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隠形吸血姫、クラス転移で勇者達の敵になる?〜いえ、戦力差が過ぎるので私は旅に出ます!〜  作者: 白ゐ眠子
第六章・砂上の魔楼閣。

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125/276

第125話 念話利用に呆然の吸血姫。


 その後の私達は荷馬車(拠点)に戻った。

 マキナはミズキ達の元へと向かい、シオンは一号車のプールに戻り、先ほどの件をリンスに説明するという。

 私はナギサの待つ監視室に向かい──、


「あれから変化はない?」

「問題はありません・・・が、先ほどの件は?」


 ナギサにだけ事情を伝える事にした。


「・・・ナギサには教えるけど」


 この場には彼女しかおらず、他はキャンピングトレーラーの自室やログハウスの厨房にて作業していたからだ。ナギサは私の事情を知り、敬虔な信徒の様相を呈した。


「なるほど・・・主様は名実ともに私の仕えるべき御方になられたのですね・・・ぐすっ」


 元々が信心深い人物なのでこればかりは仕方ない話だが。するとナギサはロザリオを取り出して私を拝む・・・大粒の涙を流しながら。

 私は引き気味に他の対象者を明らかにした。


「ま、まぁ・・・マキナ達も一緒だけどね?」

「マキナ様・・・マキナさんも一緒なのですね」

「え、えぇ。とりあえずはそういう事だから。それと・・・貴女達も先兵という事になるわ」

「せ、先兵!」


 それを聞いたナギサは大感激の表情に変わる。私は引き気味にアインス達とは異なる点を彼女に示した。


「それと代行者の地位はこの姿の時だけね。本来の姿の時は生死神って扱いで私達に対する信仰は存在しないから・・・拝まれても困るけど」


 そう、今は拝まれる対象ではないもの。

 将来的に神殿が出来たら話は変わるけど。

 ナギサは私の困惑に気づき──、


「わ、わかりました。では、代行者ではなく本来の姿では、どのような扱いとなるのでしょうか?(・・・やはりアインス様達ではなくカノン様達が直々に罰するのか?)」


 顔面蒼白で態度を改める。

 そこから先はいつもの調子に戻った。

 私はナギサの思考を読み取って答えた。


「貴女の考えた通り、私達から対象者への神罰が落ちるわね。とはいえ神罰は滅多な事では与えないけどね・・・主に行うのは転生の(うず)と大差ないから」

「なるほど。承知致しました(・・・え? し、思考を読まれた?)」

「・・・(これは無闇矢鱈に読むのは止めた方がいいわね。流れてくる思考は本人の意思で止められるから、なにを考えているとしても感づかれるのは不味いかも)・・・とりあえず、夕食後に明日の方針を伝えるから」

「しょ、承知致しました」


 ともあれ、途中より腹の探り合いの様相を呈したが、私とナギサは交代員が来るまでの間、他愛もない話題を繰り返した。それは世界の真実の一つや、上を扱う三女達の事だったが。


(この地が地底! そのようには見えない・・・いや、やはり神々は凄い!)


 その結果、ナギサの信心は一層深くなった。




  §




 それは夕食後。

 私はログハウス内に設けた講義場にて翌日の方針を一同に伝える。この講義場はイリスティア号の中にあった講義場である。今は船体メンテナンス中なので内部扉をログハウスに設置しただけだが。


「・・・という事で明日の人員を発表するわね」


 それは〈マグナ楼国(ろうこく)〉へと調査に入る人員だ。メンバーは主にエルフ族を中心とし、護衛としてオーガ族の者を選んだ。


 ───────────────────

 使者(エルフ族に変化(へんげ)

 カノン、マキナ


 エルフ族

 ユウカ、シン、ケン、アキ


 オーガ族

 タツト、レリィ

 ───────────────────


 私達が侵入する予定の〈マグナ楼国(ろうこく)〉は魔族国家だ。内部に吸血鬼族が居るかどうかは不明であるため、私とマキナも〈変化(へんげ)〉したうえで侵入する予定だ。

 すると選ばれていない者達から質問が入る。


「私達はその間どうしたらいいの?」


 それはきょとん顔のフーコの質問だった。

 私はマキナ達と目配せして答える。


「外周結界は国境手前まで。車は魔族の警戒網近くまで移動するからそちらで警戒して貰えるかしら? 中の状況次第では全員で入る事になるだろうけど魔族も警戒だけはしているから」

「! そっか。人族の見た目だったから」

「ええ。現時点で同族であると示したわけではないからね? 変装魔法なるものは無いというし、この下界で常時偽装する者は皆無だもの」

「うん、判った。みんなもそれでいいよね?」

「異議なし!」


 フーコが全員の代表となっている点は置いといて。ひとまず全員の同意が得られたため、私は翌日向かう者だけ残ってもらい、他の者達には解散して貰った。


「総責任者はナギサとシオン、各車では運転手のナディ、フーコ、ニーナ、サーヤ、サヤカ、シロは残ってね。内容を詰めるから」


 但し、現場責任者は除く。

 それは有事の際に動ける者達を選んだ。

 運転手は常時待機となり、運転手がトイレに行く際には内部時間を時間加速する事にした。

 そして次なる指示は連絡方法である。


「おそらく内部に入ったら〈スマホ〉が取り出せないと思うから念話での対応になると思う。あの魔具を外では示す事が出来ないからね。特殊すぎて奪われる恐れもあるから」

「それって先ほど配られたスキルですよね?」

「ええ。ナディの言うとおり元々がスキルだから魔法の念話とは異なるわよ。使い方は同じだけどね? 但し、敵対中の勇者達には使えないから注意してね?」


 するとナギサが心配気に問い掛ける。


「私達だけという事ですね? ですが結界は」


 それは私が施した念話完全防御結界の事だった。実は施してからしばらくして関係者に伝えているのだ。もし生存がバレて不意打ちで念話が来たらどうなるかという、不安を表に出したミーアから質問をいただいたから。

 私はその旨で先頃の騒ぎを思い出させる。


「問題ないわ。マキナを除く元勇者勢に施している防御結界にも干渉しないから安心なさい。こちらは魔法での念話より高度な物だから」


 そしてフーコに視線を注ぎつつ答えた。

 ナギサはフーコの一件を思い出し苦笑した。

 フーコはきょとんとしたままだが。


「なるほど。確かにこちらの方が簡単ですね」

「〈相互念話〉は考えるだけでいいからね」

「あ! それで私を見たの!?」


 私はフーコの気づきに対し、あっけらかんと答える。視線はレリィに向けたままだが。


「やっと気づいたの? レリィがげんなりしてるけど?」


 するとフーコはなにを思ったのか──


「ぐぬぬ・・・こうなったら、全員にいくよ!」


 唸りながら(私だけ恥ずかしいのは無しよ!)と思いつつ、ナディが真っ赤に染まる妄想を全員の帯域で垂れ流す。

 ナディは大慌てでフーコの頭を引っ叩く。


「ちょ!? なんで私を脱がすのよ!?」

「痛っ!!」


 ニーナは痛みで頭を押さえるフーコを眺めながら(あき)れのままに溜息を吐く。


「ナディの素っ裸を全員に示さなくても」


 ナディも本気のツッコミではない事から心では喜んでいる・・・否、三バカに対しては冷酷な対応をとっていた。ナディも一応は女の子。


「三バカ! 今見た事は即座に忘れなさい!」

「「「そ、そんな理不尽な!」」」

「あ? 全身を爪で刻まれたいの?」

「「「は、はい、忘れます!」」」


 異性には見られたくなかったようだ。

 苦笑するタツトには恫喝すらしていないが。

 私とシオンはそんな騒ぎを眺めながら──、


「ある意味で思考爆撃ぽくなるわね?」

「使い方次第って事ね。今のは悪い例だけど」

「決まり事は必要かもね?」

「これはあとで決めますか」


 (あき)れのままに念話の決まり事を用意しようと話し合った。一方、ナディ達を見ていたマキナは終始腹を抱えて笑っていた。


「今度はアキが垂れ流してる〜ぅ。これはナディの過去かな?」

「アキ!? なにしてるの!」

「てへぺろ!」

「幼い頃のナディかわいい〜」

「「それならユウカ、別の記憶もどうぞ〜」」

「一緒に居るサーヤ達もかわいいね?」

「カナブンを食した時の記憶だわ・・・これ」

「なんか懐かしいね・・・」

「カナブン言うな! サヤカ達もその記憶流すの止めて!」

「「てへぺろ!」」





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