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第23話 そして、始まりの日 その9
開業準備は、大変だった。
まず、資格がない。実務経験が必要。
資格者は、私が取れるまで大樹さんにお願いした。
奥様の実家へ戻るのが遅れるけど、
「いいですよ〜、五月様もあと少しで講習受けられますから、大丈夫です。」
他の資格、食品と防火は、割と簡単に取れたので一安心。
問題は、猫様の集め方。店のコンセプトも決めないと。
開業資金は、割と有るからね。
退職金の他に、黒歴史に絡んで頂いた報奨と貴族年金が手付かずで残ってる。
お店は居抜きで引き継げるので、早く方向性を決めないと。
そして、肝心の、猫様。
悩みどころです。
大樹さんの所のしろ様のようなリーダーになれる猫様がいいな〜、などと妄想してみる。
誰も居ない、静かな店内で、ふと、何気なく手をかざしてみる。
何故か、また、誰かに、呼ばれたような、気がして、手をかざしたまま、振り返る。
つられて、私の指先で指し示した先に……
それは、現れた。
一瞬の、事だった。
平面だけでなく、空間と時間を重ねたそれは、あの、伯爵家の資料の隠しページに有った、立体的な魔法陣そのものだった。