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4.強くなるには? 

 転生してから1週間が経った。この間、私は自分と同じ魔物の集団に所属しては抜けるということを繰り返していた。


 所属していた集団がうさぎに襲われてから、私は当てもなく転生した付近の森を飛びまわっていたのだが、すぐにまた別の集団を発見することができた。一人では心細かったのもあって、私はその集団に混じって時を過ごした。


 その集団を観察することで分かったのだが、私が転生した魔物はどうやら肉や魚、果実といったものを食べなくても生きていけるようだ。何日も観察してその間、彼らが何かを食べている姿を見ることはなかったし、私自身も何も食べなくて平気だった。餓死の危険がなくなりそうで食性はありがたかった。


 何度も所属と脱退を繰り返すはめになったのは、よく他の魔物の襲撃に会ったからだ。私が転生した魔物はどうやら弱肉強食のピラミッドでかなり下層に位置しているらしい。とにかく他の魔物に襲われることが多かった。


 まぁ、自我が無く襲われるまでは逃げることも抵抗することもない魔物が集団でいるのだから、襲撃者からしたらごちそうがたくさんあるように映っていることだろう。

 うさぎを始め、犬や鳥型の魔物に幾度も襲撃されその度に私は集団の仲間を囮にして逃げ生き延びてきた。


 さらに、この魔物は交配ではなく自然発生によって産まれることも判明した。観察している際に、急に大気中にある何かが渦巻いたと思ったら次の瞬間には渦の中心に魔物が誕生していた。道理であんなに襲われるのに絶滅しないはずだ。あの時、感じたものが魔力か何かで、私は魔力が集まった魔物に転生したと推測している。

 

 さっさと強くならないと遠くない未来で餌になってしまう。


 そう実感するものの他の魔物に対抗する手段がない。何も食べないで過ごしていても全然強くなった気がしなかったので、木になっている果実や自分よりも小さな虫、魔物の死体等を食べるようにした。先ほど私が転生した魔物は何も食べなくても生きていけるといったが、別に食べられない訳でないのか、私が例外なのかは分からないが食事を取ることはできた。


 そのため、自分よりも弱い生物や反撃の危険がないものを積極的に食べている。食べることによって、何となくだが力が増しているような気がする。経験値が溜まっている感覚とでも言い表せばいいのだろうか、とにかくそんな感覚がある。

 しかし、前世では食べるくらいなら食糧難で食事が無くなって食べることなく死ぬと考えていた虫を食べることになろうとは、、泣けてくる。


 食事によって力が増していくのはよいが、その上昇量は微々たるものだ。

 まだうさぎ一匹にすら勝てないだろう。これでは、結局いつまで経っても強くなれない気がする。おまけに、味がしないのだ。口はあっても味覚がないのか味を全く感じない。まずいものが平気という点ではありがたいが、おいしいものを感じ取れないのは辛い。


 泣き言が多くなってしまった。焦りすぎだろうか? いやだが、早く強くならなければ死んでしまう。それは絶対だ。何か解決策があると思うのだが、それが見つからない。

 そんなことを考えていると、また同種の集団を発見した。さっそく合流しようと飛んで向かおうとすると、

 

 ガサガサ!


 そんな嫌な音がして前方の茂みから、二首の犬の魔物が現れた。片方の頭には、ここに来る前に仕留めていたであろう鳥の魔物の死体が咥えられていた。


 やばい、やば過ぎる!!


 咄嗟に木の陰に隠れたが、犬は鼻がいい。既に見つかっているかもしれない。飛んで逃げるのがベストだが、距離が近すぎる。この距離なら、私が飛び上がるよりも先に二首犬が私を捕らえるだろう。


 必死になって気配を殺すが、見られている気配がする。二首犬がこっちに来たら確実に私の命は終わってしまう。人間であった頃なら心臓がバクバクと早打ち、呼吸が浅くなり、震えと冷や汗が止まらなくなっているだろう。

 

 そんな恐怖に耐えていると、視線を感じなくなった。そして、その後すぐに走っていく音が聞こえた。木の陰からこっそり身を出し見てみると二首犬は私が合流しようとしていた集団に襲い掛かっていた。二つの頭に共に魔物を咥えている。


 助かった。


 そう安堵すると、集団が囮になっている内にすぐにその場から離れようとした。

 が、先ほどの光景に違和感を覚えた。


 何か気にかかる。何だ?

 あっ!? 鳥がいない。

 あいつが咥えていた鳥はどこにいった?


 辺りを見渡せば最初に二首犬が出てきた茂みの近くに無造作に放り投げられている鳥の死体があった。


 あの犬、仕留めた獲物を捨ててまで私の種族に襲い掛かっていったのか?

 新たに獲物を仕留めてから、鳥も食べるつもりだったのだろうか?

 あり得ない訳ではない。だが、違うような気がする。


 私は二首犬の動向を気にかけながら、捨てられた鳥を喰らう。本当は持ってこの場から離れたいが、私の力では移動させることができない。急いで食べ進める。


 結局、半分程食べたところで、二首犬が集団をあらかた食べ終えてしまったので離脱することになった。その際に二首犬の姿を再び見たが、気配が大きくなっている気がした。


 しばらく森をさまようと再び私と同じ魔物の集団が見つかった。いつもなら混じって過ごすが、今は気になることがある。


 何でこんなにこの魔物が襲われるのだろうか? 襲うまで逃げないし抵抗しないから食べやすい。それもあるだろう。しかし、既に捨てた獲物を捨ててまで襲い掛かっていたのは何故だろう? 食べた後の二首犬の気配が食べる前よりも強くなっていた理由は?

 その答えは、あの鳥がいらなくなるくらいこの魔物に魅力があるからではないか? 魔物にとって魔力の塊であるこの魔物は、何よりも魅力的な食糧なのではないか?


 私は沸き上がった疑問に答えを得るべく、同じ種族の仲間に噛り付いた。

 

 ん!? これは……

 ウマい!?

 ウマすぎる!!


 この世界に転生してから初めて味のするものを食べた。どうやら味覚が無かった訳ではないらしい。そして、とんでもなく上手い。どんどん食べたくなる。おまけに身体に力が沸きあがってくる。成長して強くなっていることが実感できる。これは襲われる訳だ。


 噛り付かれた個体は、ギーギー叫んで暴れまわるが羽を使って抑え込む。そのままどんどん食べ進めるとやがてぐったりとして抵抗がなくなった。その直後、食べたことによるものとは違う力が新たに身体に流れ込んできた。これは、敵を倒した経験値だろうか? 


 虫を食べた時にもかすかに感じていたが、この世界では自分で敵を倒すことによって経験値を得られるらしい。死体や果実を漁った時には得られなかったものだ。しかも、この魔物は虫よりも得られる経験値が多い。


 まさかこんな身近に強くなる方法があったなんて、思っても見なかった。私は、最初に噛り付いた個体を食べ終えると、近くを飛んでいた別の個体に飛び掛かっていった。私が転生した魔物は、胃袋が無いのか食べられる量に上限がなく、食べたものをすぐに力に変換できる。この集団を全て食べ尽くしたら一体どれ程の力は得られるのだろうか?


 私は欲望に従い、この日自分と同じ魔物の集団を一つ食べ尽くしたのだった。

  

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