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隠形吸血姫、クラス転移で勇者達の敵になる?〜いえ、戦力差が過ぎるので私は旅に出ます!〜  作者: 白ゐ眠子
第五章・異世界殺戮紀行。

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第108話 新眷属の煩悩に呆れる吸血姫。


 固まったアキナ。流石に率直過ぎたのかマキナは反省し、頭をポリポリ掻いて言い直す。


「聞き方を変えるよ。アキナ、死なない身体が欲しくない?」


 アキナはマキナにオウム返しした。


『死なない身体?』


 今は状況がよく読めないという感じだろう。

 有り体にいえば・・・発狂したユウカの再誕時を思い出した私である。


「まぁ・・・率直に言うと(すで)に死んでて、今は転生前なんだけどね?」

『え?』


 マキナは困惑気味にタツトの正体を明かす。


「なんて言えばいいかな? タツトが・・・タツヤが死んでるのに生きてたと知ったでしょ?」

『うん・・・』

「実際には彼も転生したのね? 前世の記憶を引き継いだまま不死者の亜人に」

『不死者の亜人?』


 ここで明かさねば先に進めないからだが。


「うん。タツトは・・・オーガ族だね? 普段は頭に二本の角を生やしてるけど」

『へ? オーガっていうと戦闘種族のオーガ? 魔族の先兵で有名な?』

「まぁ・・・扱いとしてはそっちかな? ただ魔族の先兵というよりは不死者だから女神の先兵の方がシックリくるけど」

『そ、そう、なんだ・・・?』

「で、どうする? まぁ聞くまでもないけど」


 マキナは聞くまでもないと言うが──、


『い、生きたい。まだやり残した事があるし』


 アキナの答えは決まっているようだ。

 マキナは彼女の答えから事前に話し合っていた事を問う。


「それは・・・勇者として?」


 この立場を明確にしなければ叶える事が不可能となるからだ。私達は人族の勇者ではなく女神の先兵なのだから。

 するとアキナは意を決した声音で打ち明ける。


『ううん。錬金術士として。この世界に呼ばれた事は悲劇でしかないけど、魔法であれこれ作れる世界なら、私はこの世界で不可能な物を作っていきたい!』

「例えば?」

『ウォシ◯レット!』

「「「プッ・・・あはははは!?」」」

『へ? 今の笑うところ?』


 きょとんとした声音に困り顔のマキナ。


「はぁはぁ・・・。す、(すで)に、お母様が、作ってる気もするけど」


 トイレでアナの姿を見た苦笑気味のシオン。


「そういえば・・・昼間にアナがトイレで絶望してたわね?」


 アナを見て楽しんだ私と反応は様々だった。


「同じ絶望をこの子に味合わせてしまうのね」


 アキナは私達の反応になぜか(ほう)けるだけだった。


『絶望? 穴?』

「まぁそれはあとでいいかな。じゃあ、死なない肉体を得てあとで会おうね。アキ・ノーム」

『へ?』


 ともあれ、肝心の新名はマキナが決めてしまったが以降は再誕の儀である。彼女の種族はエロフ・・・じゃなかった、エルフ。

 ユウカに次いで女では二人目のエルフだが、死なないエルフとしての再誕なので上界はともかく、下界のエルフ族がどう反応するか楽しみである。

 一応、エルフ族の男も居るがこちらは三バカの二人なので、ユウカも対象としてないしね?


 直後、私達の目の前には銀髪の見目麗しいエロフ・・・エルフが誕生した。

 レベルは少し多めの101とし各種スキルもスキルレベルも最大で与えてあげた。私と共にアレコレ作るなら低いスキルレベルのままだと困るから。これも本音を言えばアナにはアキより10低いレベルで指定していたからだが。


「こっちも見事にツンツルリン・・・アナと育ち方が違うのは仕方ない?」

「そこは再誕前にマキナが削いだのだもの、生えてないのは仕方ないわよ?」

「あ! 魔力還元で根元から消したんだ・・・」

「育ちでいえばアナは生来のアキナだから」


 水場に座り込む綺麗な裸体を私達は唯々(ただただ)眺めた。一部はマキナのイタズラで酷い事になってるが、それ以外は出るとこ出てて引っ込むところが引っ込んだ妖艶な体型だった。

 今は(まぶた)を閉じているが、美少女と呼んでも過言ではない見た目だった。

 すると、マキナがイタズラっ子のように下着を作り出し、アキの目前に立った。


「ア、アキが目覚める前に下着穿()かせた方がいいよね? 聞こえてたら・・・」


 その直後、アキはマキナが前に立った瞬間に両手で両脚を(つか)んだ。


「聞こえてますが、なにか? マキナ・・・消したってどういう事?」


 アキは(すで)に目覚めていたらしい。


「あっ、そ、それは・・・」


 マキナは(つか)まれたままアキに説教を受けていた。私達は周囲の言葉と本人の行動が一致しないため、困惑するしかなかった。


「この子ってマキナの子分よね?」

「子分って聞いたけど・・・今は逆じゃない?」


 アキは私達の反応を無視して嘆息しマキナを抱き締めた。


「それがマキナの好みなら受け入れるわ」

「好みじゃ・・・」

「は?」

「なんでもないです」


 私はマキナが毛嫌いする意図をようやく理解した。


「あ〜。ヤンデレか」

「カノン? ヤンデレって?」

「重い愛が表に出る百合っ子と言えばいいかしら? マキナ推しというよりマキナ愛の方が一番現れるタイプ。放置を好むマキナからすれば暑苦しいとするのは判るわよね?」

「あ〜、はいはい。センラと同じタイプね。リンスの亡くなった祖父だけど」

「そっちにも重い愛の主が居たのね・・・」


 シオンとマキナの苦しみは判ってあげられない私だったがマキナがタジタジとなるのは少々心にくるので、素っ裸で抱き締めるアキに一言告げる。


「とりあえず、アキ? 下着穿()いたら?」


 告げたのだが、なぜか嫌悪のある視線とアダ名が飛び出した。


「は? (だま)り姫?」


 流石の私もカチンときた。マキナは(あちゃー)と天井を見上げる素振りで、そそくさとアキを振りほどいて私の背後に隠れる。


「このタイミングで言ってきたのは貴女が初めてだわ。ホントにマキナ以外は視界に入らないのね?」


 私の皮肉を聞いたアキは引き続き──、


「貴女はマキナちゃんのなんなんですか? 呼び捨てとか何様なんですか?」


 嫌悪の視線を私にぶつける。

 私はそんなアキの本体を一旦回収し、ありのまま立場を明かした。流石に自分の立場を弁えない女だとは思っても無かったわ〜。


「何様って? 母親ですが、なにか?」


 私の立場を聞いたアキはきょとんとし、私の背後に移動したマキナに問う。

 その間のシオンは完全に空気と化し、放置プレイに酔いしれていた。


「母親? 嘘でしょ?」


 ここから先はカミングアウトの連続である。

 マキナはこれでもかと私と自分の実年齢を明かす。


「ホントだよ? 私の実母だもん。実年齢が三千を超えた吸血姫」

「へ?」

「私も吸血鬼ね? 実年齢は言って無かったけど・・・再誕を含めて一千五百才ね!」

「え?」


 明かされた方は徐々に顔面蒼白へと変わる。

 シメはマキナが背後に置いた大太刀に指をさし、隣に置きっぱなしの遺体まで示した。


「それと・・・お母様は世界最強の吸血姫ね? 言葉を選ばないと、そこに置いてる大太刀で切り刻まれるよ? あの水晶も一度、左肩口から左腕が落とされてるから」


 その直後──、


「え・・・そ、その、あの、えっと、ブワッ」


 アキは事態を把握したのか狼狽し、最後は涙が(あふ)れた。肉体は粗相し回収した本体の中身は完全にごめんなさいしていた。

 すると放置プレイに酔いしれていたシオンが察し(あき)れたまま問い掛ける。


「あらら、粗相したわね・・・殺気を飛ばさずともイッたのは初めてじゃない?」


 私は本人に自覚させるため、シオンに返しつつも(すで)に行った事を告げた。


「初めてね。一応、本体は回収してるし、このまま痛覚だけ残して徹底的に切り刻んで挙げてもよかったと思ったわよ。割と物わかりのいい子じゃないから・・・っと思ったけど、長いものには巻かれろ的な思考もあるみたいね? 直前までは私を弱い女と思っていたみたいだし」

「ドSの権化にその認識はないわ〜」


 すると、シオンが言った言葉にアキは別の反応を示した。私は見覚えのある反応だったため、あえて同類に見下す視線とキツい一言を浴びせてみる。


「その言い草はないんじゃない? そんなに痛め付けられたいの?」

「あ、そ、その・・・えっと、後で、お願いします・・・」


 私は本体のアキがシオンと同じ反応を示した事に気づく。


(言葉攻めで同じ反応は想定外だったわ・・・)


 ひとまず、酔いしれているシオンはそのまま放置し、私は困った顔でマキナに伝える。


「この子、強い者に惚れ込む手合いだわ」

「へ? それって?」

「う〜ん? 扱い的にはナディと同類・・・血縁ゆえかしら?」

「ということは、アキってドM?」

「そういう事ね。(しいた)げられたいって欲望がすごいわ。肉体の自傷行為もその所為(せい)みたい。流石にマキナが消した事には怒ってたけど、内心では嬉しかったみたいだし・・・まるでイヤイヤする時のシオンみたい」

「私をヤンデレと同じにしないで!」

「いや、どう見ても同類だからね? 愛情表現が極端なだけかもしれないけど・・・」


 私は事切れたアキの肉体を魔力還元した。

 隔離状態の肉体放置と粗相で汚れてたから。


「とりあえずこれは邪魔だから片付けるわね」

「折角再誕したのに・・・アキってばバカな子」

「肉体が完全に消えたわね・・・南無」


 私は本体内のアキに片付けの様子と拝む二名の姿を示した。アキは呆然としていたけれど。


(再構成は頻繁に行う事ではないけど、アキってば再構成を好みそうなのよね? 一応、マキナに注意を入れて貰いましょうか・・・)


 私は消した肉体とアキの性癖から起こりうる事案を想定した。ただ、行う前から確定する事でもないため、シオンやマキナが行った再構成を命じる。


「さて、冗談はさておき・・・アキ聞こえてるでしょ? 私が指示した通りに、魔力を練りなさい。そのあと・・・先ほどと同じ姿を外にイメージするのよ?」

「上手くいくかな?」

「再構成って空間認識力が必要だから・・・問題はなさそうね? 心臓の表出まで上手くいけば残りは自動だから」


 シオン達は心配そうに再構成をみつめる。

 実はこの再構成は他の眷属(けんぞく)達も一度は体験させており、出来ない者は一人も居なかった。それはシオンが言う通り、空間認識力さえあれば、後は自動構成となるからだ。

 必要数の魔力を練らない場合は不発となって再構成すら出来ないけどね? それと一応、構成場所は時間停止結界内か亜空間で行う決まりを設けており、私達のように即時展開可能な者以外は、総じて同じ方法を指示している。


 それと私もこの世界で一度だけ不味かった事があり、亜空間庫に本体隔離して古い肉体を爆発四散という形で魔力還元したのだ。

 その後、自身の亜空間庫内で再構成して今に至るのだけど〈ファイア・ドラゴン〉だけはダメね? 気性が荒く時間停止結界の隔離も効かないし単身で狩る魔物では無かったわ〜。

 いや、マジで。


 それを火属性を(つかさど)るアインスに聞けば〈ファイア・ドラゴン〉を狩るにはレベル400を超えないと無理だと言われ、負けて当然という話だった。ちなみに〈ゴールド・ドラゴン〉は250を超えすれば勝てる魔物らしい・・・ともあれ。

 再構成を済ませたアキは主様を見つけた!

 とでも言うように全裸待機で正座していた。


「アキ、言ってる意味、全て理解した?」

「はい! ご主人様!」

「そこはナディみたいにカノンでいいわよ・・・むず痒いし」

「ナディとは?」

「カナデだよ? アキの従姉の。今は猫獣人だけど」

「へ? カナデちゃんも再誕者なの?」

「ナディだけじゃないわね。今だと十四組以外はほぼ揃ってるわ」

「え?」


 アキは再誕後にまたも混乱する事態となったが、めでたく六人目のメイドとなった。

 再誕後に同じメイドとなったアナを紹介すると左腕から生えた妹として大事にするとも言っていた。

 ただ、アナもアキ同様のドMらしいので組ませるならユウカが無難と思った私である。ショウ限定総受け百合の某エロフも普段はドSのエルフなのだから。ココにはアコという犬が(すで)に居るから組ませる事はない。

 これは犬獣人という意味ではないが。





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