第83話 メアリーの事情 ②
掃除?自宅の狭い部屋しかしたことないし?
洗濯?自分の下着だけ?
料理?貧しかったせいか、スープ位?
事務?頭悪いし!
とにかく、私は、役立たずだった。
自分でも、情けないほどに。
広い広い伯爵家お屋敷のお掃除。
庭師のお手伝い。
毎日の大量の洗濯物。
賄いを含めた大量の料理の下準備。
報告書なんて、書いたことないし!
やる気が有ることだけが、救いか?
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しかも、週休あり!
天国だった。
絶対に、手放したくないと思えるほどの。
同期の少女達の、愚痴の意味がわからなかった。
彼女達が、隙きあらばサボろうとするのも全く理解できなかった。
要領が悪いのは、自分でもわかったけど、空回りしながらも少しずつお仕事を日々こなしていった。
直属上司に叱られ、同僚に蔑まれ、出来ない自分に情けなくなりながらも、少しずつ、少しずつ。
試用期間の終わりに、メイド長との面談が有った。
「メアリー、頑張ったわね。正式に採用決定しました。おめでとう!」
「……………はっ?…………私が?…………何故?」
先に面談が有った同期達は、全員不採用が決定していたのを聞いていたから、覚悟していたのに!
「貴方の上司を含めて、管理職全員の推薦がありました。勿論、私からもね。」
「…………あの〜?敢えてお尋ねしますが、私、役立たずでは?」
「そう思っているのは、貴方自身だけよ?もっと、自信を持ってね。でも、足りない事はたくさんあるから今まで通りに努力してね。」
泣いた。初めて人前で泣いた。
誓った。努力することを。




