第77話 メイド長アンの憂鬱 ①
騒がしいわね?
何があったのかしら?
月曜日の今日、伯爵家の主要人物は不在なれど使用人は全員勤務日。
執務机で事務仕事に勤しむ私は、廊下の騒がしさに気が付きました。
バタバタと走り回る音。
突然扉が開き、
「メイド長様!すぐに訓練場に向かって下さい!」
………何事でしょうか?
非常事態の合図は無かったので、大したことは無いはずですが。
飛び込んできたのは、今年採用された新人見習いのメアリー。
まだ16才のそそっかしさが目立つ少女。
「廊下は走らない!ノックは必ず!いつも言ってるでしょう?」
「いいから、早く一緒に来てください!」
半ば無理矢理手を引かれて連れ出されてしまいました。
怖いもの知らずの彼女は、他の使用人と違って遠慮というものを知らないようです。
これでも私はメイド長として部下たちに恐れられる存在なのですが、彼女には通用しません。
寄る年波には敵いませんね?
メイド長に指名されてから十余年。
そろそろ気力体力の限界でしょうか?
「何事ですか?」
「来れば解ります!今行かないと後悔しますよ!」
ますます訳がわかりません。
訓練場に向かう通路をメアリーに手を引かれて小走りで移動します。
途中、訓練場から戻るらしい使用人達とすれ違います。
皆、明るい顔でキャーキャー騒ぎながら戻ってきます。
メイド長の私も目に入らないほど興奮しているようです。
何が始まったのでしょうか?




