? ダンジョンを私物化した事も剥奪に繋がる要因だから。
私達は大陸縁から徒歩移動で港に戻る。
一応〈希薄〉したままなので気づかれる事はないが。
「次は第八十六流刑島ね〜」
「そのまま跳んで翔子の状態を確認したらダンジョン攻略を行えばいいわね」
「私も同じなのかな?」
「それは行ってみない事には分からないわね」
「私同様にツルペッタンが晒されていない事を願うばかり」
「カナデと同じく願うばかりね」
「というか二人って元からああなの?」
「「違う!」」
「え? どういう事?」
「「旅館で上枝に剃られた」」
「な、なぜに・・・?」
「自分だけだと恥ずかしいとか言ってたわね」
「ええ。他の女子も数名ほど食らってたわ。フーコ達は別の班だったから影響外だったけど」
「バカも過ぎると相当ね・・・という事は」
私は亜空間庫内に漂う女子数名を思い浮かべる。確か全員がツルペッタンだったはず。
キョウとリョウも同じみたいね。
だからあの時そっぽを向いていたのね。
興味無しと思ったら同じ境遇だったから。
私は確認のため、あえて名前を挙げる。
「五組の新山杏、六組の諸星恋、七組の小山桃、九組の副島遼子、十組の因幡登子、十二組の犬山沙織?」
「それで合ってる」
「うん。全員が剃られまくってた」
「おぅ・・・被害者が全員二人と同じ境遇だわ」
「「えーっ!?」」
なんたる皮肉。上枝のバカの所業で斥候役に任じられるとは。
まぁたまたまだろうけど。
ひとまずの私達は隣の島に跳び──
「じゃ、じゃあ」
「キョウとリョウにも居るの?」
「居るわね。リョウには妹が出来るけど」
「キョウが発狂してる・・・妹やっほーいって」
「リョウは微妙な感じね? 自身を番として見たら身震いがしたって。まぁ雄としての本能が勝りそうだけど」
翔子の肉体がある場所まで歩いた。その間は境遇者の処置を話し合った。
「同じ立場ならそのまま身内としましょうか。コウには悪いけど」
「そういえば同じ兄が増えるんだよね?」
「増えるわね・・・あぁ。記憶を消すなら可って言ってるわ。顔は悪くないけどしつこいのが嫌って。マジトーンだわ」
「番としては可って事かぁ」
「一応、好きではあるのね。ゴウやったね!」
「ストーカーまがいの事をしなければって」
「怒ってるわね・・・」
人員がまたも増えるが、これも仕方ないだろう。未復活組の身体は当人達を目覚めさせるまで無期限保管となるが致し方ない話だった。
今は部屋数が足りないもの。船の部屋を超える人員数になりつつあるから完全な当番制に変えないとだめかも。誰も彼も救うというのは責任も伴うから。とはいえシオンよりは少ないけどね? あの子は二千万人以上居るからね?
§
翔子の身体を発見した。
今度はこのパターンか。それは石像だった。
人々が行き交う街の公園、その噴水の天辺。
素っ裸の翔子が座ったまま身体だけが固められていた。
頭はやつれ身体はボロボロだった。
風雨にさらされ風邪を引いても放置という酷い有様だった。私は周囲の時間を止めて翔子の身体を助けだす。
ショウは怒りながら駆け寄り、抱きついた。
「酷い! この体勢をずっと維持とか!!」
ナディは困り顔で私は呆れ顔で眺めた。
「M字開脚って誰の発案?」
「三組のバカ共じゃないかしら?」
「あ〜。あいつらなら言いそう・・・」
「ニナも他のバカ共に犯されてたしね?」
だから今度は女ではなく王太子と交換し、硬い身体を強引に動かし大開脚で固定化した。
端から見たらT字に見えるわね? 頭を下に置いているから常時真っ赤な顔になるけれど。
粗ブツをカラスに突かれればいいわ!
なお、翔子の身体も奏同様の措置を施し、ショウも翔子としての姿に変じてしまった。
おそらくこれも紐付けが関連しているようで、キョウやリョウも身につけるだけで元の姿に戻るのだろう。ただ、作り替えるかどうかは本人の要望に依るだろうが。
すると困り顔のショウがスマホ片手に──
「ねぇ? この国に呼ばれてるバカ達も結合しない? キョウの提案で・・・こんなの」
前衛的なイメージを示してきた。
それは腐女子が喜ぶ類いの物だろう。
王太子の粗ブツに勇者達をはめ込むという物だった。それを複数人で円環のように組み上げ〈男物占〉と称したいらしい。
この国の男勇者は不要とでもいうように。
確かに女勇者の方がレベルが高いわね?
男は女漁りしかしてないし。
私はキョウ達の提案に乗る事にした。
そしてこの場に男勇者を強制転移で集めたのちナディ達と共に結合作業を行った。
笑顔のショウはキョウと念話しつつ伝える。
「総勢二十人。教師と王太子を含んでようやく完成ね!」
私達は手伝っただけだが──、
「時間停止下じゃなかったら汚ブジェよね?」
ナディの言う通り油断すると私達が汚れたわね? 時間を止めてて正解と思う状態だった。
「確かにそれもあり得たわね・・・」
私は崩れる事はないだろうが、頭だけを残して全てを真っ白に染め上げた。完全固定化という扱いね。崩れて周囲を汚すのはダメだもの。
そして時間停止を解除しつつ見守った。
「ぎゃー!」×20
が、初っぱなから激痛で悲鳴を上げる男共。
その声を聞いた周囲は驚き〈男物占〉と書かれた石碑を見て呆ける。それは意味不明とでもいうような前衛芸術だった。
私は騒ぎ続ける男共の側で両耳を塞ぎ──、
「とりあえず、ダンジョン攻略に向かいましょうか?」
耳を畳むナディと両手で耳を塞ぐショウに大声で問い掛けた。ホントにうるさいわねぇ〜。
「そうですね・・・耳が痛くなりそうですし」
「それが良いと思います」
二人も嫌そうな顔で頷き私達は空間跳躍でその場から離れた。
というかショウは元の姿に戻れば耳を畳めるのに、今の姿のままで居たいのだろうか?
いえ、弔いの気持ちがあるみたいね。
この後、妹として迎えるから一緒に過ごすという気持ちを養っているようだ。
二人から弄ばれるユウカが居るが・・・どんまい。




