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23.他の転生者

「おーい、無事かー?」


 空を見上げる形で倒れ伏している私に向かい鎧が問いかけてくる。黒銀のフルプレートに、ルイングベルの持っていた大剣と比較しても大差のない大きな剣、さらに身体の関節部からは青い炎が噴き出している。


 まぁ、見るからに強そうな魔物だ。取り合えず先ほどの問に答えるべく首を横に振っておく。


「そうか返事ができるなら無事だな。何よりだ」


 意味が通じているのかいないのか鎧が安堵した様子を見せる。彼? は、私が待っていた存在だ。この町で強者を狩ると決めた時に女神から通信で知らされた。


*****


(いい趣味してますね、相変わらず。それで結局何用ですか?)

(話がずれてしまいましたね。あなたに伝えたかったのは応援を向かわせました、と言うことです)

(応援?)


 正直、応援の内容よりも()()女神が送ってきたことを怪しんでしまう。


(しっつれいですね、あなたは! もっと敬ってください、私は女神ですよ!)

(いや、敬ってはいるんですよ。でも、女神様の性格を考えると素直にこちらの利になることを施してくれそうにないって言うかー)


 思考を読まれているため相変わらずこちらの考えは筒抜けだ。それなりに失礼なことを考えていため怒られてしまった。でも、疑うのは仕方ないと思う。


(まぁ、人間風情がくれって言ってきたら生意気で問題ですけど、私があげたいと思ってあげるのはいいんです。あなたは楽しませてくれましたしね♪)

(そういうことならありがたく頂戴致します)


 そういう考えならむしろ貰わない方が失礼だ。少なくとも私があげたいと思っているのに、拒否されたらショックを受けたり若干怒りを覚えることもあるだろう。女神と私の性格が似ている以上、女神もそうだと考える。

 ま、日本人がしがちな遠慮が駄目な時も多いってことだな。


(それで、私は何が応援に来るんでしょうか?)

(あなたの先輩です)


 私の先輩? 会社か? 通っていた学校か? それは会いたくないな。


(違います。偶にポンコツな思考しますね、あなたは。転生者ですよ、転生者。あなたと同じように魔物に転生した転生者)


 あー、転生者ね。私の他にもいるって聞かされていたやつか。女神に騙されて善意を利用されてる可哀そうな人達。まぁ、私が騙されていない保証もないのだが。


(だからあなたは特別ですから、騙していませんって。それに今回送るのは比較的嘘を付いていない方の転生者です。彼には出来るだけ大勢の命を殺すようにお願いしてます。あなたと話もあうと思いますよ)

(いや、怖っ! それ本当に味方ですよね?)


 そんな大量殺戮者と話があうと思われているのか私は。少しショックだ。別に好き好んで殺している訳じゃないのに。いや、それは相手も同じかもしれないな。実際に会うまで憶測でけなすのは止めておこう。


(まぁまぁ便りになると思いますよ、期待していてください)


*****


 そうして女神が応援として送ってくれたのが彼だ。ルイングベルがもう少し来るのが遅かったら、始めから2人で襲うつもりだった。準備を始めた時は1人で戦うつもりだったので、1人で戦うことになっても何も問題はなかったが。


「ふむ、瀕死だが放置しても死にそうにはないな。

よし! 俺は今から町を襲ってくる。新鮮な肉を用意してやるからそれまで待っていろ!!」


 鎧はしばらく私を観察した後そう言った。そして直ぐに町へと向かっていった、と思ったが戻ってきた。


「そうだ、この爺はお前が食べていいぞ。元々、お前の獲物だ。それに俺は肉を食べれんからな!!」


 がはは! と笑って上半身と下半身に両断されたルイングベルが渡される。いやもうルイン/グベルか。どさっ、と落ちた身体には先ほどまで溢れていたオーラは見受けられない。

 生きていた時はあんなに輝いていたのに何だか悲しいものだ。


 私にルイン/グベルを投げ渡した鎧は、再び町の方角へと走り去っていった。こちらも疲労していたおかげで、あいつの強さの程はよく分からなかったが女神の保証付きだ。弱くはないだろう。

 私程度と自分を卑下するのは好きではないが、私程度に最強を差し向けなければならない町なら一人で滅ぼせてもおかしくはない。


(なんだかなぁ~、悲しいものがある)


 ルイングベルはきっと自分の住んでいた町やそこに住んでいた人々を守りたかった。だがら命を賭けて私を討ちに来た。だが、今その願いは無残にも踏みにじられようとしている。つまりルイングベルのやってきた事は無駄になった訳だ。


 その事を考えると虚無感が沸いてくる。ルイングベルの願いは高潔なもので支持されるべきものだったが、結局負けて失われてしまうのだ。歴史は勝者が作り、敗者は踏みにじられる。

 勝者の願いがどんな下衆なものであってもそう。敗者の理想の方が正しくとも変わらないものがある。これは前世からそうだった。


 そんなことは無い、最後に正義は勝つ。だから前世は平和だった、と考える人もいるかもしれない。だが、それまでに受けた仕打ちが消える訳では無いのだ。それは無意味だと思うことがある。例えるなら、警察がストーカーを捕まえても、ストーカーされた人が殺害されていたら逮捕の意味が無い、と言ったら分かりやすいだろうか。


(頑張って強くならなきゃな。もっと強く……)


 そんなのはごめんだ。だからこそもっと強くなり、理想を実現できるようになりたい。極論、世界の全てを自分の思うままにしたい。まぁ、まだこの世界で実現したいのは女神に任された仕事だけだ。自分の夢ではない。だけど理想の実現には力が必須だ。純粋な暴力が。


(私の未来のために君を頂くよ、ルイングベル)


 仰向けに倒れている身体をうつ伏せにし、投げ渡されたルイングベルに噛り付く。


(んー? 美味しいんだけど、クセが強いな)


 老人とは思えない程に筋肉質な肉だ。何となくだが、ボディビルダーが好んで食べていそうな感じがする。味の薄いイメージのその肉も、内蔵された魔力が多い程美味しく感じるこの身体では美味に感じる。


 しかし煙草か何かを吸っていたのだろうか? 肉に何かの匂いが染みついている。ハーブか何かなら良かったが、これは臭い。正直辛い。呼吸していないこの身体でも匂いは感じる。不思議なものだ。


 初めの一口はいけたが、次に手を取るのは遠慮したいが今は一刻も早い回復が必要。流石に内蔵された魔力は多く、僅かずつではあるが身体の再生が始まっていることを感じる。食べない選択肢はない。


(ぐっ……、クソ! 最期に嫌がらせをしていきやがったな)


 ルイングベルに対して心の中で悪態をつく。置き土産としては充分すぎる嫌がらせだ。一口齧る毎に口の中で広がる悪臭が精神を削っていく。吐き気もする気がする。が、それでも回復のために食べるしかない生き地獄。ここまで来ると味が美味しいのも却って嫌だな。


(生き延びたばかりなのに、死にたくなる……)


 やはり煙草は健康に悪いことを実感しながら食べ進める食事は、どこか悲しい味がした。

次の話で切りがいい所までくる。そこからはどうしようかな~。


高評価、ブクマを頂けると作者のモチベが上がります。よろしくお願いします。

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