第101話 主って?
「『処分』は後にして下さい!もう一体、何かが来ます。」
王宮の奥の方。
女王の居室が有る方角だわね。
この蜥蜴蜥蜴よりも強そうな存在が、ゆっくりと近づいてくる。
「スノー、あれに勝てそう?」
『余裕!五月だけでも勝てるよ。』
………………………………ホントかよと思いながら、刀に『力』を纏わせる。
「ネーロ、そっちはどうかな?」
『ん〜、暗殺者と魔物達が潰し合ってくれたから、楽勝だったよ。ソッチのドラゴンよりも格下だったしね!』
「そのままキャシーとミーアを守って。脱出するかもしれないから、リムジンは死守して!」
『了解!』
「………………………………来たわね、スノー、伯爵様をお願いっ!そこのトカゲモドキは、邪魔するんじゃないわよ?」
『………………………………「トカゲモドキ」って、ワシのことか?』
「五月蝿いわよ、黙ってないと切り刻むわよ?」
『………………………………………………』
瞬間移動なのかな?
私と伯爵様の間に現れたのは、巨大な狼。
光り輝く銀色の毛色な、マイクロバスよりも大きそうな巨体。
「………………………………あなたは、私の敵なのかしら?」
『………………………………………………』
問いかけても、返事がないわね。
「なんとか言ったらどうなのよっ!」
『………………………………………………』
コイツ、言葉が通じないのかしら。
「返事が無いなら、この場で切り刻むわよっ!」
刀に「力」を流し込みながら、問い掛ける。
暫し睨み合ったと思ったら、ゴロンと転がって腹を出して四肢を投げ出した。
『待てっ、私の負けだ。』
やっと喋ったと思ったら、まさかの降伏宣言?
「………………………………………負けって、どういうつもり?」
『言葉通りだ。私ではお前たちに勝てない。』
「………………………………………勝つつもりで出てきたのよね。私達を殺そうとしたってことでしょう?あなたは、この王宮の守り神なのかしら?」
『………………………………………そうだ、始末するように指示されて来た。私は守り神ではない。少し、違う。』
何が違うのかしら。もうどうでもいいけど。
「………………………………………誰に指示されたの?あなたが負けを認めると、私はどうなるのかしら?」
『誰からの指示かは私からは話せない。たった今から私がお前の使い魔で、この王宮の主あるじだ。』
「要らないわよそんなモン!アンタもそこのトカゲモドキも要らないわよ。私達を殺そうとしたのは女王からの指示で間違いなさそうね。二人とも切り刻むわ。」