第12話 職業と吸血姫。
召喚されてきてようやく二日目が終わろうとしていた。一日目はなんやかんやあって活動拠点を設け、二日目で肉と野菜と貨幣と塩を手に入れ、そのうえ眷属までも手に入り・・・否、仲間となったことで旅支度としては今後も楽しめそうかなと思う私であった。
そんな私はようやく待ちに待った食事が摂れるとして兎肉を亜空間庫から取り出しつつもログハウスのキッチンにて捌き魔力によって作った皿に盛って魔力コンロで作ったソースを振り掛けた。
牛肉も魔力オーブンで焼いたのでローストビーフとして必要数を皿に盛る。
この調理道具も錬金魔法で作った特別製であり、この場でしか使わない物として〈魔導書〉に載る素材で、たちまち入手不可能な素材を作り出したのだ。
俗に言うドラゴンをブッ叩いても凹まない純白のフライパンという感じだろうか?
ある意味で武器にもなるそれは熱伝導性も高く取っ手に付けた特性樹脂が無ければ火傷するような代物である。
──閑話休題──
その後は二人分の料理をテーブルに並べ、ナイフとフォークを持ちながら、ホクホク顔で戴いた。
「戴きま〜す! う〜ん。ほどよく蒸し焼きになってて美味しいわね! 岩塩で味付けしたソースも控えめで肉の甘さを引き立ててるし、なによりこのレタス、元々が魔物とは思えない味わいだわ」
すると私の前に座る眷属ことリンスが困惑顔で物申す。
「あの? カナデさん? この料理はどこから?」
だから私はあっけらかんと教えてあげた。
「ん? リンスに出会う前に仕留めた魔物ね? 確か・・・こっちの赤いのが〈イビル・タウロス〉とかいう牛型魔物で、こっちの白色が〈ブラッド・ラビット〉の肉になるわね? 付け合わせのレタスも〈レタボウル〉なる植物系魔物だけど?」
「い、い、〈イビル・タウロス〉!? それってAランク以上の魔物じゃないですか!? 普通に買い取りに出したら、大金貨二枚はいく代物ですよ、これ?」
だが、リンスは魔物の名前を聞いた瞬間から顔面蒼白となり驚愕の嵐となった。
なんでもAランク以上というのは冒険者ギルドが指定するSランクに相当する魔物の事であり、災害級であるドラゴン以下に割り当てられる魔物を指すそうだ。〈ブラッド・ラビット〉もAランクの魔物だが、こちらは複数件の出没でAランク指定された魔物であり、単一であればCランク相当に属するという。
主にこれらは人族の冒険者基準でありレベル9までがFランク。レベル19までがEランク。レベル39までがDランク。レベル59までがCランク。レベル79までがBランクに相当し、リンスは80のためAランクに属するという。Aランクはレベル99までであり100から上は必然的にSランクに相当するそうだ。
登録時にも一番下のFランクから登録させるわけではなく、その者が持つレベルに応じて決められているそうで、私の場合は初っぱなからSランク相当になるらしい。
レベルは自己申告な面も多いが大概は魔道具によって調べられるそうだ。だからなのかリンスは目の前に置かれた料理の素材が最高級の物と知りアタフタしだした。私としては簡単に狩った物のため、あっけらかんと問い返したが。
「ほうなの? モグモグ・・・ゴクン。まぁ倒せたのだからいいじゃない」
すると、リンスは私の言葉に呆れながらも問い掛けてきた。
「倒せたからって・・・ところで、カナデさんのレベルっておいくつなのですか?」
だから、当たり前に居るよね?
というニュアンスで本当のレベルを明かす。
「ん? 300」
「え? 今なんと?」
明かしたのだが寝耳に水な表情が返ってきており、今度は耳を聳たせながらリンスは問い返してきた。私は口元をナプキンで拭いつつ居住まいを正し、率直に数字を読み上げた。
「300」
「へ?」
「おーい、リンスちゃーん? 大丈夫?」
だが、この数字はあまりにも予想外だったのかリンスはその瞬間に気絶したようで泡は吹いてないが口をあんぐり開けて固まった。
私はその反応に困り果て席を立ちながらリンスに駆け寄り揺らしてみたのだが反応はなく、致し方ないと抱き起こし、私のベットの隣に用意した別のベッドへと寝かせた。
仮に脱がせてもいいけど同意なしで剥くのは悪い気がしたからね? 彼女のパンツはカボチャパンツだったけれど。
§
「食事も冷えるとあれだから、時間停止保温庫に保管よね? 流石にもったいないもの。このログハウス内だけは時間が進んでるし」
その後の私はリンスのために用意した食事が傷まないよう、その場で用意した魔道具へと片付けた。これはこのログハウス内でしか使わない代物だから出来る限りの保有魔力を用いて作ったのだ。錬金術士様々である。それというのも魔力鍛錬を行わないと不意打ちで〈魔力触飲〉してしまうから。
「残りはさっさと食べちゃいましょうかね。他にもやることあるし」
私は食事の残りをすべて平らげ別の区画に設けた錬金場へと足を運んだ。実は購入物品の中にはポーション用の素材もあったのでこれから簡単なポーションを作る予定でもあったの。
なにが出来るかは私の腕次第なんだけどね?
§
「闇属性魔力を与えたら、夜の住人用になるのね? 逆に光属性魔力なら昼間・・・人族用となるか。となると片方に効くポーションを相反する者に飲ませると・・・毒になるのね〜」
その後の私は錬金場で必要数のヒーリング・ポーションを拵えた。
等級でいえば初級が殆どだが、辺境の街で手に入る素材はそれくらいしかないためでもあるのだ。
ポーション素材の主なる材料は同じなのだけど与える属性によっては毒にも薬にもなり、使い方次第という面が際立つ結果となった。
すると──、
「カナデさん? なにをされて?」
リンスが寝起き姿で声を掛けてきた。
一応、ここは寝床の隣に用意した区画だったけど、すぐに見つけるとはやりますな!
というのは置いといて私は微笑みつつもリンスに問い返す。
「あぁ目覚めたのね?」
しかし、リンスは私がテーブルに並べたポーション瓶を眺めて問い掛けた。
「それはポーション?」
「ええ。私、錬金術士だからね? 試しに初級ポーションを作ってみたのよ。保有魔力もキチンと使わないと増えないって聞いてたから」
だから私は改めて職業を明かし、お試し品を見せながら教えた・・・のだがリンスは私の服装から勘違いしていたようだ。
「錬金術士・・・魔導士では無かったのですか?」
その声音は問い糾すという、少し怒りの混じった声だった。私はリンスの問い糾しに対し苦笑しつつも事情を打ち明けた。
「うーん。魔導士としても活動は可能なのよ。ただ、職業柄数が少ないでしょう? 囲われる危険性を鑑みて・・・ね?」
「それは、貴族対策・・・ということですか?」
だからだろう、リンスも職業から察したようで怒りから同情の色が現れた。私はそんなリンスの問い掛けに対し首肯を示しつつも己が願いを打ち明けた。
「ええ。自由を奪われるとね? 世界を見て回りたい者としては定住は最初から考えてないから、ね?」
「なるほど。それで合点がいきました・・・レベルもそうですけど」
まだどこかしらに勘違いが残ってるようだがリンスはそれだけで納得したようだ。
ただレベルが高い事は召喚時に追加された事だけど実際はどういう意図でそのレベルに落ち着いたのか私にも判らない。
それこそ底知れずの魔力保有量・・・器の大きさを表す物なのかもしれないけどね?
実際に外部魔力と保有魔力が同じだけあって器に収まるという感じがするのだから。




