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隠形吸血姫、クラス転移で勇者達の敵になる?〜いえ、戦力差が過ぎるので私は旅に出ます!〜  作者: 白ゐ眠子
第五章・異世界殺戮紀行。

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第115話 吸血姫は国交遅延を嘆く。


 吸血鬼族に転化して素っ裸のままのミーアはマキナから手渡された水晶板を持ちながら、マキナに言われた通りの手順で血液を垂らし、変化した物を見て驚いた。


「スマホだぁ!」


 これは再誕者・転化者へと一通りに教える事ではあるがミーアの反応はアキに匹敵し自身の〈スマホ〉として現れた事で頬擦りしていた。

 私は素っ裸で〈スマホ〉を抱き締める者を見て若干・・・いえ、かなり引いてしまい、マキナに問い掛けた。


「こ、この子、なに?」

「スマホ中毒者」

「どういう事?」

「う〜ん? 一種の半身的なもの?」

「半身?」


 マキナもどう答えていいか判らないのか、困った顔で笑っていた。

 するとアキが思い出したように当時を語る。


「そういえば・・・この世界に呼ばれたあと荷物の一切合切が奪われて、しばらく幽鬼のようだったわね。しかも保有魔力量が最底辺だった事で唯一のAランクだし、職業的なものが非戦闘職だったから、お荷物と呼ばれて・・・」


 次いで、ハルミとサーヤが言葉尻を繋げた。


「役立たずって車バカに完全放置されてたね」

「それでも戦地料理には舌鼓うってたけどね」


 そしてミズキとマキナが話に加わり当時を語る。マキナに至っては昔の事を含めていたが。


「兵達が作る戦地料理が不味かったからね」

「固形物レーションより不味い飯があるのも初めて知ったわ〜」


 他の元勇者達も同じく異口同音というように料理の話に変化してしまった。途中で話はそれたが私としては素っ裸で〈スマホ〉スリスリするミーアを見つつ、どうしたものかと考える。


(このままだと・・・下半身に仕舞い込みそうな勢いよね? 半身って言ってたし)


 だから私は、その場で〈蓋付きのスマホケース〉を作り出し、スリスリするミーアから〈スマホ〉を奪ってはめ込んだ。


「あ! 私のスマホ!!」

「少し、待って! はい・・・これで失う事はないでしょ?」


 はめ込んだ〈スマホ〉をミーアに返しながら、先についた布をミーアの首に巻き付けた。


「へ? チョーカー? あ、ありがとうございます!」

「それと素っ裸だから目の前に置いた下着を着てから仕舞いなさい。風邪を引く事はないけど百合っ子(フーコ)を興奮させる露出趣味があるように見えるわよ? スマホをスリスリする姿でなければ、襲われていたかもね?」


 ミーアはそれなりに羞恥心があるようだ。

 フーコの爛々(らんらん)とした視線に気づき〈スマホ〉片手に固まった。


「ん? あ! 粗末な物をお見せしました・・・きゅう」


 そして私と同じ大きさの胸等を隠し、座り込みながら真っ赤に染まったのだから。


「あぁ・・・もったいない。もっと見たかったぁ〜」

「フーコ・・・」×28


 ちなみにミーアに渡したスマホケースは首に巻き付けるチョーカー式で・・・胸の谷間に挟み込む鎖の付いた代物だった。

 私は胸の谷間に挟んでないわよ?

 このケースと鎖も純白であり絶対に壊れない金属製である。武装とするなら〈スマホケース〉と鎖が一種の盾となるだろう。

 代わりに首から外す必要もあるが、戦闘時は亜空間を経由して結合させているため、ミーアが願えばスルスルと予備の鎖が伸びるのだ。

 使わない時の〈スマホ〉自体がミーア自身の亜空間庫内に収まり、取り出す時は鎖に繋がれた〈スマホ〉がミーアの手元に現れる。

 ミーア自身は谷間に片付けているので、亜空間庫内収めるつもりがないようだが。

 趣向が腐り女子だからと鎖を与えたわけではないが紛失対策は問題ないだろう。

 一応、メモ帳とペンも付けているのでパッと見は手帳のようにも見えるケースだ。このメモ帳も防水性が高いから料理中のメモ取りにも役立つだろう。〈鑑定〉すれば使い方が()っているが。

 そのへんは自身でなんとかするだろうと説明放棄した私だった。




  §




 今の時刻は深夜帯。再誕工房での騒ぎも一段落し、一同は制服類を各自の亜空間庫に片付けて自室へ向かった。下着姿だったミーアを含めミズキが色々教えながら移動していたようだ。

 その後の私は時間加速結界で八秒(八時間)眠り、寝間着から警備用の服装に着替えた。


 といってもカジュアルパンツとTシャツ一枚の動きやすい服装で自身の長い髪をポニーテールに結んだだけね? 流石にブラを着けないと先が擦れるからノーブラではないけど。

 大きすぎる胸も少々考えものである。


 ちなみにマキナも同じ結界内で寝ていたが、マキナはマキナでやることがあると言って一人で風呂に入っている。シオンはそのまま自室でおねんね中ね? ひとまずの私は一人で部屋を出たマキナを〈遠視〉した。


(今の容姿でそれをすると余計子供っぽく見えるのに、あの子ったら・・・)


 アキ達への罪悪感があるのか自身もツンツルリンに変えていた。しかも部分的な〈神速再生〉を自意識で止めながら。

 なにも考えてなければ勝手に銀タワシへと戻るため、マキナは四苦八苦していたが。

 私はアインス達に報告を入れたのち荷馬車(拠点)の各運転席へと向かった。


「とりあえず一号車から・・・」


 私は外の複合結界を全解除し六角形に並べた車列を縦一列に並べ替えながら、翌朝の出発でゴタゴタしない段取りを行った。それは計六両の車列を旅人の邪魔とならないよう配置替えしていたのだ。真夜中であれ伝令兵は通るから。

 一通りの並びを替えを行った私は一号車に戻り、水晶板製のクリップボード片手に予定を組み上げる。このクリップボードも私が持つ〈スマホ〉と同じ代物ね?

 一種の〈タブレット〉ともいうけど所持しているのは私だけだ。普段も野営中は同じ事を行っているが、今が誰も知らない私の姿である。


「今後の進路は・・・一度、混乱の渦中にあるルルイア王国? に向かって、ミーアの再登録と情報が得られるなら、他の勇者達の動向ね。あとは・・・」


 というところでツンツルリン化を済ませたツインテールではないマキナが現れた。

 格好は短いチェックのスカートと白Tシャツのノーブラ・ノーパン(・・・・)姿だった。


「ルルイアの次にある、マギナスを抜けたあとが注意だよ? 砂漠地帯だから」


 おそらく入浴前に致した後なのか、顔が少しだけ光っていた。マキナの容姿は可愛い少女だがやることはやっているようだ。

 私は助手席に座るマキナのスカート内に視線を向けつつも、クリップボードに視線を戻す。

 マキナの言う通りの経路を真剣にチェックしつつ、隣に座るマキナへと告げる。

 というかスカートの中身が丸見えなのよね?

 娘の娘だから変な気は起きないけど。


「そこはスッキリした? しばらく意識付けしないと直ぐに生えるわよ」


 マキナは私の視線移動に気づいた後、思い出したように絶叫した。


「お母様、見てたのぉ!?」


 そりゃあ〈遠視〉回避の亜空間壁は異性だけが対象だもの。同性ならば誰でも見える代物でフーコが誰彼構わず襲わないのはそのためだ。

 見せないとフーコが同性の裸見たさに各部屋を巡回しかねないからね?

 おっさん女子には困ったものである。

 おそらくハルミ達だけでは満足出来なくなっているからだろうが私はフーコ向けになにか用意しないと不味いと思いながら絶叫するマキナに注意した。


「ノーパンはいいけど、車内は汚さないでね」


 クリップボードを膝に抱えながら地図の先を眺めていた私は、クリップボードをダッシュボードに置きながら〈スマホ〉を運転席脇に填め込み、クリップボードを眺めつつ予定経路を入力した。

 このクリップボードも端子結合すれば早いのだけど改良が面倒なので毎度の事として手入力で位置情報を指定している私である。

 すると、マキナは「スースーする」と呟きながら、パンツの有無に気づいたようだ。


「あ・・・穿()き忘れてた・・・」


 私はマキナがスカートを(めく)りながら真っ赤に染まる姿を眺め、その場でソング下着を作りだし、マキナに手渡した。


「あらら、感じ過ぎて(ほう)けてただけなのね・・・火照りも時には害悪ね」


 マキナは下着を受け取りながら、一瞬は躊躇するもゴソゴソと目の前で穿()いた。


「うん・・・多分そうみたい」


 普段穿()く下着と違って、布面積が小さすぎて色々と食い込むからなのかは知らないが、マキナは顔を赤く染めて少し感じているようだった。

 流石はシオン譲りのドM少女である。

 マキナは感じている最中であっても頭は冷静なのか、運転席の足下からくる冷たい風に気づいていたらしい。

 マキナは助手席に座りながら、股を開いて開放感に浸りつつ、この場に来た理由を話す。

 その格好はおっさん女子という・・・女を棄てた姿だったが。


「冷静になったのも運転席から少し涼しい風が流れてきてたから」


 私は〈スマホ〉を車から外し、クリップボード片手に窓の外を見た。外に星は出ており、時刻的に夜明け前だという事が判る。

 それは北極とは違う印象ね?

 常夜(じょうや)常陽(じょうよう)の中間・・・明空(あけそら)暮金(くれきん)の様相であり、北極との時差を感じた。

 私はマキナの言葉に応じるように苦笑した。


「暑いからね・・・冷房でも動かさないと考える事もひと苦労よ・・・エアコンを付けてて正解だったわね」


 熱帯夜・・・異世界に来てまで感じる事になるとは思ってもみなかったが。

 すると、マキナは私の言った「エアコン」からなにかに気づいたようだ。


「でも熱交換フィンのアルミニウムはどこから取り寄せたの?」

「未開大陸でボーキサイトを拾ったのよ。それを鋳溶かして・・・」


 マキナは「ボーキサイト」と聞き驚愕顔に変わる。


「へ? ボーキサイトがあるの!?」


 私はアインス達から聞いた事だがマキナにあっけらかんと示した。


「あるわよ? といっても下界には存在しないらしいけど・・・どうしたの?」


 マキナは困惑顔で悩みつつ教えてくれた。


「いや、車バカ以外にもアルミニウムを求める者が居たからさ?」

「あのバカ、それを要望として出してたのね? 手に入らないのに・・・でもあと一人って?」

「うん・・・ミーアだよ? といっても特権は使わず自身でアレコレ探してたみたいだけど」


 私はマキナの言う求める者を聞き、どうしたものかと悩む。ミーアの求める物・・・それはおそらくアルミ箔だろう事が判る話でもあった。

 実はこのアルミ箔、レリィ達も求めておりボーキサイトが見つかった後にインゴット化した物から順次用意しているのだ。

 だから当然、厨房に入ると大きなロール状のアルミ箔が置かれているため、早朝の騒ぎを幻視した私である。


「だとしたら、この後に大変な事になるわね」


 マキナはきょとんとなりつつ問い掛ける。


「どういう事?」


 私はどうしたものかと悩みつつ、事情をマキナに告げた。


「厨房にあるのよ。大きなロールが・・・無駄遣いをしない前提で設置した物だけど」


 マキナは困った表情を浮かべ、ミーアの居場所を〈遠視〉した。


「あー、ミーアが大絶叫・・・して気絶したみたい」


 ミーアは(すで)に目覚め、ログハウスの厨房に足を踏み入れていた。私もマキナ同様〈遠視〉して厨房内の喧噪を眺めた。


「遅かったかぁ・・・」


 ミーアが白衣のまま転がった姿を見てしまい、オロオロするレリィ達へと目覚めのポーションを転送した。下界で探しても見つからない代物は割と存在する。上界で探しても見つからない食材も割と存在する。

 これらは上界と下界の国交が成されない限り、民達が手に入れる事は不可能なのだ。

 その国交そのものを遅らせた戦争が先の大戦であり、私達が片付ける予定の原因物達が持つ最大級の罪である。


(神殿地下の汚物といい愛娘(マキナ)の粒魔石といい、ホント(ろく)でもないことしかしないわね?)


 その内一人は合国(ごうこく)の魔導士長なのだから〈夢追い人〉なる干渉者はなにがなんでも滅する必要があると改めて思った私だった。





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