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隠形吸血姫、クラス転移で勇者達の敵になる?〜いえ、戦力差が過ぎるので私は旅に出ます!〜  作者: 白ゐ眠子
第七章・面制圧と蹂躙戦。

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第153話 吸血姫は欲求を解消する。


 ひとまず作戦決行は夜が深まる〈闇の日〉に実行する事にした。それまでは鋭気を養う事とし、私やシオンを始め、上界で活動していた眷属(けんぞく)達は外での夕食と相成った。

 レリィは食料庫に収まった食材を見て──


「今日はヤマメが沢山だから岩塩焼きよ〜」


 下処理を行ったヤマメを丁寧に串へと刺していた。本日のレリィはコウシと共に上界で食材調達を行っていたが、不穏な動きが上界であったため、食材調達が出来なかったという。

 肝心の商人達も調達が出来ないからと買い溜めして売ろうともしなかったらしい。

 向かった場所は各管理島のようだが、またも流刑島で良からぬ動きが出ているのだろう。

 これは海上へと出た時にでも様子見に行くしかないようね? 開拓も少々遅れ気味だし。

 それもあってレリィはコウシと意気消沈で戻ってきた。そんな中、ナディの釣った川魚が大量にあったため、嬉しそうに二人で調理した。

 コウシもナギサと火の番を代わり、一本ずつ丁寧に火へと焼べていた。


「ナディの釣果は毎回凄いな・・・」

「アキ達が疑似餌を用意してくれたからね〜」

「それであっても?」

「これだけの分量は釣れないわよ? 一体、なにをすればこれだけ釣れるのか・・・」

「それは私にも分からないわ。海上でも同じように釣れていたし・・・」


 そう、三人の近くには山盛りのヤマメが積まれていた。六十人の人員。一人三匹は食べられる分量がそこにあった。それをナディが一人で釣りあげた。他にもオークなどをユウカ達が狩ってきたが人数的に足りない分量だった。

 このオーク肉もしばらくは干し肉として保存するしかないでしょうね。生肉はお預けかもしれないわ。牛肉も数が限られているしね?

 私も頃合いを見て狩りに出掛けないと。

 一方、新規で加入した三人の周囲では──


「ルミナ、口開けて〜」

「ほらほら〜。木の実だよ〜」

「焼き栗もあるよ〜」

おううり(もう無理)! ふぁいあ(入ら)ふぁいふぁふぁ(ないから)!」


 頬袋をいっぱいにしたルミナを囲って、フーコとユーコ、ユーマが餌付けしていた。マキナも焼きマシュマロを持ったまま、口の中が空になるのを待っていた。愛嬌があるわよね〜。

 ミズカ達の隣ではショウが〈獣化〉しつつルー達にスキルの使い方を示していた。

 装備を即座に換装し綺麗な狐になるショウ。

 これも慣れが出てきたのだろう。

 ミズカも猫にマーヤも狐になっているしね?

 有翼族(ハーピー)達に使い方を教えているのも、使い方によっては完全な鳥類に〈獣化〉出来るからだ。羽根と足はそのままに胴体と頭だけが変化するといえばいいだろう。

 実際にコウが〈獣化〉し大鷹になっていた。

 速度重視とする場合、今まで以上の速度で飛べる事が分かったようだ。一瞬で飛び立っては遠方の海上から大きな魚を拾ってきてたから。

 ピチピチとヒレを動かす大きな魚。

 ヒレから先は麻袋の中へと収まっていた。


「魚を拾ってきた〜! 獲れたてだよ〜!」

「どこで拾ってきたのよ? こんな・・・魚?」

「西の海〜? 沿岸に打ち上げられてた〜」

「結構、距離があるはずなんだけど・・・」

「コウはついに音速を超えたのか?」

「お兄ちゃんはあっち行って〜」

「お、おう・・・す、すまん」


 有翼族(ハーピー)達も目が点だった。

 ミズカ達もきょとんとし、ショウは呆れていた。というか、魚? 魚にしては大きいわね?

 するとリリナがヤマメ片手に──、


「ローナ!?」

 

 驚愕したまま袋詰めの魚に駆け寄った。

 それは下半身を晒した人魚族だった。

 この時のリリカも人化していたため、誰もが人魚族であると忘れていた事案だった。

 その人魚族はリリナ達に良く似ていた。

 髪色は白金髪ロングというミアンスを思い出させる姿だった。胸は・・・無かったが。


「プハッ! え・・・姉上?」

「なんで貴女が打ち上げられているのよ?」

「というか、ここ・・・どこです?」

「話を聞きなさい!」

「姉上ですよね? 顔立ちは」

「もう! リリカ!」

「はいはーい!」

「あ、姉上! ん? 姉上が二人?」

「それはいいから! 打ち上げられている事情を話しなさい! 国元でなにかあったの?」


 リリナは苛立ちを浮かべながら叱りつけた。

 ローナは怒り方から姉だと認識したようだ。


「え? あぁ! 違うんですよ。西部の海流が乱れてて、気がついたら陸地だっただけで」

「海流が乱れてた? それってどの辺りで?」

「赤道付近を少し北上した辺りですね? 乱れた直後に無数の肉片が海中に散らばって・・・」


 ん? 肉片?

 私はローナの語る言葉に思い当たる節があった。マキナもルミナの背後から私の元へと戻ってきた。


「お母様?」

「ええ。干からび勢の事よね・・・至近距離で爆散すると海流に影響が出るの?」

「みたい、ですね?」


 この時の私とシオンは一号車の脇に座って居た。ルミナは三号車、ショウ達は二号車前に。

 ナディ達は四号車〜六号車前に居た。

 シオンはローナ達に視線を注ぎつつも──


「というか原因はカノン達じゃないの?」


 白々しい視線で私達をジッと見る。

 私とマキナは困り顔で顔を見合わせるしか出来なかった。


「いやいや。まさか、それで・・・ねぇ?」

「ですね・・・やはり魔力拡散的な力が加わるのでしょうか?」

「これは一度、試してみる必要があるかもね」

「試す? 試すってなにを?」

 

 そう、シオンが困惑を浮かべている最中、私はその場で小さい粒魔石を用意した。米よりも小さい魔石。色の無い(そら)属性であるというだけの粒魔石が二つだ。

 内包する魔力は上界であれば当たり前に存在する程度の物だが下界では垂涎の代物となる。

 一粒で勇者一人分は内包されているわね。

 私は用意した粒魔石に某魔導士長が施した同じ術陣を刻み込む。解析した甲斐があるわね。

 目前の空間を間仕切り、内部を純水で満たした。海水もいいけど成分調整が面倒なのよね。

 それは3メートル四方の空間ね?

 そしてシオンの見ている目の前で──、


「ん〜。適当に選びましょうか・・・?」


 確保した肉体情報から馬獣人を選択した。

 するとみるみる内に二体の馬が出来上がる。

 こういう事が出来るのも私達の権能あってこそよね。ソージと違って魂の無い肉塊だけど。

 直後、周囲は阿鼻叫喚という状態になった。


「あぁ!? 馬が二人居る!!」

「死んだはずのヤマトが復活した!?」

「「というかナギ先生が女性になってる!」」

「「驚くのそこ!?」」

「なんで馬が居るの?」

「ルミナは知らない方がいいよ。目を閉じて」

「う、うん。分かった・・・フーコ」

「馬並みトマトが出てきたのはどうして?」

「あの尻尾で筆作る?」

「不味そうな馬刺しが獲れそうね」

「「おっきい!」」

「タツト、大丈夫?」

「やっぱり負けた・・・」

「「「おいおい」」」


 私はそんな阿鼻叫喚を余所に首元へと粒魔石を強制転送した。シオンは私がなにを行うのか察したらしい。マキナは苦笑していたが。


「カノン? 試すって、まさか?」

「そのまさかよ。海流異常が出るなら事前に対処が必要と思ってね? 今後、勇者以外でも出てくる可能性が高いし」

「確かに・・・でも食事時にはショッキング過ぎない?」

「そう? 見世物と思えば・・・ねぇ?」

「お母様だけですよ? それは」

「もしかして・・・私、フラストレーションが溜まっているのかしら?」

「ここ数日はまともに戦ってないでしょう? カノンは指示に回るか、開拓が主だったし」

「確かにそう、かもね・・・」


 直後、一同の見ている目の前で馬が消えた。

 無色透明な純水は真っ赤に攪拌されていく。


「って、ところで弾け飛んだわね」

「勇者一人分の魔力が一瞬で展開・・・か」

「拡散現象も相まって乱れが酷いわね」


 そう、乱れた魔力で攪拌が起きたようだ。

 確かにこれならば流されるのは必定だろう。

 リリナ達は絶句し、妹と話し合っていた。

 マキナは遅延させながら見ていたらしい。


「魔力嵐のように乱れてますね・・・。狭い空間でこれだけ乱れたなら・・・海上で行えば?」

「確実な乱れが発生するわね?」


 一方、阿鼻叫喚だった者達は──


「こうなった記憶はないけど」

「水上で食らったのよね・・・?」

「私達は風爆陣と共にでしたが」

「改めて見ると度し難いな・・・」

「食事時に見るものじゃないわね」

「タツトかわいそう」

「クルルは食らう前に助かってよかった」

「「これって? アコ、ココ知ってる?」」

「「勇者達の末路!」」

「時間遅延で見たら酷い事になるな?」

「「ケン、お前は勇者だよ」」

「元が付くが。というか、お前等もだろう?」

「フーコまだ閉じてなきゃだめ?」

「ダメよ〜。ルミナが血生臭くなるから〜」

「「フーコの百合がリス愛に変化した?」」


 一同は絶句とまでいかないが引いていた。

 レリィからはジト目を(いただ)いたが。

 私はリリナ達の元を訪れ──、


「ごめんなさいね。主な乱れの原因は異世界の勇者達にあるわ。今後は海上で弾ける前に上空隔離するわね」


 そう、お詫びしつつ告げた。

 一種の謝罪めいた対応ね。

 リリナ達は呆気にとられ、浮遊状態で漂うローナはきょとんとしたまま問い掛けた。


「えっと・・・どちら様でしょうか? 姉上達とはどういった御関係で?」


 そういえば自己紹介というか関係を明かしてなかったわね。成り行きでリリナ達を助けただけだし。私はシオンと目配せし素直に答えた。


「私が彼女達を助けだしたのよ。経緯は二人から聞いて貰えればいいけど」

「助けた・・・ですか。見たところ人族に見えますが?」

「人族というより魔族ね。吸血鬼族だから」

「え? そうなのですか?」

「ええ。間違いないわ。私達はカノン様に助けていただいたの」

「では姉上達の命の恩人と?」

「そう思って貰って、構わないわ」


 そう、人魚族と友好な関係を築くため、あえて笑顔のまま話し合った。相手は姫殿下だし。

 リリナ達も事を荒立てたくないみたいだし。

 だが、この話は簡単には済まなかった。


「というより命を扱う事に長けた生死の女神様だけどね〜! マキナとシオンさん含めて!」

「「「こら!? ユーコ!!」」」

「遅くなりました〜。あら?」


 ユーコの暴走により魔族以上の立場が明かされた。ミズカ達は目が点。リリナ達は苦笑。

 遅れてやってきたリンスはきょとんだった。


「せ、せ、生死のぉ!? め、めが・・・」

「あ、泡吹いて、気絶した・・・」

「そういえば巫女でしたね・・・忘れてました」

「そういう事は早めに言いなさい。リリカ、プールに送ってあげて」

「はーい!」





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