第65話 理由
「魔力?ですか?」
「そうだ。ミーアには魔力が有ったのが採用の理由だ。」
私なんかに、そんなものが有ったなんて!
「遥か昔から、王族や貴族家には魔力が伝わってきた。それが近年、急速に失われつつあるのだ。」
でも、私、魔力なんて感じないんだけど、何で?
「平民の間では既に魔力は失われている。稀に平民に魔力を持つ者がいても、何故か魔法を発動することが出来ないのだ。」
つまり、私は魔力を持っていても使えないっていう事だよね?
「そこで、我がハワード家では魔力を持つ者を探し出し、取り込む事にしたのだ。」
取り込むって?
「採用して教育し、見込みがあれば婚姻を結び子を成して魔力を持つ者を育て上げるのだ。」
そのお話を今されると言う事は、私は見込みが有ったと言う事ですよね?
「先に話した通り、平民には魔力を持つ者は居なかった。そこで、視点を変えて孤児から探し出した。その中の一人がミーア、君だ。」
………それって、私の両親や祖父母辺りが貴族家の可能性が有るってことかな?
幼い頃の、かすかな記憶。
暖かい部屋。
暖かい誰かの存在。
流れ込んでくる暖かい力。
あれって、魔力だったのかな?
私が孤児になった経緯は、孤児院に残されているのかな?
「それは、予め調べさせてもらったが、残されていなかった。不自然な事に。だが、赤髪の貴族家となるとかなり絞られてくるからな?そして、今の君の容姿に瓜二つの貴族が何人か存在する。」