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隠形吸血姫、クラス転移で勇者達の敵になる?〜いえ、戦力差が過ぎるので私は旅に出ます!〜  作者: 白ゐ眠子
第六章・砂上の魔楼閣。

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第136話 掃討前夜と吸血姫。


 その後の私達は情報収集組や監視組、待機組達と合流し荷馬車(拠点)で魔王城へと移動した。この時の荷馬車(拠点)は二頭立てとし、新人のクルル達にも〈スマホ〉を手渡した。

 案の定・・・驚かせてしまったけれど。

 その際、隣に座るリンスがニコニコ顔で──


「そうそう。なに気に結構な人員が投入されてましたので、衛兵達と協力して引っ捕らえておきました〜」


 事後報告してきた。

 今は後部座席に座り休息を入れていたが。

 おそらくそれは王都に潜む人族の事だろう。

 私達には気づける相手のため、情報収集の傍らゴミ掃除も終えていたらしい。これはシオン達の判断ね。私がこちらに集中出来るように。

 そしてフーコがワクワク顔で懇願した。


「それとね? ものすごいタイプの女の子が居て・・・出来たら、お願い出来ないかなって?」


 私の左腕に抱きつき上目遣いで。

 いつもなら二号車に居るはずなのに、今は一号車へと訪れていた。

 私はフーコの意図が読めず思考を読んだ。


鐡木茉莉亞(テツキマリア)が居たのね。私と同じような体型の・・・求めるのは愛玩物かしら? 性格的に仲が悪かったみたいだし)


 それは一組で唯一のモデルだった。

 読者モデルという輩ではなくプロモデル。

 この国に居た理由は戦力外という事もあるのだろう。華やかなのに鈍臭く頭は良いのにどこか残念だったから。

 私はフーコの亜空間庫を経由し記憶を頂く。

 彼女は広報活動に使って貰うという約束を得て侵入していたらしい。それが嘘だと知らないまま。主な活動は破壊工作だが、完全に足手纏いだったようだ。火がついた爆薬を持ったまま転倒し工作員達を巻き添えにしていたらしい。


 それは西部街から始まり、各所で連発し王都に着く頃には戦力外通告を受けていた。

 これも色々と物騒と言った門兵の一言の要因だろう。その原因がトボトボと王都をうろついていたのだから、即座に回収したフーコの手腕には天晴れである。

 だから私は仕方なく、亜空間庫内の彼女の粒魔石を近くの魔物に置き換えて、マギナス王国の王都に強制転移させた。

 今回は亜空間庫経由で行ったので影響外ね。


 そして鐡木茉莉亞(テツキマリア)の身体から魂を抜き出し、魂保管庫へと移動させ、肉体には制御を外した分離体を宿した。

 私は完了した事をフーコに告げる。

 (あき)れながらも頭を撫でて。


「仕方ないわね。片付けたから大事にしなさいね? その代わり、二度目はないからね?」

「!? ありがとう! カノン!」


 フーコも今回の掃除で活躍していたようだ。

 褒美としては少々度が過ぎているが、これは仕方ないだろう。消えるはずだった者を別の意味で活かすのだ。その用途がおっさん女子の夜のお供だとしても・・・。




  §




 私達は魔王城前に着いた。

 そこには先々代魔王が待機しており──


「これは姫殿下! お初にお目にかかります」


 リンスを相手に跪いていた。

 それを見た周囲の衛兵達は呆気にとられ、リンスの姿を眺めつつ首をひねっていた。

 リンスは若干苦笑しつつも彼に応じる。


「そ、そうね・・・御爺様の護衛だった貴方がどうして下界に? 私は貴方を絵姿でしか知らないから反応に困るのだけど」

「そ、それは・・・私が不甲斐ないばかりに捕まってしまい・・・」

「そう。大変だったのですね。大義でした」

「は! ありがとう存じます」


 リンスは祖国の姫君だ。建国の祖であろうとも決して蔑ろには出来ない相手だった。

 するとシオンが顔を出し彼に一言添える。


「頭をあげなさい。上に立つ者がそんな素振りを示しては駄目よ?」


 先々代魔王は居るとは思っていなかったのか、叱りつけるシオンをきょとんと見つめる。

 なお、私とマキナはエルフ姿のままね。

 同じ顔が複数人居ると勘違いされるから。

 シオンが放置一択となる・・・ね?


「!? シオン様!?」


 シオンは驚く先々代魔王を立たせる。


「はいはい。立ちなさい。それと良かったわね。第二王妃が完全なる真祖になったわよ」


 そして寝耳に水な内容を耳元で囁いた。


「え? そ、それはどういう事でしょうか?」

「私の娘が助けたのよ。そこに居るでしょう? エルフ族の姿だけど。隣は姉ね?」

「ま、まさか! で、では? 先頃の神託は」

「そういう事ね。立場上は私も同じだけど」


 先々代魔王とシオンはコソコソと話し合っていた。勝手知ったる相手という感じね。大戦時以前からの親交もあったみたいだけど。

 すると先々代魔王の背後から先代魔王までも顔を出す。


「お父様・・・こちらの方々は?」

「こちらは我が祖国の姫殿下だ。そしてこちらの御方は・・・我らが始祖である」

「!? で、では?」

「そうだ。先頃の件も含めて、この御方達の褒美という事になる」

「なんと! ありがとう存じます」


 いや、先々代に次いで先代魔王までも跪いた件について。衛兵達は騒然とし空気を改めていた。相手はどこぞのエルフ族ではないと。

 私とマキナはこのままだと勘違いされるので〈変化(へんげ)〉を解き、吸血姫に戻る。

 エルフ族は元々の四人だけとなり、周囲は唖然(あぜん)としていた。その後はズラズラと眷属(けんぞく)達も顔を出し、六台の荷馬車から多勢が出たとして驚かせてしまった。

 クルルとコウシは(つがい)の居る車輌から出たが。

 その光景には先々代、先代魔王共に驚いた。


「「!!?」」


 総勢五十二人。

 どこに入っていたというような反応だろう。

 私は六台の荷馬車を亜空間庫に片付けながら移動を促す。周囲の視線が痛いから。平民や貴族達は居ないけど、兵士が見てるからね?


「さて、上に立つ者を待たせ過ぎても良くないから移動しましょうか。周囲の目もあるし」

「「は!」」


 ただ、応じたのが眷属(けんぞく)達ではなく魔王達だから微妙な空気となった。

 彼らも一応、眷属(けんぞく)といえば眷属(けんぞく)だけど。

 なお、今代魔王は謁見室・・・ではなく第二王妃の住まう居室で回復祝いをしているわね。

 正妃は少々苦々しい顔になっているけど。

 それは王太子を始め第二王子や第一王女も同じような顔付きである。この国も政治的な思惑がどこかしらにあるようだ。

 混ざり者の正妃は気づけていないようだが。

 第二王妃との立場が違うという事を。




  §




 第二王妃のお願いで私達の歓待パーティーは開かれた。それは内々のパーティーであり──


「第二王妃を救って頂き、感謝申し上げる」


 今度は今代魔王が私達に跪き頭を下げた。

 これも慣れるしかないのでしょうね。私達の神殿の件もあるから。

 私とマキナは目配せし今代魔王を立たせる。


「どうか頭を上げて下さい」

「私達も魔の女神の願いを聞き届けただけですから」


 魔王は頭を上げ──


「失礼し・・・今、なんと?」


 不意のきょとんをみせる。

 隣には苦々しい顔の正妃がおり、微妙な空気を漂わせていた。


「聞き届けたと聞こえましたが?」


 直後、先々代魔王が口添えした。


「それはそうであろう。この方々は魔神様よりも上におわす御方なのだ。それも生死を(つかさど)る女神様に他ならない」


 先代魔王までも何度も頷いている事から周囲は絶句し私達をみつめる。他の眷属(けんぞく)達は美味なる料理に舌鼓をうっていたが。

 この空気感の違いはなんなのかしら?


「そして我らが始祖でもあらせられる。この意味は分かるな。無遠慮な態度は身を滅ぼすぞ」


 その言葉を受けた正妃と王太子、第二王子と第一王女は驚き過ぎて固まった。


「「「「!!?」」」」


 おそらく神託に関連してなんらかのお達しをしていたのだろう。今代魔王に至っては父や祖父と同様の態度に改めていた。

 恭しいとでもいうように。

 空気が重くなるから勘弁して欲しいけど。

 だから私は困りながらも──、


「余程の悪事に手を染めてなければ問題はないわよ。悪事に手を染めていたらその限りではないけど。第二王妃もお陰で同類となったしね」


 先々代と先代以外は知らない事実を示した。

 正妃と王太子は頬を引き()らせ、王子と王女は気絶した。私の言った意味。

 それがどういう意味なのか気づいたらしい。


(遠方だから判らなかったけど・・・正妃と王太子は隔離されてて・・・弱々しいわね。今代魔王は知ってて泳がせている? いえ、気づいたのは最近かしら? 混ざり者・・・と思ったけど上手く化けてるじゃない。これもミアンスの依頼品ね? 血の繋がりを偽装する、一歩間違えれば死滅する類いの液状魔具ね・・・元々は人工使い魔を作る道具みたいだけど)


 私も気づいた。そこに居る者の正体を。

 それは血液を媒体に使う魔具だった。

 使い魔用途の魔具を人体に利用し紛れこんでいたのだ。変装魔具と同時に使えば誤魔化せると踏んで。私もまんまと騙されたわね?

 一方、第二王妃も直前までは黙っていた。

 今は今代魔王の隣で──、


「はい。嬉しい事に始祖にして下さいました」


 頬と瞳を赤く染めていたから。

 今代魔王は一言と変化に気づいた。


「なんと!? で、では?」

「はい。陛下のお考えの通りで御座います」


 第二王妃は嬉しそうに微笑みをみせた。

 微笑みを向けられた今代魔王も理解した。

 危惧すべきは生まれた子の魔人化だった。

 それもあって彼女を抱けずにいたらしい。

 だが今はその危惧そのものが消えていた。

 生まれ出る子は完全なる吸血鬼族となる。

 直後、今代魔王は周囲が驚く言葉を発する。


「うむ。それは誠にめでたい話だ。よし! この際・・・お主を正妃に据えよう!」

「よ、よろしいのですか!?」

「なにを言う。問題はあるまい」


 今代魔王は余程嬉しかったらしい。

 先々代と先代魔王は自身の眷属(けんぞく)とした多種族と契りを結んだようだから。

 すると今代魔王の決定を聞いた正妃は──


「へ、陛下!? それはあまりにも!?」

「そ、そうです父上!!?」


 驚愕のまま王太子共々食い下がる。

 だが、残念ながら・・・食い下がった直後に私とマキナの時間停止結界で多重捕縛された。

 それは気絶した者を含めての処置だ。

 不死者ならば止まる事はない結界だ。

 だが彼女達はあっさり止まった。

 私は安堵の表情の今代魔王に問い掛ける。


「やはり、気づいていたわね?」

「ええ。お力を頂いた直後に気づきました」

「私もこのような者達がこの場に居るのか不思議でした。騙されていたのですね・・・民達も」

「まったく嘆かわしい・・・」

「こやつが進めていた人族への死罪回避策とはこのためでもあったか・・・」


 その後、歓待パーティーは一時休止となり、私達は(あき)れたまま侵入者達を眺めた。


「この肉、毒入りだわ」

「こっちは水銀だね〜」

「風味付けとしてはいいけど、余り口にしたくないわね・・・現物の特性を知っていると」

「一応、毒消し飲む?」

「私達には効かないでしょ!」

「このグラスにも塗布された下剤があるよ〜」

「さっさと追い出したかったのかな?」

「これなんて出るのは下からでしょ?」

「魔族や亜人には効かないのにね〜」





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