表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/23

5.探索って楽しいよね 

 あれから3ヵ月が経った。同種の魔物、なんかいちいちこう表現するの面倒くさくなってきたな、前世のイメージから精霊とでも呼ぼう。精霊を食べるようになってからぐんぐん力が増し、りんご程の大きさだった身体もバスケットボールくらいの大きさに成長した。


 羽も2枚から4枚に増え、飛べる高さもスピードも以前よりも段違いになった。気配を探る力も身に付き危険を事前に回避することができるようにもなった。いくつもの精霊の集団を襲って壊滅させた甲斐があると言うものだ。


 今ならばうさぎ1匹くらいならば倒すことができるだろう。集団で襲って来られると食べられる他なくなるので、実行したことはないがうさぎよりも小さいとかげやリスの魔物は、既に倒せることを確認できた。

 自分で魔物を倒せるようになったことで、以前よりも経験値が手に入るようになり成長の速度が段違いに上がった。成長の糧になってくれた精霊さまさまである。


 さて、そんな強くなった私であるが、現在は何をしているかというと今まで来たことがなかったエリアを探索している。今までは、どこへ行こうとしても途中で襲われて逃げると言うことを繰り返していて、全然遠くまで行くことができなかった。力を付けてある程度切り抜けられるようになったため、危険を承知で新しいエリアの探索を行うことにした。


 実力が付くと、新たなエリアを探索したくなるのは、前世でやったゲームの影響かもしれない。今は元々いた森から見えていた山の麓付近を探索している。出現する魔物に大差はなく、多少がっかりしたが、新たな発見もあった。


 なんとついに人間を見つけることができたのだ。と言っても見つけたのは、ヒューマンではなくドワーフなのだが。小さめの身長に、ずんぐりした体型、そして男も女もみんな立派なもじゃもじゃした髭を生やしている。これで、ドワーフじゃなかったらイメージ詐欺だ。


 彼らは皆、山の方から降りてきて木を切り倒したり、採集を行ったり、魔物を討伐してその肉を持ち帰ったりしている。彼らが今の私には、倒すことができない魔物も倒してくれるため、元々いた場所よりもこちらの方が安全かもしれない。惜しむことがあるとすれば、倒した魔物の死体を残していってくれると非常にありがたいのだが、まぁ仕方ない。


 さて、ここで問題です。人間を見つけた私はこの後どうするでしょうか? 前世で読んだ魔族や魔物、人外の存在に転生した話では、仲良くしようとしていました。私も仲良くするでしょうか? 答えは否だ。仲良くなどしない。


 ああいう話は読んでいて面白かったが、疑問はあった。なぜ今世は人外なのに、前世の人間の考え方に固執するのだろうかと。もっと人間ならざる考えで動いても良いはずだ。

 別に仲良くなることを否定はしないが、私の考え方は違う。前世は前世、今世は今世だ。私は魔物として生きる。前世では喧嘩等しなかった分、今世では思いっきり人間とは戦っていく方針でいこうと考えている。そちらの方が楽しそうだ。


 とは言え、今の私では彼らには到底かなわない。挑んでいっても瞬殺されるのがオチだろう。今はもっと力を付けるのが先決、対決はまだまだ先だ。

 現に今、私が観察している4人のドワーフ達は、以前私が確実に殺されると感じた二首犬の魔物と戦っているが、この戦いはドワーフの勝利に終わるだろう。

 彼らは、その小さな身体からは想定もできない力で武器を振り下ろしているのか、二首犬には直接攻撃が当たっていないにも関わらず攻撃によって飛び散った破片や衝撃波でその身体はボロボロになっている。


 力任せにも程がある。

 引くわー。

 あっ、噛みつかれた。

 うっわ、全然効いてなさそう。

 あっ、犬ぶっ飛ばされた。

 

 しばらく観察していたが、ドワーフの戦い方は脳筋そのものだった。力任せにブンブン武器を振るい、攻撃を受けても鎧と筋肉により大したダメージにはならず、むしろ噛みつくことで動きが止まった二首犬に渾身の一撃を直撃させていた。力をこそパワーみたいなやつだ。

 と思っていたら、後方に控えてドワーフが何事か呟くと二首犬の周辺の地面に魔法陣が描かれた。直後、魔法陣からは槍状になった地面が飛び出し犬は串刺しにされた。


 あれ、魔法か? 魔法だよな!

 初めて見た!! テンション上がるなー。

 

 初めて魔法を見たことでテンションが上がる。脳筋みたいなイメージだったが、魔法まで使うとは。私の中のドワーフの評価急上昇だ。いずれ私もあんな魔法を使ってみたいものだ。前世のイメージで、魔法と言えばエルフだったが、エルフはもっと凄い魔法を使うのだろうか? 期待しておこう。


 私は勝負の行方を見届けると、再び探索を開始した。あんな勝負を見た後だと、こちらも触発されてやる気が上がる。今日は、山の麓を探索する予定だったが、思い切ってドワーフ達がやってくる山まで探索範囲を広げてみよう。ドワーフ達が通ってくる道を辿っていけば比較的安全に探索が可能だろう。


*****


―――はい、少し前までの自分をぶん殴りたいです。私は、今猛烈に後悔をしています。


 ドワーフ達が通ってきた道を辿って山を登ってみると、山が火山だと言うことが分かった。草木が生えない灼熱の台地が広がっており、それまでと一変した光景に私は感動も覚えていた。人間だった頃は、その熱さにやられていただろうが、この身体は暑さを感じないのか灼熱の空気は全く苦ではなかった。


 道を辿っていると、遠くに町らしきものが見えそこに幾人ものドワーフが住んでいる気配を察知することができた。そんな風にドワーフの気配を探るのに夢中になっていたからだろう。私は、背後から近寄ってくる魔物の気配に気付くことができなかった。


 ガンッ!!

 

 鈍い音が響き、視界がぐるぐると回転する。

 どうやら何かに殴り飛ばされたらしい。回転する視界のせいで、どこが地面なのかも分からなくなりながらもどうにか体勢を立て直す。


 痛い痛い!

 凄く痛い!!


 この世界に転生してからなんだかんだやり過ごしてきた私にとって、初めて受けたダメージだ。その痛みは想像を絶するものがあった。泣き叫んでごろごろできるならそうしている。しかし、襲撃者はそんなことを許してはくれない。


 右っ!


 間髪入れずに繰り出される追撃をぎりぎりで躱す。そのまま上空に飛び上がり、襲撃者の攻撃が届かない位置に身を置く。ここで、ようやく襲撃者の姿を目に捉えることができた。


 艶めく鱗を全身に纏い二本足で立っているその形状は、とかげを連想させる。手に石器を持っているその者は、まさにリザードマンと言い表すのに相応しい姿だった。


 初めてみる魔物だ。強さとしては、感じる気配から二首犬よりも少し弱いくらいだろう。5体の集団なのが嫌なところだが、1体でもどのみち勝つことはできないため、そんなに問題ではない。


 その場から逃げようとしていると、リザードマンと別の何かが複数こちらに向かってくることを感知する。その方向を見ると、全身が火でできた火の玉のような魔物が向かってきていた。そして、その魔物はそのままこちらに体当たりで突っ込んできた。

 

 速い。

 

 素直な感想だ。攻撃してくるのは分かっていたが、避け切れずにかすってしまった。かすった部位が焼けて痛い。強さは大したことがない。今の私よりも確実に弱いだろう。だが、攻撃の手段がない。私ができる攻撃は噛みつきと翼での殴打、体当たりのみだ。全て接触する必要がある。全身が炎でできている相手は相性最悪である。


 その場からの離脱を試みるが、火の玉は速い上にしつこい。どこまで逃げてもしつこく纏わりついてくる。リザードマン達も落ちてきたら襲い掛かってやろうとずっと追跡してくる。


 なんでだ!

 そんなに私に価値があるか?

 別の獲物狙えよ。


 そんなことを考えていて集中してなかったからか、ついに私は火の玉の攻撃を避け切れず直撃を受けてしまい、焼けるような痛みと共に墜落していくのを感じながら意識を失ってしまうのであった。

高評価、ブクマを頂けると作者のモチベが上がります。って言うかいれてください。よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ