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隠形吸血姫、クラス転移で勇者達の敵になる?〜いえ、戦力差が過ぎるので私は旅に出ます!〜  作者: 白ゐ眠子
第六章・砂上の魔楼閣。

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第132話 魔女神の意趣返しと吸血姫。


 それからしばらくして私達は王都に着いた。


「では当初の予定通り・・・散開!」

「はい!」×21


 私は割り当てした人員と行動を開始した。

 潜入班はナディとショウの獣人族。

 私と同行するのは入国時と同じ面々だ。

 王都の情報収集班は、リンスとユーコ、フーコとユーマ、ハルミとサーヤ、ミズキとミーア、アコとココ、ニーナとシロを指名した。

 上空監視班には有翼族(ハーピー)の五人を加え、多方面に情報を集めていく。


 それは西方の街では集まらなかった情報を寄せるためだ。一方面のみの情報では欺瞞の可能性が高い。それならば人員数を誇る我が眷属(けんぞく)に委ねる方が早いだろう。

 これは今後展開する予定の作戦の予行演習でもあるため、全員は本気であたっている。

 但し、人族国家に比べたら難易度はこちらの方が高い。それは同族から情報を集めないといけないからだ。吸血鬼は王族以外は居ないが。

 そして残りの人員は待機要員として荷馬車(拠点)の警戒にあたり、ナギサとシオンは荷馬車(拠点)から各員との連絡と指示を出す事になっている。私が指示を出してもいいが、作戦が同時進行の場合はそうはいかないから。

 すると私と共に王都の魔神殿に向かっていたレリィがモジモジしつつ問い掛ける。


「あ、あの?」


 私は外套を被ったままレリィに問い返す。

 レリィとタツトだけは種族を明かしたまま歩いていたが。


「どうしたの?」


 なお、今回の私達の立ち位置は前方にタツト、次いでユウカとアキ、シンとケンが続き、私とマキナがレリィの前を歩いていた。


「いえ。光家(みつや)の事・・・知っていたのに、知らないフリをしてしまったので・・・申し訳なくて」


 それは黙っていた事を詫びる姿だった。

 一組に彼氏が居たとは明言出来ないものね。

 色々と難ありのクラスだったし。

 愛娘のマキナは例外だけど!

 私はレリィの心配が杞憂とでも──


「そのこと? それなら気にする必要はないわ。どうせ家での繋がりでしょう?」


 いうようにあっけらかんと返した。

 実際にレリィの記憶と思考が合致したのだ。

 ここ最近は私も人が多い事から一々咎めたりしないだけだが。個性は大事にしないとね。

 レリィは恐縮しきった状態で返事した。


「え、ええまぁ・・・」


 だから私はあえて問い掛ける。

 沈黙中のマキナと共に前方を向いたまま。


「それで彼は使えるの?」


 レリィはきょとんと応じた。


「というと?」


 私は目的を秘したまま再度問う。


「副料理長って意味よ。もし可能ならね?」

「あぁ! それは問題なく・・・むしろ私よりも腕がありますね。実際に修行をしていたので」

「跡継ぎだったって事ね? 婿養子として」

「ま、まぁ端的に言えばそうなりますね」


 レリィはなんだかんだと愛しているらしい。

 今は女の顔を覗かせていたから。

 まぁ私が以前、彼の事を「中身はともかく」と言ったが・・・これは校内での噂が原因ね?

 彼は彼女と勉強以外は興味無しの人物なの。

 彼女に関連する内容には興味を示すけどね?

 普段はそういう素振りを隠しているけど。

 それもあって今回訪れたのは勇者の仕事で、クリスがタツトに反応したから応じただけね?

 本来なら興味すら示す事はないから。

 本人は近くに愛する彼女が居た事に気づいてすらいなかったけど。これもレリィの見た目が変わっているからだろう。

 レリィは気づいて欲しかったみたいね。

 レイなら可能性はあったかもしれないけど。

 レリィとレイと彼女が増えているから彼の反応が見物だわ・・・それはともかく。

 私はレリィとの会話を終え、目前に近づいてくる魔王城と魔神殿に目を向ける。

 魔王城は尖塔とでもいうような縦に長い建物だった。逆に魔神殿は屋根が丸い建物だった。

 この魔神殿はユランスを祀る神殿であり──


「お待ちしておりました」


 ユランス自身がエルフの姿で待機していた。

 主祭神である女神様が神殿の入口に立つ。

 私からすれば頭痛のする思いだった。

 私はマキナを連れて彼女の前に移動する。


「お出迎え・・・って大丈夫なの?」


 他は魔神殿の大きさに圧倒されていたが。

 まぁ大きいといえば大きいわね?

 ユランスは同行者の様子を苦笑しつつも一瞥し、私の問い掛けに応じた。


「問題はありません。依り代となっている女の子はこの神殿の枢機卿ですから」

「そういう事なのね・・・彼女の意識は?」

「ありますよ。姉上の事も伝えています。生死神である事も」

「そ、そうなのね・・・」

「これで無事に信者が増えますね?」


 私とマキナは頬が引き()った。

 苦笑気味のユランスの奥、枢機卿の意識が発狂していないだけ儲けものだが。私は信者を奪うようで、申し訳ない気分に苛まれる。


「だ、大丈夫なの? 貴女的には?」


 するとユランスは私達が驚愕する一言を──


「問題ありません。元より生死を(つかさど)る神の方が上ですから。それと不死属性付与の件は私ではないと返しましたよ? 此度より生死神が降臨したと神託を出しましたから」

「「!?」」


 発してしまった。

 それは私が身代わりとした事への意趣返しのようだ。ユランスは私達の驚きを見て、してやったりの表情になりつつ語り出す。


「それもあってアイネア合国本国・・・東部門付近に新規で生死神殿を用意すると息巻いていますね。今代魔王と先代魔王も同意しています。王太子は不承不承という感じですね」

「「・・・」」

「これも今回不死属性の付与を受けた事で確定した事案ですね。生死神殿の教義は姉上の所業そのものでして〈正しい行いをした者は転生及び永遠の命を与えられ、不正を行った者は世界の魔力に返される〉となっているようです」

「「・・・」」


 私とマキナは絶句。

 ぐうの音も出ないとはこの事か。

 私の行いというが・・・これはユランスが神託で伝えた事案だろう。ホント油断ならない妹神だわ。マキナは唖然(あぜん)としつつもシオンに念話で伝え、同じく絶句を与えていた。

 ただ、話としては悪い事でもないため──


「まぁいいわ。頻繁に神託を出す事はないからそれだけは覚えておいてね。悪意が溢れる場所が増えた場合は・・・その限りではないけど」

「それで構いません」


 依り代である枢機卿に念押しした。

 中身は感涙しているけどね・・・。

 会話出来ただけでこの状態だ。

 ユランスが宿っていなかったらどうなっていた事か? それだけが救いに思えた私だった。

 私は気を取り直してユランスに問う。


「さて、時間もあれだし」

「ええ。準備は整っております」

「それでどこで?」

「今は神殿内に来て頂いております。その方が良いでしょうから」

「確かにね・・・助かるわ。城に上がるのもコネが必要だし」

「姉上なら素顔でも受け入れてくれると思いますよ? 始祖なのですから」

「魔王の祖って言われても困るわよ」

「そうですかね? まぁ彼女が治った暁には信者と共にコネが出来ますね?」

「・・・もう好きに言って」


 いやはや、この妹神だけは油断ならないわ。

 その後の私達はユランスと共に神殿に入る。

 神殿内の医療区画にはダークエロフが横たわっていた。身形の整った銀髪褐色の王妃様。

 その表情は苦しげであり、周囲には魔力拡散を抑える結界が張られていた。

 私は王妃に近づき腕に触れ状態を鑑定する。


(余命はあと数日ってところかしら? マナ・ポーションの飲ませすぎ・・・ね)


 ユウカは薬師として症状を鑑定する。


「これは水銀中毒? この地の水源は・・・問題ない。意図的に混入した可能性が高い? ポーション瓶に痕跡がある?」


 アキは錬金術士として近くにあるポーションを鑑定する。


「光属性に少しだけ闇属性が混じってる? 水銀もこの中に混じってる」

「やはり混合物だったのね」

「もしかすると魔王城にあるポーションが侵されている可能性があるかも。至急液体ではないヒーリング・ポーションを用意するわ」

「お願いね。ユウカ」


 するとマキナが王妃の様子見しつつ──


「ひとまずは保ちそう?」


 心配そうに問い掛ける。

 私はユウカの調合が終わるまでは手持ち無沙汰となったのでマキナの問いに答えた。


「状況如何によっては・・・ね? 耐性が得られるか死するか微妙な線ね。必要とあらば」

「うん。用意だけはしておく」


 マキナは自身の本体に魔力を注ぐ。

 私は〈スマホ〉を取り出しつつ──


「種族情報を・・・今、共有したから」


 マキナの〈スマホ〉に送った。

 マキナからはジト目のツッコミが入ったが。

 

「ダークエロフって? エルフじゃないの?」

「送信名を間違えたわ。でもそちらの方がよくない? 胸が大きく育つし。種族名はダークエルフだけど」

「あ、本人が頷いてる・・・おっぱい大きくなりたいんだ」

「き、気にしてたのね」


 なお、シンとケンは王妃の姿が裸体だったため、室内には入っていない。今は部屋外で女性兵に事情聴取を行っていた。


「調子がおかしくなったのは?」

「嫁いできて直ぐでしたか?」

「御子は?」

「まだですね。魔王様もお忙しいのでそれどころではないようですが」

「「なるほど」」


 そしてタツトとレリィは周辺警戒していた。


「奴らは来ると思うか?」

「・・・今は早馬で王都の近くに居るわね」

「不必要な争いにならなければいいが」

「こればかりは私にも判らないわね」


 自分達の(つがい)が来る。

 それらに対して不安気だった。





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