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第40話 リムジンドライバー兼護衛少女の事情 その3

長い時間が経ったような気がしたのだが、確かな事は解らずに、痛み止めと感染症予防の点滴を繋がれたままの私は意識が混濁したままベッドに横たわって、悪い夢を見ていたような気がしていた。


呼びかけられて、見える右目の瞼ををなんとか開けて部屋に入ってきた三人を見据えた。

伯爵様とキャサリン様、黒髪の小柄な東洋人の少女だった。

少女は、自分をお迎えに来たのだろうか?


このまま、楽になれるのかな?

自分の行けるのは天国?それとも異国の………?


起き上がろうとする私を制した少女が、前に出て話し始めた。


「確認します。貴方は、どんな自分に成りたいですか?」


東洋の天使様は、優しく私に囁いた。

はっきりしない意識の中で、突然の問いかけの意味が分からずに答えに詰まった。


成りたい自分。

今、自分に出来る事。


「自分は………強くなりたい。何があっても挫けない強さが欲しい。誰かを護れる、騎士の様な強さが!」


治らない火傷跡の事を考えると、心も強くならなければ。

守れなかった自分自身の与えられた任務。

強さが欲しい!


少女は、私の眼前で掌を翳し、突然中空に現れた小さなグラスを私の前に掲げた。グラスには、銀色に輝く透明な液体が満たされていた。


「私を信じて、飲んで下さい。そして、成りたい自分を強く願って下さい。」


訳が解らないまま、軽く身を起こし、奇跡のグラスを包帯だらけの震える両手ではさみ受け取り、キチンと開かない唇を痛みに耐えながらこじ開けて、溢さないように、慎重に、飲み干した。


そう、眼前に降臨した、女神様の、奇跡のグラスを!


「明日、また来ます。それまで、なりたい自分を強く願い続けて下さい。どんな力が必要なのか、どんな騎士に成りたいのかを。」


少女はそう告げて、去っていった。



…………夢か?


そうとしか思えない、女神様が降臨なされた瞬間だった。


そして、私は、意識を手放した。


目覚めると、病室が、明るかった。

日中なのは確かだが、なぜそう感じるのか分からずに思案していると、突然、気がついた。


目が、見える。

左目が……………


夢では、無かった。


成りたい自分を、女神様の為に、強く願うことを、誓った。

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