第86話 中止なんだって?
「えっ、中止ですか?」
「その可能性が高くなったようだ。」
伯爵様の執務室。
驚きの言葉が伯爵様のお口から飛び出した。
「ここからは内密の話となります。五月も他言無用でお願いね。」
キャシーがいつもと違って緊張した口調で話し始める。
「知っての通り、今日伯爵邸に魔物の襲撃がありました。幸い能力が覚醒したメイド長と新人メイドのメアリーによって全て排除されて破壊された施設も全てその場で修復されました。」
「え〜っ、私の知らないうちにそんな面白そうな事があったなんて!」
「…………知らなかったんか〜い!」
「ええ、騒がしいな〜とは思ったんだけど?」
「避難命令が出てたじゃぁないのよ!」
「ドウドウ、興奮しないでね?」
「あなたのせいじゃない!」
「…………………………………」
「…………………………………」
「じゃれ合うのはそれぐらいにしてもらおうか?」
「「じゃれ合ってません!!」」
「仲が良いようでよろしいが、話が進まないのでそ…………」
「仲が良いのは合ってますが、進まないのは私のせいでは………」
「じゃぁ、私のせいだとでも?」
「やめんか!話を進めさせてもらうぞ?」
「「……………………………」」
「とにかく、謁見は無期限で延期になったようだ。」
「『なったようだ』とは、どうゆう意味でしょうか?」
「情報が錯綜していて確実では無いのだが、女王様が倒れられて後継者争いが起こっているようだ。」
「……………一大事ではないのですか?」
「そう思う者が一人でも王族にいれば、魔物の活動が活発化するような事は無かったはずだ。」
「関係あるのですか?」
「女王様と使い魔の魔力で、王族領内と各貴族家領内の魔物をおさえていたからな。」
「かなり、不味いのでは?」
「そうなのだ、かなり不味い事になっておる。」
「と云うことは、私は用済みですね。日本へ帰っても宜しいですか?」
「いや、様子見になるが、もう少し五月には残ってもらいたい。」
「私は何をすればよろしいのですか?」
「ありえない話ではないのだが、荒唐無稽ではあるのだが……………」
「はっきりと言っていただけますか?」
「万一、魔物を抑えきれなかった場合に、五月が切り札になるやもしれんからな?」
「…………………………はぁ〜っ?」




