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隠形吸血姫、クラス転移で勇者達の敵になる?〜いえ、戦力差が過ぎるので私は旅に出ます!〜  作者: 白ゐ眠子
第七章・面制圧と蹂躙戦。

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第151話 吸血姫は増加を幻視する。


 その後の私は残りの獣人を目覚めさせ人化の手段を覚えさせたのち、三人を上界に連れてきた。

 そしてマキナやナディ達と共に──


「ここから見たら一番違いが分かるわよ」

「下界だけだと異世界だって分かりづらいもんね?」

「口で説明するより見せた方が早いですね〜」


 第二浮遊大陸・ルティルマ〈ミミール王国〉へと訪れた。ここは吸血鬼族の国家だが獣人族との交流が活発な大陸なのであえてこの場を選んだ。他の島は排他的というのもあるけれど。

 私達が第零の見える縁に立つと三人は叫ぶ。


「「「島が浮いてるぅ〜!?」」」


 三人は揃って大騒ぎした。尻尾を縦横無尽に動かし、驚きを尻尾でも表現していたから。

 まぁこれも連れてくるまでが大変だったけど。

 経緯を一から説明したり、人ではなくなっている事を伝えたり。ミズカの場合はマキナが鏡を用意した上で猫獣人だと伝えたらしい。

 最初は自身の姿が猫だったため混乱したそうだ。その間にナディの変身やらがあって理解を深めたとの事である。元々地頭は良いからね?

 その後、目覚めたネズミと狐にも説明して。


(ルミナはネズミだったから、特に大混乱したわね・・・まさか大っ嫌いな動物だったとは・・・)


 皮肉というかなんというか。

 世界で一番嫌いな動物。その獣に自身がなったため生まれ直させてと大号泣で懇願したの。

 それを受けた私は仕方なく種族改変を行った。まぁ・・・あれね? 生きながら血球になる方法だ。その方法でしか不死者を別の種族に変化させる事は出来ない。一応、痛覚無効を最大限に変えてから実行したけれど。

 私は大興奮の三人を眺めつつこの後の予定を再確認する。


「とりあえず元ネズミと猫と狐の登録ね」


 その間のマキナとナディは──、


「リスならいいんだ・・・種族的に似てるのに」

「ギリギリって感じよね。あのモフモフとした尻尾は枕に丁度良いけど」

「それはそうと〈獣化〉したらドングリを与えたくなったよね? 愛嬌があるっていうか〜」

「ええ。頬袋いっぱいにしてあげたいわね?」

「たちまちはレリィ達の料理で・・・」

「レリィが戻り次第、膨らませましょう?」


 可愛らしい姿に変化したルミナを肴に夕方の予定を話し合っていた。頬袋を膨らませる。

 リスだからこそ許される姿だろう。

 ネズミだったらそうはいかない姿だった。

 ハムスターは種族として居ないしね?

 あの尻尾も自分自身の枕になるみたいだし。

 他者が触るとビクビクと反応するけれど。

 私はギルドの場所を把握しつつ三人を呼ぶ。


「三人共! 登録に向かうわよ!」

「「「は、はい!」」」


 そしてワイワイ騒ぐ五人を連れて冒険者ギルド・ミミール支部へと入った。登録済みの二人は依頼票を眺め、推薦者の私は受付で書類を提出する。この三人もレベルは101だ。

 初っぱなからSランクとなるが、ご愛敬だろう。スキルレベルは他の面々よりも低いけど。


「Sランクって!?」

「えぇ!? 私も!」

「二人もなのぉ!?」


 ご愛敬と思った矢先に驚きをいただいた。

 私は騒ぎ過ぎる三人を苦笑しつつ叱る。


「驚き過ぎよ。101くらいで驚いてたらあとが保たないわ」


 だが、私の言葉を聞いたミズカ達は呆気にとられた表情で反論した。


「101くらいって・・・ゲームでもそこまで上げるのは苦労するけど?」

「うんうん。経験値稼ぎが大変っていうか」

「驚き過ぎって驚かずには居られないよ〜」


 私は三人がゲーマーだった事を思い出し、周囲を見回しながら小声で語る。


「まぁ・・・簡単に上げる方法はあるけどね。この場では言えない手段だけど」


 そう、あまり表沙汰には出来ないのよね。

 ここに居る冒険者達は同族なのだけど、私の姿を見ても、主人であるとは思ってもいない。

 聞き耳を立てたり良からぬ事を考えたりね。

 獣人族達も耳をピクピクさせてるし。

 私はあえて殺気を振り撒き周囲を黙らせる。

 三人は私の剣呑な殺気に気づき押し黙る。


「「「・・・・・・」」」

「・・・あるにはあるのよ。明確にどうって答えるには体験させるしかないけど。言っておくけどマキナは402でナディは205だから、喧嘩をふっかけるのはやめておきなさい」

「「「!!?」」」

「それと私は550ね? 世界最強って事らしいけど」

「「「!!」」」


 この時の私は(私達って最強?)と天狗になりかけた三人に現実を知らしめた。最弱ではないけど眷属(けんぞく)の中では最底辺だもの。


「この場には居ないけど他の四十二人も同じくらいだから対戦しようとは思わないようにね。この世界で得たスキル以外の技能を使う者も居るし。例えるならユーマやユーコ、フーコとニーナもそうね? 薬学ではユウカが最強ね」

「エ、エロフに喧嘩を売るのはやめようかな」

「エロフって呼ぶのも嫌ってるけどね?」

「き、気をつけます」


 ユウカをエロフと呼んだミズカは本気で怯えていた。この子はドMではないのね?

 ドMなら怯えるよりもパンツが濡れるから。

 一方、あとから目覚めたマーヤ、ルミナは四十二人の人員を知りたがった。(すで)に五人は出したため、三十七人となるけれど。


「そ、それで、他に誰が居るの?」

「い、一組だとマキナだけに思えるけど?」

「同じ部屋にアコとココが居たでしょう?」

「「アコとココ?」」


 そういえば二人が目覚めた時には居なかったわね。〈獣化〉スキルの粗探しとかで亜空間のどこかに移動してたから。命に関わる事はないにせよ嗅覚が命の犬獣人からすればなにが問題で問題ではないか調べる必要があるのだろう。

 だから私は分かり易い一言を告げた。


「実質、一組女子は貴女たちを含めて二十人中十三人が居るわね。最弱の鐡木茉莉亞(テツキマリア)がレベル90固定だけど・・・」

「へ?」

「ほぼ全員?」

「の、残りは?」

「二人死亡、行方不明は一人、石化が二人ね。勇者として生き残っているのは古城歌奈(コジョウカナ)氷田雪(ヒタユキ)くらいだから」

「女子全滅じゃん!」


 ルミナは大きな尻尾を震わせて驚いた。

 まぁ確かに全滅ではあるでしょうね?

 転生している者が(ほとん)どだから。

 彼氏と合体した調巡(しらめぐ)りんは行方不明者に当てはまるけど。

 するとマーヤが恐る恐る問い掛ける。


「だ、男子は?」


 私は率直に答える。


「五人が仲間ね。車バカは奴隷そのものだから置いといて」


 その間のマキナ達は依頼票と共に依頼品を提出していた。今回の依頼はオリハルコンを御所望だったらしい。私達なら自由に取り扱う事が出来るものね。開拓先で産出されるから。

 私の回答を得たマーヤはログハウスの廊下でソージとすれ違った事を思い出した。


「奴隷なんだ・・・」

「まぁ順当ではあるかな?」

「うんうん」


 他の二人もそれほど疑問視していなかった。

 元よりクラスの嫌われ者だったからだろう。

 私はマキナ達の手続きが終わると同時にギルドの外へ出る。そして出入口前で残りを語る。


「男子の生き残りは確か・・・人族達の奴隷となった者が二人、行方不明が一人、あとで処理する者が二人、囚われが一人で、八人死亡だわ」

「と、囚われ?」

「罪を擦り付けられた者ね。確か名前が打田流司(ウチダリュウジ)ね?」


 それは判断を後回しとした男子だ。

 一人だけ海上を進み東側から戻ってきていた。今は船倉にてブツブツと呟いているわね。

 俺は悪くないって何度も何度も。

 直後、ルミナが目を見開いて声を荒げる。


「りゅう君!?」


 手に持っていたギルド証を握り絞めながら。

 大きな尻尾と身体を震わせていた。

 するとその大声を聞いたナディがギルド内から顔を出す。マキナもきょとんとしたまま顔を出した。私の隣に立っていたミズカとマーヤも目を丸くしていたけれど。

 私は突然の大声に驚き、声を掛ける。


「どうしたのよ?」


 ルミナはモジモジと俯いた。

 全員に隠していたのか小声で呟く。


「か、彼氏・・・です。私の・・・」

「「「「はぁ!?」」」」

「ここにも(つがい)が居たか〜」


 私は大いに呆れてしまった。

 勉強に尽力しながらも、色恋沙汰を行う者が居た事に。進学と共に恋愛も進めていたのね。





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