第29話 覚醒? その3
『五月様、あれ分かる?』
ラウンジを出て、通路を歩きながら表を見ると、給油と整備が終わったプライベートジェットが誘導路前に出されていた。
「あ〜、わたしにもわかるわ〜!あれは、まずいわ〜!」
棒読みの思考で、ネーロに応える私。
「キャシー、何も聞かないで私のお願い聞いてくれる?あ、返事は声に出さないで!」
試しに念話で聞いてみた。驚いた顔でこちらを見たキャシー。通じたみたい。
「別便のチケット取ってくれる?すぐに出発出来るやつ。あ、態度と表情は変えないようにね!私達、監視されてるから!」
さり気なく、タブレットを操作する彼女。1時間後の便の予約画面を私に見せてきたので、頷いて確定を促した。
大学図書館特別室での一件以来、彼女は私を全面的に信頼してくれている。たとえそれがどんなに無茶なことであっても。
ラウンジに戻る振りして、そのまま荷物も何も持たずに、持っていたバッグ一つだけでチェックインした。
「機長とクルーに、何か適当な理由付けて出発を遅らせるように伝えて。あっ、私達が別便に乗った事はまだ伏せておいてね!あと、到着するまで私の指示以外は誰とも連絡取らないでね!勿論、伯爵様もだよ!」
ビジネスクラスの座席に案内されてすぐにキャシーに念話で指示を出す。
使い魔達は、姿を消して、私達それぞれの肩の上に乗って丸まってた。
機長から了解の返事が来たところで、私達の乗った機体が動き始めた。
「機体は何があっても動かさないようにして、今からキッチリ30分後に機体から全員出る様に指示を出して!その後、誰も近づけないようにして!」
機長とクルー全員から了解の返事が来たのを確認して、大きく息を吐き出した。
無言で緊張の30分間。
機体が水平飛行に入り、飲み物が配られた頃、機長から連絡が入った。
『機体が、爆破された。』




