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「ねえユーマユーマ、彼氏を作る際にどうすればいいと思う?」
ソラは普通にたずねる。
「おー、そうだな……。相手には3人彼女を作っていいようにするんだ」
悠真も普通に答える。
「へー、なんでなんで?」
「恋愛なんて、どうせ3年も経てば、倦怠期まっしぐらで、なんにも魅力がなくなっていくんだ。でも、もし、他の女と付き合ってもいいとなったらどうなると思う?」
「フラれる?」
「ちがうんだなー、お互いが離れないように努力するようになる」
「おー」
「まあ、そもそも、結婚してないから、彼氏とか何人もつくれるから、口で許可してあげてるだけだし、俺もやったことないから妄想だけど」
やったことないというか、人と付き合うのが難しいというか。
「おー、ソラでじっけんしろと?」
「まあ、そういうつもりではないけど」
賢くなってきたというかなんというか。
大丈夫だ。俺は悪くない。俺は悪くない。むしろいいな。普通の人と違う思考ができている。人はこれをクリティカルシンキング(批判的思考)と呼ぶ。
疑いながら
あー、だから、相手のメッセージをみて、浮気だとわかって、慰謝料取れるし?
いや、結婚してなかったらとれないんだっけ。
「でも、そんな事してたら、すぐに浮気しちゃいそうだし、他の人に合わせない、束縛戦略により子どもを残してきた女性の戦略がつかえなくなっちゃうじゃん」
悪気を思っていっているわけでもなく、純真? なような邪悪な質問を天真爛漫に。
「昔は閉鎖的なコミュニティで、それで良かったかもしれないけど、今はあまりにも多くの人と出会うことができるから、逆に、すぐに相手と自分はあっていなかったんだということがわかる。それもまたいいんじゃないか」
「そっか。変なことを言う」
「そもそも、これからの時代、一つのことにしがみつくなんてリスクなんだ」
「なるほど、優香は3人のうちの一人なんだね」
「そうだよ」
適当に答える。というより、この場のノリで答える。
別にそういう中ではないのだが。
「なにが?」
すると、優香がどこからともなく現れ、会話に興味を持つ。
「あ、捕まえた」
キープ。ソラは優香に捕まって(キープされて)いるかのようなニュアンスを込めて言う。
と言うより、わざとやっている。
「つかまっちゃった」
ソラと優香はお母さんと娘のようにじゃれ合う。
「で、何の話をしてたの?」
やばい、こいつ、なぜ話が聞こえてた?
前時代的異物。表層的感激。生成的恐怖。
まさかお前……
「まさかお前……太った?」
「どうしてそうなるのよ! 面白くもない」
「ごめん……」
なんかそれらしいことを適当に言うのって本当につかれる。前時代的異物ってなんだし、近代的異物とかあんのかな? ヴィーガンとかかな? すいません。
俺の勝ちだ。話をうまくそらすことができた。大丈夫だここまで持って来れば、深く後追いされることはないはずだ。
ただ、ヒーローが遅れてくるからヒーローになるのと同じく、死亡フラグは前フリを用意するからこそ、死亡フラグになる。
いや、ただあれは書くことがなくなった作者が書くことだ。「死亡フラグじゃないからね⁉」ということで、なんかギャグを用意できている感と、話を進めることができる。……異世界の話って結構書きやすそうだよな。