第1話 暇人の吸血姫。
かなり前に投稿していた作品を再投稿。
「暇だ〜。何年経ってもなにも変わらないわ〜」
私は巽夏奏 十七才。
どこにでもいる、ごく普通の女子高生だ。
あえて普通を強調する理由は私が〈永遠の十七才〉だからとしか言えないわ。
それはともかく、私が現在居るのは日本のどこかにある高速道路のサービスエリアであり、今は行き交う人々を眺めながら珈琲を飲みつつ心のままに呟いたの。
俗に言う修学旅行というイベントの真っ只中ね? 私がなぜそんなイベントに参加してるかと言えば、余生が長すぎて暇だったから只人達の高校に入学して、三年毎に関係者の記憶消去を繰り返して毎度毎度参加していたの。
ただね?
最初は楽しめた・・・しかし二回目、三回目と繰り返す内に飽きてきた。
だから今は変わり映えせず暇過ぎて、そろそろ高校生活に区切りを打つべきかと悩む私だった。
ちなみに私の通う高校はミッション系だからなのか、最終日に教会と縁が深い県に行くというどこでも有るようでどこにも無い不可思議なイベントを執り行う。そんな中で毎度思うことは、一風変わったイベントか心から楽しめそうな複合的トラブルが起きればいいな〜と、人知れず願った。
(クラスメイト達には悪いけど教会巡りよりもそちらの方がいいわよね・・・)
ただ、同じトラブルでもこの手のイベントは必要ないわね?
「お嬢様〜。暇なら俺達とお茶しない?」
おそらく私の容姿がそんな輩を引き寄せるのでしょうけど。
私の容姿は腰まで伸びるロングの銀髪、目元はキリッと睫毛も長く、碧瞳と綺麗な鼻筋、口元が柔らかな顔立ちで、胸はGカップ、腰は細く尻も大きいため、異性の視線を独り占めだ。
そのうえ肥らない体質ゆえに何年経ってもスタイルが変わらない。普段は隠している牙とバレッタで止めた頭頂部のアホ毛を除けば、見目麗しい美少女として振る舞える。年齢的に美女の方が正しいけれど。
(やっぱり誘引された? そういえば最近、暇過ぎて溜まってるのかもね?)
私は鼻の下を伸ばす者たちの下品な仕草に辟易しつつも周囲で騒ぐ女子高生達には目もくれず、向かってきた者達に対し肩を竦めた。
(人目があるし、適当にいただいて放置しますか)
ひとまず、私の中での予定が定まり微笑みながら彼らの声に応じることにした。
「お茶だけでいいのかしら?」
「お? 話が分かるね〜」
「やるの? やっちゃうの?」
「じゃあ、こっち来てやっちゃおう!」
男達の下品な視線はどこへやら、私はその願いを少しだけ叶えてあげることにした。
すると背後から私を呼び止める声が掛かる。
「巽!」
声の主は引率である担任、大野宗だったかしら?
彼の容姿は眼鏡を掛けた如何にも理系ですって姿の数学教師ね。
根は真面目であり暴力よりも対話で解決を促す平和主義者の教師で有名だ。
そんな担任は大声を張り上げ、私の左腕をつかみ男達から引き離す。
「変な輩に付いて行くな!」
「誰が変だと!?」
「俺達はこの子と遊ぶんだ、邪魔するな!」
「そうだそうだ!」
しかし、奪われたと思う男達もタダでは済ます予定がないようで私をつかんだ担任の腕を強引にほどき、担任の襟をつかんで脅す素振りを繰り出した。
(モテる女は辛いわね〜。でも暴力はいけないわ)
だから私は担任と男の間に立ち担任をつかんだ腕の手首を握り、目の前に立つ三人の男達を相手取る。しかし私が前に出れば、目に余るのか怒鳴りながら左肩を引っ張る担任。
「巽! 前に出るな!」
私としては担任が邪魔なので左肩に乗る手を右手でやんわりと解き、死角の左手人差し指で男達の胸元に軽く触れた。
「お? やるの? ここで? !」
「いいねぇ〜。なんなら脱ぐよ? !」
「!!? え?」
すると、どういうことだろう?
目前の男達のうち一人目が驚愕を示し、二人目も同じ顔で固まった。残る一人はすぐに事態を把握したのか・・・・・・いえ、してないわね?
呆けた顔でその場に立ち尽くした。
「ごちそうさま」
その後、担任は男達からアッサリと離れる私を見てきょとんとし、固まる男達を眺めながらも怪訝な顔をした。
「巽? どうしたんだ?」
「なんでもないわ。先生? 時間ですよね?」
「あ、ああ。そうだな?」
担任に私の呟きは聞こえてなかったみたいだけど、この際仕方ないわよね? ということで珈琲カップをゴミ箱に捨てながら私は呆ける担任の前を歩きつつ舌なめずりした。
(やっぱり、味はそこまでじゃないわね。平和過ぎて薄味になってる気がするわ〜)
§
「うーん! 風が気持ちいい〜」
今は海上だ。これから向かうのは離島であり古くからある人工島だという。
なんでも今までは危険地域だとかで入ることが出来なかったそうだが、数年前から立ち入りが許可され、ある意味で観光地の様相を呈したらしい。
その中にもなんらかの教会があるらしく、今回はそれの見学となった。
「暇ではあるけど、海に出られたのは幸いかしら? なにも変わり映えしない街中と違って外の景色は、それはそれで楽しめるもの」
私は船の舳先に立ち、海風を浴びながら景色を眺める。すると、一人の茶ロン毛と複数の男子達が大騒ぎでこちらに走ってきた。
「王寺、待てよ!」
「見てみろ! 海だぞ!」
「海なのは分かるから、あんまり走るなよ!」
景色を静かに眺めていたのに一瞬で喧噪が訪れ、私は苛立ちを覚えた。
「お? 先客か? なんだ巽か」
「おい、気味悪女じゃないか」
「嫌なやつに会った」
しまいには人の顔を見るなり気味悪女とか嫌な者扱いされたため、私は三人目と気分が同じという意味の苦笑で返した。
この返しも、下手に会話しようものならアレコレ聞いてくるので、日々無口でやり過ごしているからなんだけどね?
それが彼等からしたら気味悪いとかいけ好かないとかいう自分達の物差しで見るから質が悪いのだけど・・・それは短命ゆえに仕方ない話よね。
「あら? そこに居りますのは王寺輝明様ではなくて?」
すると、今度はクラスメイトの上枝礼子、使用人の枝葉宰と枝葉奏の双子が訪れた。
三人の背後には・・・噂に聞く彼女の護衛である青海険が剣呑な気配を漂わせながら陣取り、こちらを睨みつけていた。
私としては名前が被るので枝葉奏は妹とだけ呼んでるけど。
(こわいこわい。殺気立たなくても獲って食ったりなんてしないのにね? 不味そうだし)
私自身、睨まれる理由などない。
ただ一年生の時、お嬢様の相手をしなかったというだけで突っかかられたことはあったが、それだけのために根に持つというのは馬鹿の所業である。
今は問題のお嬢様が王寺輝明という如何にもチャラそうな男子に懸想しており、目の前でラブコメよろしくな展開を見せつけている。
Eカップはあるであろう両胸を背中に押しつけ、両腕をつかみながら舳先に立つという、なんともな行動に及んでいた。
(馬鹿が染るから中に戻りますか・・・・・・)
私はアホらしくなり彼等と入れ替わるようにその場を離れた。
〈投稿前に自身へのツッコミ〉
更新が止まっている『魔王大賢者』の全改稿を先にすべきだろうに!?
↓ ↓ ↓
改稿が終わって再投稿後に連載を再開します(願望)