第68話 罠
屋敷裏にある訓練場。
護衛の訓練で何度も、それこそ毎日のように通った時もある苦しい思い出の場所。
「誰か、手合わせを頼めるか?」
執事長様の声掛けに、注目を集める私。
「執事長様とでしょうか?」
「いや、ミーアとだが?」
「はぁ?ミーアが何処に?」
戸惑う場長の声。
「私よ!」
訓練場内が、爆発したような騒ぎになった。
嘘だろ!誰?何だと!騙されるな!
等々。
中には、聞くに堪えない物まで。
「静まれ!」
一瞬、静まったものの、ザワツキ出す。
「ミーアで間違いない!最新の治療を受けて回復した。誰か手合わせ出来ないのか!」
「!わたしがっ!」
前に出る場長のウィリアム。
「本気でお願いしますね?」
「本当にミーアなのか?」
「そうで〜す!ルールは?」
木剣を手に、やる気十分のミーア。
「いつも通り、身体に当てたら終わりだ。さあ、いくぞ!」
振り上げた木剣が行き場を失うウィリアム場長。
その場の全員が、ミーアを見失っていた。
ウィリアムの後ろから木剣の先を首筋に当てるミーア。
「はいっ、次は誰?」
呆然とするウィリアム以下執事長以外の全員。
「場長があれでは、私が出るしかあるまい。」
執事長が木剣を手に取り、ミーアの前に進み出る。
ミーアが動く前に剣を振り下ろす執事長。
一旦受けたものの、
「まともに受けたら敵わないので、ズルさせて貰います!」
剣を受け流しながら、左手に持ち替えて右手を振る。
途端に執事長の足元が沈み込む。
「まだやりますか?」
動けなくなった執事長の後ろから剣を当てるミーア。
「参った、今のは何だ?」
「足元に、罠を張ってみました。魔力を解除するかそれ以上の力を注がないと動けませんよ?」




