第8話 そして、始まりの日 その2
年末は、実家で過ごした。とは言っても、誰も住んでいないけど。
早く、住むところを探さないと。あのアパートではもう寝泊まりしたくない。引っ越し代を示談条件に加えないと。
私が欠けた元職場は、私の所属課以外はかなり混乱したようだ。
幸子から、色々情報が入ってくる。
そりゃ、そうだ。
システムトラブル解消に一日掛かるのと、私が行って一瞬で直るのでは大違いだ。私を当てにして、定時保守を怠るからだ。
バックアップ取ってなかったらしい。
しらんがな。
月次決算書の作成?それは、私の業務ではなく貴方の課の業務です。
3課長さん、あなた資格持ちデスよね。
大口取引先への請求書発行の見通しが立たないとか。
馬鹿かな。
1課長さん、貴方の目の前のオネーサマたちはこの一ヶ月間、毎日ナニシテタノカナ?
年末ぎりぎりに元彼代理人弁護士と最初の交渉をした。元彼は来なかった。
元彼代理人弁護士は、私がウェブカメラ映像を見せたら絶句して頭を抱えた。引き出しから私の金貨やアンティーク小皿コレクションなどを漁っているところがバッチリ映っていたから。
当然、速やかな返還を要求した。
私担当の若手弁護士さんを交えた話し合いの結果、
「聞いていた話と違うので、出なおします」と元彼代理人弁護士は帰っていった。早くかたをつけたいのに。
本人が来れば、返してくれさえすれば、窃盗の件は許さないこともなかったんだけどな。
帰り道、当てもなくふらふらとウロツキつつ、再就職どうしよう?と急に不安になる。
と言うより、最近なんか悲しげな泣き声が微かに聞こえるような気がして悩ましい。
自分では、大丈夫だと思っていてもダメージあったのかな。
こんなことは、悲しげな泣き声が聞こえてくるのは、幼稚園時代に頻繁にあって以来だから、また病院通いかな。
そんなことを思いつつ、ふと目に入ったかカフェに吸い込まれるように入った。
…………猫カフェ、だった。
作者注 モフモフ感が出てくるのは、もう少先になります。