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隠形吸血姫、クラス転移で勇者達の敵になる?〜いえ、戦力差が過ぎるので私は旅に出ます!〜  作者: 白ゐ眠子
第五章・異世界殺戮紀行。

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第117話 吸血姫は戦力増に尽くす。


 ひとまず、第六十五浮遊大陸へと移動した私とマキナとミーア。荷馬車(拠点)の方はナギサとシオンに任せ、いつも通り身分保障と冒険者ギルドの登録を行う事とした。

 王都の路地裏へと転移した私達はまずティシア王国大使館へと向かった。

 その間のミーアは眼前に大きく見える数々の浮遊大陸やら飛空船、ドラゴンを見て呆気にとられ、私とマキナは苦笑しっぱなしだった。


「えっ・・・島が浮いてる? 船も浮いてる・・・ドラゴンなんてファンタジー?」

「リアクションはアキと同じね」

「判らない事もない。私も初めて見た時は同じ心境だったし」


 その後、呆気にとられるミーアをマキナがリードで引っ張りながら大使館までの道を歩む。

 私はマキナの隣を歩みつつ、助けた者達を話題に出す。今は〈常夜(じょうや)(こく)〉だ。

 夜に出歩く者は人っ子一人居らず、ミーアも夜目(よめ)により島々を見たに過ぎない。


「他の面子も大体似たり寄ったりだったわね・・・これが最後になればいいけど」

「それはお母様次第では?」

「確かに・・・そうかもね? こちらの勇者達は救いようのない者達しか居ないから保留組以外に救う事はまず無いけど・・・他にも気になる者って居た?」

「う〜ん? 元一組だとこれって者は少ないかも。男子達は総じて頭が良いだけの世間バカしか居ないし、女子達も今の面子以外は大体似たようなものだし・・・ニーナ達の仲間も含めて」


 マキナと共に救いようのない勇者達のネタを話している間も歩は進み大使館前に到着した。

 すると懐かしのガイア大使がひょっこり顔を出し諸手を挙げて歓迎した。


「おぉ!? これはカノン様! マキナ様!」


 それを聞いたミーアは気恥ずかしげになる私達を見て、きょとんとなりつつ問い掛ける。


「様付けされてる・・・二人ってどういう扱いなの?」


 問い掛けられたマキナは引き()った笑みのまま親としてミーアの疑問に答えた。


「主に始祖扱い。言ってなかったっけ? 真祖だって」

「!? き、聞いてないよ? ホントに?」


 私はその間にガイア大使へと本日の予定として登録準備のお願いをした。大使館内に入りながら続きを打ち明けるマキナだった。


「ホントに。私が娘だって話はしたけど、お母様達はホントのホントに真祖なの」

「マキナちゃんは?」

「お母様の血肉だけで生まれたようなものだから、人間の考え方ならクローンが正しいかな? もちろん、お母様のお腹から産まれてはいるけどね?」

「という事は同じ事が出来るの? 誰かを産まれ変わらせる事とか?」

「今はお婆さま(・・・・)にお願いして制限を掛けて貰ってるから同じ事は無理だね。でも眷属(けんぞく)を増やす事は可能なの。それでも余程の事が無い限り増やすなんて真似はしないけど」


 マキナは身の上話をミーアに打ち明けた。

 この話は問い掛けていないミズキにはしておらず、ミーアが初めての質問者だった。

 実質、マキナが私と似てるのはクローンだからといえば・・・そうかもね?

 私の場合は年を召したらどんな感じになるのか、マキナでみせてもらっていたけれど。

 私はマキナ達の会話が終わったと判断し二人に話し掛ける。

 

「準備出来たわよ。このシャーレに血を一滴垂らしてね?」

「判りました」


 ミーアは私に言われるがまま登録作業を行う。その間に私はマキナに問い掛ける。

 それは前々から思っていた事だった。


「それはそうと、成長させましょうか?」


 マキナは私の問い掛けに対しきょとんとするも、困惑しながら問い返す。


「へ? な、なんでまた?」


 私は制服を着せられてる感のあるマキナを見てから思っていた事を打ち明けた。


「子供の身長でその身体付きはアンバランスだと思ってね? 変態しか寄りつかないし」

「あ・・・確かに」


 流石のマキナも思い当たる節があるのか、納得していた。実際に三バカ男子達にはロリ巨乳やらなにやらと影でコソコソと言われている。

 せめて身長を私よりも10センチ低い150センチに合わせない限り、不釣り合いな体型をしていたマキナだった。

 今のマキナは成長制限を掛けているだけであり、肉体年齢的に言えば小学二年生の身長に大きな尻とGカップの胸を持つという・・・反則以外のなにものでも無いだろう。精々私と同じくらいの身長に合わせなければ色々と不都合が出る事・・・請け合いだった。

 これは主に真祖としての面子ではなく体型にあうドレスを用意する事が大変ともいうが。


「それでどうする?」

「う〜ん。身長だけなら・・・」

「もちろん身長だけよ? 他まで成長させたらこの場に素っ裸のマキナが登場するから。まぁ足のサイズが変わるからストッキングとブーツだけは作り替えるけどね?」

「衣装も多少は変わるよね?」

「お腹周りがすこしだけスッキリするかもね? 脱ポッコリお腹って感じで」

「ポッコリお腹・・・幼児体型な部分は今日でさようならか・・・判った。お母様にお任せする」

「そうこなくっちゃ! じゃあミーアの登録が終わり次第で行いましょうか」

「お願いします。お母様」


 という事で急遽ではあるが大使館内に時間停止結界を張り、ミーアが気にせず戻ってきた頃合いをキッカケとしてマキナの成長を進めた。

 その直後、マキナの背丈が伸び、みるみる内に150センチで止まった。

 マキナは急激に視界が変わったとして酔ったようだが直ぐに持ち直し・・・他にも異常が無いか把握していた。

 ストッキングは案の定破れ、事前に脱いでいたブーツも履けなくなった。服も若干小さくなったので新しく用意する私だった。

 するとミーアが唖然(あぜん)としつつ質問してくる。


「へ? マキナちゃんが私と同じ身長に? ど、どういう事ですか?」


 それは突然の急成長に驚いただけのようだ。


「ん? 元々の身長に近くなっただけだよ?」

「元々?」

「うん。今までは成長制限で留めていただけなの。局所的に胸とかお尻が大きかったのは子供だとバカにされたくなかったから、お母様にお願いして局所成長してもらっていたの。でも局所的な成長も時には変態を呼び寄せる事を知ったから、元々の身長に近づけて貰ったの。元々の身長はお母様と同じ身長ね? ただ、同じになると見た目も同じになっちゃうから、あえて手前で止めて貰ってるの」


 マキナが小さくなったゴスロリ衣装を魔力還元したのち、下着姿になって異常が無い事を把握しつつ答えるとミーアは惚れ惚れした様子のまま私に問い掛けた。


「そうなのですか?」


 私は惚れ惚れするミーアに微笑みながら、マキナの新しい衣装を亜空間内で用意しつつも、髪型をマキナに合わせてみた。

 惚れ惚れするという事は私が相手でも同じ印象を持ってくれるという事なのだから。


「マキナの言う通りよ。マキナの姿は私やシオンの幼い頃そのものだからね。私が同じようにツインテールにしたら・・・一番判りやすいでしょう?」

「ホントだ! その姿も可愛いですね!」


 ミーアは自身を腐女子だなんだと言っていたが、若干百合的な嗜好を持っていると私は改めて認識した。意識的に百合を毛嫌いしている風があるが、彼女の本質はリンスに近いのかもしれない。私はミーアの羨望の眼差しを受け流しつつ、マキナに衣装を手渡す。


「まぁ見た目は元々同じだからね・・・マキナ、こっちのゴスロリ衣装に換装して」

「ありがとう、お母様・・・あれ? この服、例の素材です?」

「ええ。〈フレア・ワーム〉のね。今後はこの生地で装備品や服・・・ドレスを用意するから」

「なるほど」


 それは例の反物由来の衣装だった。

 私やミーアも、その生地を使った異世界風の洋服や下着を〈亡者(もうじゃ)のローブ〉の下に着ており、マキナも〈亡者(もうじゃ)のローブ〉だけは同じ格好だが、下にいつものゴスロリ衣装を着ていたため、見た目的には魔法少女そのものであろう・・・なんの作品だったか覚えてないが。

 ともあれ、新しい衣装を羽織ったマキナの写真をその場で撮した私は他の眷属(けんぞく)達にも知らせる事とした。


「マキナの身長が伸びたよっと・・・急成長! 脱ポッコリお腹! っと」

「お母様!? ポッコリお腹の事は伏せて下さい!?」

「お子様体型さようなら記念という事で」

「そんなぁ〜」

「でも反応はどうです?」

「今のところはまちまちね・・・なんか私と勘違いしてる面子も居るけど」

「あぁ・・・似てますもんね」

「それなら私と一緒の撮りましょうか」

「それが一番良いかと・・・私が撮しますね?」


 という感じでしょんぼりするマキナをよそに困惑のミーアにより、新しく写真を撮影した。

 その写真を見た眷属(けんぞく)達は見事に大絶叫した。それは時間停止結界を解いた直後のガイア大使も同じであり、平伏す姿が印象的だった。


(若々しいという意味なのか、はたまた怖いという意味なのか?)


 マキナと私は疑問に思う顔のままミーアと共に冒険者ギルドに向かった。もちろんミーアは登録時からSランク入りしたのでポカーンを(いただ)く事になったが。

 これを先に行わないと管理物資のある第六十浮遊大陸の管理区域には入島出来ないため、致し方ない話として流した私である。




  §




 その後の私はミーアとマキナを連れて第六十浮遊大陸・管理区域へと転移した。

 そこには関係者以外立入禁止の管理事務所という名のログハウスが建っていた。

 関係者といっても大概は眷属(けんぞく)だけであり、入室するには亜空間経路を通り抜けなければならず、人族やらが勝手に入ろうものなら経路上に固まったまま留まるため、即座に捕縛して牢屋へと送り込む決まりとしているのだ・・・と思ったら早速捕縛完了!


「またもや人族国家の間諜が不法侵入か・・・」


 するとマキナが紅茶を淹れながら(あき)れる私に問い掛ける。


「開拓中の土地を奪う算段でもしてるの?」


 その間のミーアはアルミニウムを見たくてウズウズしているが、今は休む事が大事としてマキナがミーアにリードを着けたまま床でお座りを言いつけている・・・犬?

 私はマキナに紅茶を淹れてもらいながら、間諜の記憶を(いただ)いた。


「・・・開拓後が狙いのようね。開拓中は鉱山とか諸々の事故が多発するでしょう? それに加えて製鉄するための費用も掛かる。〈ゴールド・ドラゴン〉だって完全に滅んだわけではないから、時と場合によっては戦わないといけない・・・それならば開発に資金提供したという名目を書類に記載するか、そういう条約を結んだという体裁の記録を残すだけにして、開拓後にインゴットとして流通した暁には寄越せとする算段があったみたいね。実際に資金提供はされてないから名目だけを残すという外道なやり方を取って管理事務所に不法侵入してたみたいだけど」


 私が読み取った記憶を整理してマキナ達に打ち明けるとマキナは唖然(あぜん)としつつミーアに目配せしミーアも困ったように応じた。


「それはまた・・・なんて言ったらいいか?」

「下界も大概ですが、こちらも似たり寄ったりなんですね」


 私はミーアの困惑を眺めながらも、困ったように続きを語る。


「まぁ・・・この未開大陸も開拓完了後に誰かしらの国家となる事が確定しているから、その時に関わった国家として旨いところだけ貰いたいとする理由も分かるけどね。今までは〈ゴールド・ドラゴン〉を狩る者が居らず、開拓に師団を寄越そうにも戦死者は増えるが〈ゴールド・ドラゴン〉は減らないというワンサイドゲームの様相(ようそう)だったから。その所為(せい)で〈ゴールド・ドラゴン〉の餌が増え〈ゴールド・ドラゴン〉も更に増え、手の施しようが無い事態にまで発展したそうよ。そんな時に〈ゴールド・ドラゴン〉を狩れる者が現れ、あれよあれよという間にギルド本部からの任命で私が管理者に選ばれて・・・権利を掠め取ったと大騒ぎしたのもナディが再誕して直ぐの事だったかしらね〜。だから騒いだ者から粛正して消してまわったらいつの頃からか管理者である私とやり合う事は良しとしないという選択を選ぶようになって・・・今に至るという事ね。それはこの大陸が・・・大量金属が取れる宝の山だからこそ・・・ともいうけど」

「早々に諦めれば、増える事も無かったのに」

「欲の前では戦力差を考える者は一人も居ないわ。異世界でもあったでしょう? 最後は袋叩き同然で敗戦したけど」

「確かに・・・」

「異世界と似たり寄ったりなんですね」

「人族というのは世界を跨いでも変わらないという事ね」


 一休みを終えた私とマキナはミーアを連れて管理事務所裏手にある鋳造区画へと移動した。

 今は鋳造炉を管理するミキとコノリは居ないが・・・炉の火は落とされておらず、ほぼ自動でインゴットが鋳造されていた。

 この鋳造区画も亜空間内に存在し内部では私達のログハウスと繋がっていたりする。

 主に行き来する者の(ほとん)どは冒険者のSランクであらねばならず、この場で気に入った金属素材があれば鍛冶工房にて武具とするのである。今のところ、数万年分もの素材を蓄えている事から私達が使ったとしても問題ないのだ。これも管理者だけが許された特権だから。その後のミーアは目を見開いて驚いた。


「ふわぁ〜! これ全部がアルミニウム!?」


 私とマキナはインゴットを管理する倉庫前で倉庫内をウロウロするミーアを眺めた。


「主にインゴットとして管理してる奴ね? 奥には金塊とか銀塊もあるし、他の稀少金属も存在する・・・って、聞いちゃいないわね」

「夢にまで見たアルミニウム塊だからじゃない? この世界に来てようやく発見って感じだから」

「それなら数本だけ使ってアルミニウム合金のフライパンでも用意しましょうかね?」

「!? 是非お願いします!!」

「調理道具の話だと食いついた」


 マキナの苦笑はともかく私は数本だけ確保しミーア達と共にログハウス内の鍛冶工房へと移動した。そこにはミキとコノリが(すで)に戻っていたが、ミーア自身は鈍器として用意している某力が付与されたジュラルミン製のフライパンに気を取られて気づいて居なかったようだ。


「ここでフライパンを作るの?」

「フライパンみたいだね? 真っ白の武器になりそうなフライパン」

「鈍器扱いのフライパン・・・誰の頭を叩くのやら?」

「オークじゃない?」





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