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隠形吸血姫、クラス転移で勇者達の敵になる?〜いえ、戦力差が過ぎるので私は旅に出ます!〜  作者: 白ゐ眠子
第七章・面制圧と蹂躙戦。

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第154話 眷属の暴走を許す吸血姫。


 リリナ達の妹、ローナ姫殿下は眼球をグルンとひっくり返して気絶した。今はリリカ達の看病の元、二号車のプールに浮いている状態だ。

 人魚族は極力水上に居させた方がいいしね。

 普段のリリナ達もプールで過ごしているし。


「目覚めないですね」

「早々目覚めていたら苦労しないわ」

「そうですっけ?」

「気絶癖が治ってなかったもの。これでは女王となれるか心配だわ〜」


 一方の私は交代で夕食に来た者達の目前で片付けを行っていた。馬の体液が混ざった純水を魔力還元させつつ、対策を練っていたのだ。

 それと共にナディ達に指示を出し偵察に向かって貰った。偵察向きの猫二人と狐二人だ。ナディ達は〈獣化〉し、残りは人化した状態で二人の背中に乗った。ミズカ達が振り落とされないようナディとショウに首輪を付けて隷属されている風を装った。

 まぁ隷属されるようなタマではないけれど。

 それとルミナも偵察向きで用意したのだけど可愛すぎて今回の偵察は見送った。というよりフーコが離さないのよね? 愛でたい一心で。

 なお、先ほどまでは元勇者と上界の数名が食べていた。後半はユウカを筆頭とする上界組が(ほとん)どだ。ニーナ達や人族組も後半ね?

 するとマリーがすれ違いながら──、


「この可愛らしいリスって誰なんです!?」


 フーコの横に佇むルミナに抱きついた。

 銀髪に小さい耳がちょこんと乗り、大きな尻尾をユサユサと揺らしている姿は確かに可愛いだろう。ルミナはまたかとでもいう表情でマリーを引き剥がす。レベル差が11もあるから出来る事でもあるけれど。


「うざい! 前もそうだけど今もしないで!」

「この返し。まさか、留美(るみ)なの!?」

「だったらなによ?」

「おっぱいが育ってる・・・そんな! 小さい小さい留美(るみ)が大きくなった!!」

「悪いか! 大きく育って悪いのか!?」


 ルミナは荒れ狂う。

 胸がコンプレックスだったのなら尚更だろう。私と同じく胸の大きなマリーには分からない価値観だろうが。

 直後、聖母のような微笑みでフーコが止めに入る。フーコからはおっさん臭が消えている?


「マリー、とりあえずその辺で」

「フーコ様・・・すみません、取り乱しました」

「いいのよ。これだけ可愛いもの。私達のマスコットは大事にしないとね?」

「そうでございますね」


 いや、マスコットとして愛でたいだけのようだ。これがもし・・・意中の彼を復活させたらどうなるのか、皆目見当がつかない私であった。

 が、ルミナは荒れ狂ったまま叫んだ。


「私には彼氏がいるもん!」


 するとフーコは濁った目で微笑む。


「またまた〜。そんな冗談を言って〜」


 マリーは腕を張り上げ、宣言する。


「そんな性犯罪者は私が懲らしめますよ!」

「良く言った! マリーはこの後・・・沢山愛してあげるね!」

「そ、それは、ほどほどで・・・あん!」

「愛してあげるね?」

「は、はい」


 フーコの前で男の話はダメね。

 マリーが怯える最中も胸を鷲掴みして微笑んだから。というか、フーコがまともな恋愛をする機会は訪れるのだろうか?

 それは吸血鬼族の子孫繁栄という意味で。 




  §




 カノン(姉上)が後始末をしている最中の事。私達も偵察に出ている者達を追いかけながら様子見していた。それは勇者とは名ばかりの新たなる剥奪者が現れたからだ。魔族達と争う事は仕方がない話だが、護るべき民草・・・その子女を食い散らかす行為は許されざる行為に他ならなかった。

 今は猫に化けたナディが夜目(よめ)を使って〈遠視〉し、隣のミズカと会話していた。

 二人は〈希薄〉を行使した状態だったが。


「まーた食ってる」

「これで何人目?」

「カウントを始めて三十人かしら?」

「それでも精力は衰えてないと・・・」

「命が掛かった後だから元気なんじゃない?」

「私はその戦闘を見てないからなんとも言えないけど?」

「一方的にやられてたわよ? ユーマの抜刀術で」

「か、噛ませ犬って事?」

「噛ませ犬ってほどでも無かったわね? そもそもレベル差がありすぎるわよ。大野(おおの)が15、島田(しまだ)が19でしょう。でも、ユーマはレベル190だから」

「というかナディよりも低いのね・・・?」

「私の場合、急激に増えた所為(せい)でもあるけど・・・って動いたわよ」


 その直後、二人の目の前で腰を振っていた勇者達が素っ裸のまま立ち上がる。ナディは人化したのち〈亡者(もうじゃ)のローブ〉を羽織る。ミズカも同じローブに換装した。

 これも匂いを探られないための措置だろう。


「トイレかしら?」

「そのようね・・・」


 周囲には隷属された大型犬や狼が居たから。

 一方、指揮系統を探索中のショウとマーヤは〈亡者(もうじゃ)のローブ〉を着たまま人混みの中を進む。


「怪我人多数ね・・・指揮官は派手めの装備に身を包んだ者らしいけど」

「派手というか・・・」

「フルプレートアーマー?」

「重そうね・・・」

「こいつらって元々足の遅い部隊なのかも。チャリオットありきの格好よね・・・(ほとん)ど破壊されてて歩きになっているみたい」


 ショウは文学少女故かあらゆる知識に精通していた。ユウカに対する百合を示す以外はまともな人物のようだ。マーヤはカノン(姉上)から借り受けた針型の魔具を用いて指揮官とのすれ違いざまに穴を穿つ。


「うっ・・・」

「指揮官様!? どうなさいました!!」

「衛生兵! 衛生兵を呼べ!」


 魔具には魔毒が塗られており人族が纏う魔力が触れると、無制限に魔力拡散を行う物だった。

 この魔毒はユウカが生成した物で対人向けの猛毒かつ、魔族や亜人には無毒の代物らしい。これもソージという人族が居る事で完成した危険物なのだろう。この世界の人族向けだが。


「凄い効果だね〜。ユウカは敵に回せないわ」

「流石は私のユウカね! 今のは島田(しまだ)派の勢力よね?」

「うん。今は島田(しまだ)派を中心に弱らせてる。予想通り分割されていたしね?」

「亡くなった塊の勢力が中立になってて」

「右往左往で勇者に取り入ってるみたいね」

「爆散を知る指揮官は死滅しているようだし」

「誰もが勇者を奉る状態なのね」


 幸いなのはカノン(姉上)が危惧した爆散が無くなった事だろうか。それを知る者は先の戦闘でこの世に居ないから。それであっても挟撃だけは避けなければならないため、処置を進めるショウ達だった。

 すると二人の前に二人の裸族が現れる。


「あれ? ナディ達じゃない?」

「素っ裸の変態共を追ってる?」


 ショウ達はナディ達と合流し──、


「「おつ〜」」

「「おつ〜」」


 共に裸族を追いかける。

 ショウ達は時折見る指揮官を弱らせながら。


「どんな案配?」

「ひとまず勢力の半分を無力化した感じ」


 ナディ達は悪人とそうでない者をすれ違いざまに選別していた。こちらもカノン(姉上)の魔具を使って経験値を奪うつもりだろう。

 こちらは面で触れる事で色が変わる魔力インクだった。悪人なら赤に。善人なら白に。偽善者なら黒に変わるという代物だ。魔力感知スキルを持つ者が見てもスキルレベルをカンストさせない限り色が見えないらしい。


「そっちは?」

「三十人を超えた辺りで小休止みたい」

「そんなに犯したんだ」

「元気だけは有り余るみたいね〜」

「有り余っても休みが必要みたいだけど」

「所詮は人の子か・・・って、ちょっと待って!? 居なくなった?」


 その直後、ミズカは目を丸くした。

 裸族達が忽然と姿を消したように見えたようだ。実際には四人の視線の先に大きな凹みが出来ており裸族達はその凹みへと降りていった。

 隻腕状態でも元々もつ体幹だけでバランス良く降りていく。

 四人は急いで後を追い──


「いえ。微かに頭が見えるから潜った・・・?」

「土の中に?」

「そんなスキルってあるの?」

「いえ、周囲を掘削した跡があるわ」


 凹みの縁で中を覗く。

 そこには声を失う惨状が拡がっていた。

 剥奪確定ね? レナンスもそう思う?

 民草をこうもアッサリ利用するとは。

 今後は人格面を精査する契約魔法を作るしかないようだ。高潔とは無縁過ぎるもの。


「酷い・・・」

「女をなんだと思ってるのかしら?」

「兵達も言うことを聞いて、なんとも思わなかったの?」

「そういえば女性兵も居なかったね?」

「もしかすると・・・この中に?」

「可能性は高いわね・・・あ! 当たりみたい」

「飽きたからここに来たという感じね」


 それを見た四人も絶句。

 それはそうだろう。大穴の中には裸の女性が山積みだった。まだ息がある者も怪我した者も総じて剥かれ、武器もろとも穴の中に放り投げられていたから。

 平民も貴族も関係ない。人である尊厳すら無にされて意識が無いまま犯されていた。

 ここまでの外道は見たことが無いわね?

 するとなにを思ったのか──


「魔毒を練り上げて・・・」


 ショウが怒り心頭でユウカの魔毒を槍型に練り込んでいた。これは魔毒という名の魔法でもあるのね。素手で触っても影響が出ない事から対人魔法という扱いらしい。ユウカにも〈魔創〉スキルを与えている?

 カノン(姉上)はエルフのみに与えているようだ。新魔法を作り出すスキルを。

 その分類は第十階梯(かいてい)の禁書指定魔法だった。


「〈魔毒槍〉の完成ね! さて」


 ショウは出来上がった〈魔毒槍〉をナディに手渡す。ナディにも槍スキルがあったのね。

 ニーナから複製した? なるほど。

 ナディは苛立ちを浮かべつつ投擲体勢に入る。自動照準を行う魔法を行使して投擲した。


「女の敵(めっ)!」


 直後、裸族達の身体の中心部──、


「「ぐぉ!?」」


 心臓付近を槍が貫き魔力暴走ののち、突っ伏した。私達の元にも魔力が戻ってきたわね。

 今後は自身が持つ超微量魔力が常時発散される事になるだろう。魔法行使もダメ、魔力を必要とする魔具の利用もダメ、勇者としての地位も返上された。そのうえこの〈魔毒槍〉は魔石にも作用するようで、突っ伏した裸族の首元から粒魔石が霧散するように消えていった。

 彼らが首にぶら下げていた洗脳魔具の魔石も周囲に置いた魔石も影響を受けて砕け散った。

 その直後、犯されていた女性達が目覚める。


「「「きゃー!?」」」

「誰よ、こいつら!?」

「旦那はどこ? 居ない?」

「ここはどこよ!?」


 どうも洗脳魔具を使って集めて回ったらしい。だから穴の中で気を失っていたのね。

 その後は女性達から袋だたきとなる裸族達。

 半殺しにされても仕方ないわね?

 今回は想定外の出来事だったが──


「「すっきりした!」」

「女性はオモチャじゃないのよ〜」

「女の敵はゴミクズとなった!」


 ナディとミズカは意気揚々と拠点に戻る。

 すると二人の後を歩いていたショウが気づきマーヤに提案する。


「そういえば両者のブツにレイピアがブッ刺さってるわね」

「ホントだ! 根元を貫いてる! 女性兵がやったのかな?」

「おそらくね? 丁度良いから双方の指揮官に送りましょうか?」

「それいい! ぶつかりあって予定通りの殲滅戦が出来るし!」

「じゃあ帰り道で届けましょうか」


 ショウとマーヤはナディ達と一旦別れて別行動に入った。

 猫たちは帰り、狐は残る。化かし合いを行うために。

 実際に大穴の中でゴミクズ同然にボロボロよね。このまま魔物の餌になる道しかないでしょうね。あ、カノン(姉上)が呆れたまま魂を転生させてる。転生先は淫魔族としたのね。

 性根的には丁度良いかもしれないわ。

 記憶と人格を残したまま女になる。

 生存のために男を召し上がれって事ね。

 耐えられるかどうかは分からないけど。

 でも魔毒は引き続き影響を受けるのね。

 魔法の使えない淫魔族。どうなる事やら?





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