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第13話 吸血姫は過去を読む。


「そうそう、疲れてるところあれだけど、湯浴みしたらいいわよ〜」


 ひとまずの私は錬金鍋の片付けの最中、リンスに対して一つの提案を行った。それはリンスが臭うというと語弊(ごへい)があるから失礼なんだけど、ようは盗賊に捕まってる間の汗やらなにやらでね?

 だから気を利かせて提案したの。

 一応、リンスも魔力が回復してから生活魔法の一つである清浄魔法を行使してたし臭い的な物はないのだけど、気持ち的に清めたいって表情が時々出てたしね?

 それに街でも宿屋に泊まらないということでガッカリした感があったから。

 この生活魔法だけは空間に漂う属性外魔力を使うそうで戦闘には使えないが生活を豊かにする場合にのみ利用可能だそうだ。

 それは亜空間であろうとも人が居れば使える魔力らしく存在自体が不可解な代物である。

 すると、リンスは私の提案を聞き、年相応の女の子の顔をのぞかせた。


「え? お風呂があるのですか?」


 私は片付けを終わらせながら指をさして場所を示した。錬金場と寝室の間にある廊下から顔を出しダイニングの奥の扉を示したのだ。


「ええ。ダイニングの脇にある扉の奥に二つの扉があったでしょう? その左側がお風呂ね? 右側はトイレだからあとで使い方を教えるわ」


 お風呂はあとで説明するがトイレは異世界印の温水洗浄乾燥便座だ。当然、局部や便器に清浄魔法を最後に掛けるのでいつでも清潔だ。

 あれに慣れると普通の便座が使えないのよ。

 私も時の変遷で初めて知った時は気持ち良かったから・・・そ、それはともかく。

 リンスは私に示されるがままお風呂まで歩いて行った。その間の私はといえば脱衣所で服を脱ぐリンスの裸体を〈遠視〉しつつ調べた。

 それは下着のサイズを測るためであり眷属(けんぞく)としての異常がないか調べるためでもあったの。

 結果は異常なしだったけど、裸体を見る限り胸のサイズがDはあったわね?

 だからそのサイズでブラを(こしら)えた。その後、バスタオルやらなにやらを用意した私はお風呂へと向かいリンスに問い掛けた。


「湯加減はどう?」

「あ、丁度いいです〜」


 すると、返ってきた言葉は気の抜けた年相応の女の子だった。流石に風呂で気を張るのは愚の骨頂だもの。誰かに見られる訳でもないし。


「一応、()えの下着とか用意したから、あとで付け方を教えるわね?」

「え? 下着ですか? はぁ? わかりました〜」


 私は()えの下着を(かご)の中へとおさめ、リンスが出てくる前に隣へと設置したシャワールームで身体を洗った。

 お風呂だけでもいいけど、時間が押した時とかは簡単に流す方がいいからね?

 これは今朝の内に新設した物で風呂やシャワーのお湯も〈魔導書(アーカイヴス)〉に()っていた魔石を錬金魔法で作り出して、お湯や水を都度(つど)生成する物とした。

 このお湯も排水口を通ると外のタンクに収まってすべてが魔力還元し、それぞれの場所に置いた魔石に戻るという経路を(ほどこ)している。同様にトイレの排泄物や汚水もタンクに収まるから汚物で空間が汚れる事はない。

 これもある意味亜空間内で完結する魔道具の一種ね?

 ひとまず、シャワーを済ませた私は身体の水分を拭いながらリンスが出てくるのを待った。

 パンツは流石に穿()いてるわよ?

 今はブラを着けてないだけだから。

 あとは髪の毛を〈温風魔法〉で乾燥中ね。

 コンディショナーとかシャンプーが用意出来るなら、のちほど準備しないとね。温水洗いだけでは完全に綺麗になったとは言えないし。

 それからしばらくして──、


「いいお湯でし・・・た? なんでカナデさんまで裸なんですか?」


 リンスが扉を開けた瞬間、脱衣所の私に気がつき声を荒げた。私は問われて視線を落とし、半裸と思いつつもあっけらかんと告げた。


「ん? 私? そっちでシャワーを浴びたから?」

「シャワー? ってなんですか?」


 だがリンスはシャワーを知らなかったような口ぶりできょとんと問い返したので大まかな例えで返した私である。


「簡単に言うと、お湯で行う水浴びみたいなものかしら? 短い時間で汗を流す時に重宝するからね」

「そう・・・なんですね? というか・・・大きいですね?」

「ああ。まぁね?」


 まぁ、あとはあれね?

 私の胸の大きさに絶句してたわ。

 私はその絶句に対して苦笑しつつもブラを手に取り己が胸を収めた。

 すると──、


「その上に付けてるのは一体?」


 リンスは身体の水分を拭いつつも、ブラの存在に気づいた。私はリンスのブラとパンツを(かご)から取り出して手渡した。


「ああ。これがさっき言ってた下着ね? 胸を守る物なのよ。下も薄いけど着心地は安心していいわよ?」


 その後は付け方講座とか穿(はき)き方を教えると、リンスは大興奮となった。


「凄いです! 薄いから色々心配でしたけど肌触りはいいですし、蒸れないです! それに胸をスッポリ(おお)う安心感はたまりません!」

「ふふっ、良かったわね? それに前より大きくなってるわよ?」

「!? ほんとだ! すごい嬉しいです!」


 リンスは未だに半裸状態であるが、自身の大きく育った胸に喜びを示し、両手で抱きかかえながら満面の笑みを浮かべた。




  §




 その日の深夜。

 あれからリンスは寝間着へと着替え自身に割り当てられたベッドの上で眠りについた。

 私も同じく隣のベッドへと眠ったのだけど、あれよね? 眷属(けんぞく)化したからだと思うけど、リンスの見た夢が私に流れこんできて大変だなぁという感じをうけたの。

 おそらくリンスの無意識が見せたものなのだけど・・・〈魔力欠乏症まりょくけつぼうしょう〉という病が彼女の身内に出たらしく改善策が見当たらないとあるのね?


 それは内なる魔力がなんらかの要因で発散し続けるという物で、ある一定の閾値(しきいち)を超すと生命力までも魔力に変換し、命に関わるという病なの。

 一番無難な魔力供給法は血を吸い続ける事なのだけど迫害が影響してて真っ当な人族の血が得られない事にあるみたい。

 だから大元を改善させるために対策を探しているのがリンスの願いみたいなのね?

 魔導士となったのも対策を探すという事だろうから。


(改善策は・・・器の修復よね? やっぱり光属性魔力による器の破損が要因・・・かしら? となると・・・過去が読めるかしら? ふむふむ)


 ひとまず私はリンスの夢で知った彼女の身内を〈遠視〉し状態を把握した。そして原因となる異物を知り過去を読み取った。これは〈時間干渉〉スキルの応用であり、今のところは私しか扱えないスキルのようだ。女神様は除く。


(ダメね? これはダメだわ・・・ポーションの誤飲とか手違いどころの話ではないわ)


 過去を読むとあれだった。

 原因が王宮医師にあったの。

 これは言うべきか悩む事案よね?

 闇属性を持つ吸血鬼族の者に光属性のマナ・ポーションを与えるなんて。

 単なる事故では済まされない話だもの。

 そのうえで問題の王宮医師を調べると人族だったのと悪意の塊だった事も(うかが)えたので迫害が極まればとんでもない事になると思い知った私であった。


(リンスの出身地は第二十二浮遊大陸・ルティア〈ティシア王国〉・・・この大陸からは真反対の浮遊大陸・・・〈遠視〉で状態把握は出来るけど跳ぶには距離がありすぎるわね? それこそ中央大陸に行ってから近いところまで跳んでという感じになるかしら?)


 私は対策の方針を立てようと思案した。

 だが空間跳躍(くうかんちょうやく)でも行き来するのは難しいという反応が返る距離感(・・・)だったのだ。

 せめて中央大陸に出ればすぐに向かえる可能性は高いが真反対のこの大陸に居る以上は無理だという事が判る事案であった。


(まぁリンスが心から願った時に動くとしましょうか? 今は・・・転送魔法で初級ヒーリング・ポーションを体内に転送・・・完了ね? こちらは闇属性の物だから受け入れ拒否にはならないと思うけど・・・うん、ひとまず一時的でも症状が改善したみたいね?)


 その後の私は夜中という事もあったけど寝入ったリンスの身内に対して出来うる対策を講じた。寝てる者の胃に大量の液体を流し込むのだから、ある意味でテロっぽいけど症状が改善した事で定期的にこの方法を()ることにした私である。

 どうも、器の修復にはマナ・ポーションよりもヒーリング・ポーションだと〈魔導書(アーカイヴス)〉に()っていたから私の保有魔力を用いて作った物を送ったのだ。

 肝心の鑑定結果は初級のはずなのに上級の品質と出ていたけれど。





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