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第37話 リムジンドライバー兼護衛少女の事情 その2

長い待機時間だった。


迎えのプライベートジェットが、トラブルで給油地での整備が必要になったとのことで予定より6〜7時間遅れると連絡が入った。


後から思えば、ここでリムジンを離れたのが失敗だった。

出直すべきだったのだ。

迎えだけではなく、護衛が必要な意味を、車に細工される可能性を私はまだ理解していなかったのだ。


伯爵様は、他の貴族家程では無いものの敵が多いそうで、秘書として重用されているキャサリン様も狙われる対象だと伝えられていたのに。


そろそろ連絡が有るかと思った矢先、プライベートジェットが空港内で爆発炎上したと連絡が入った。

更に、キャサリン様とお連れの方が、危険を察したのか空港内のラウンジに入ったまま連絡が取れなくなったと伝えられた。

姿を隠されたのだ。


ここが、私が気が付かなければいけない最後のチャンスだったのだけれど。

キャサリン様とお連れの方が狙われてるのが明らかなのに、このリムジンが無事で済む訳がないと。


配車スタッフから引き上げる様に指示が入り、車を待機場所から出した瞬間、車内が赤く熱く染まった。

後部座席から、爆発的に炎が上がったのだ。

座席下の消火剤スプレーを掴み、リムジンから飛び降りた私は、左目だけあけて確認したレバーハンドルを引き、炎に包まれた自分に向けて噴射させた。

直後、爆風に吹き飛ばされた私は、恩人である伯爵様と執事長に意識を失うまでの一瞬で、お役に立てなかった事をお詫びをしたのだった。


目が覚めたのは、病院のベッドの上だった。


重度の火傷の為、薬で眠らされていたようで事件からかなりの時間が経っていた。

頭から首にかけてと、両腕の激しい痛み。

左目が僅かしか見えない。

焼け爛れて包帯を巻かれた自分の腕を見て、状況を悟った。


担当医から、説明を受けた。

消火剤スプレーを使わなければ、全身火傷で助からなかっただろうと。

これから皮膚移植を行い、少しづつ痛みは和らぐだろうと。


元通りにとは、言われなかった。

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