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アレをぶっ壊せ

「自然錬成魔術...『炎爆斬(グィーグル)』ッ!!」


空中に飛んだライカが左手で魔術を編み、右手に握る剣へ与える。

すると剣は燃え盛る炎を纏い、周囲に陽炎かげろうを放った。


燃える剣をヴァルグリーズの上腕へ一振りすると、装甲を溶かしつつ切れ目を付けていく。

しかしヴァルグリーズは当然の如く溶けた部分を再生し、体を回してライカを弾き飛ばした。


「くっ!」


裏拳をまともに受けてしまったライカは、何とか地面で受身を取る事に成功する。

しかし叩きつけられた衝撃は大きく、立ち上がろうとした際によろめいてしまった。


「ライカちゃん!」


ライカに気を取られたユウリの隙をつき、ヴァルグリーズは手による薙ぎ払いを放って彼女を弾き飛ばす。

柔らかい体が衝撃の大部分を吸収したものの、あまりの負担に背中の筋肉が収縮して立てなくなってしまった。


2人の負傷を見て、二坂が舌打ちする。


「想像以上の面倒くささだな。どうやって攻略するか....」

「ロボット...で、あれば。」


二坂のぼやきに対し、何かに気付いた桜が口を開いた。

6枚の円盤を引き寄せつつ、ヴァルグリーズを見上げる。


「ロボットなら、動力源があるはず。それを止める事ができれば...!」

「確かめてみる価値は、ありそうだな。」


影を伝って真横に出現した景野が、桜の提案に賛同した。

よろめきながらも立ち上がったライカは甲冑のバイザーを下げて顔を覆い、ディーンは拳に炎を纏わせる。

二坂は指を鳴らし、ユウリは姿勢を低く取った。


そんな6人を捉えたヴァルグリーズの視線が、金色に光を放つ。

それを合図として、『チーム』のメンバー達は一斉に走り出した。


「行くぜぇっ!!」


最初に飛び出したのはディーン。

吸血鬼の翼を広げて飛翔し、ヴァルグリーズの目と同じ高さに躍り出た。


「燃えろっ!ファイア.....どわぁっ!?」


目の前で馬鹿正直に技を放とうとしたディーンを、ヴァルグリーズが殴る。

だが、これこそが彼らの狙いだった。


「だぁらあっ!!」


上から降ってきた二坂が空中で1回転し、空中で拳を構えていた。

気付いたヴァルグリーズは上を向いたと同時に、自身の体に異変を検知。


見れば、左腕が無数の影の手によって捕らえられていた。

降ってくる二坂の拳を迎撃できる手段は無く、回避行動も取れない。


そんなヴァルグリーズの頭部に、二坂の拳がめり込む。

能力『消し去るもの(デリーター)』によって装甲の持つ『反発力』を消去し、『摩擦』『抵抗』を消去して最大限まで加速させた拳は、あっという間にヴァルグリーズの頭部を半分ほど歪ませた。


腕を引いたヴァルグリーズの掴みを離脱して回避した二坂は、ボコボコと再生していく頭部に舌を打ちつつ報告する。


「頭には無え!動力源は、他の場所だ!」


ヴァルグリーズは巨大な人の形をしたロボットだ。

その構造も人間のそれを真似ているとすれば、動力源の設置場所として頭部以外に考えられるのは....


「心臓。でしょうか。」


ライカが呟いた。

攻撃されやすい部分であり、バランスを崩さないよう手足のどこかに動力源を置いているとは思えない。

頭部に無いのなら、胸部にしか無いだろう。


ヴァルグリーズは二坂との交戦に気を取られ、こちらに背を向けた状態だ。

桜は円盤を呼び寄せ、飛び上がる。


「はぁぁぁっ!!」


ヴァルグリーズの背部にある装甲の繋ぎ目に、6枚の円盤の刃を突き立てた。

強烈な音を放ちながら回る刃は装甲を削り、隙間に食い込んでいく。

バチバチと閃光を放ちながら、強引に装甲をこじ開け始めた。


流石に気付かれたようで、ヴァルグリーズは体を360度高速回転する事で桜を振り払おうとする。


しかし、桜の『手品師の空間イリュージョニスト・ステージ』の能力は『座標操作』。

ヴァルグリーズの背中に自身の座標を『固定』させ、桜はしつこく背中に纏わりつく。


「あっ...!」


内部を削っていく円盤の隙間から、一際目立つ光が見えた。

鈍い橙色の放つそれからは、明らかに特別なものを感じる。

これこそが、『動力源』なのだろうか。


「きゃっ!」


だがそれを発見した直後、目の前が真っ白に光り、衝撃が走る。

ヴァルグリーズの背中に装備してあった武器が作動し、桜に爆撃を浴びせたのだ。

桜は近距離で爆竹のような幾度もの爆発を受け、吹き飛ばされてしまう。


「痛っ...でも、見えたかもしれない...!」


爆風によって思い切り地面に叩き付けられた桜は、上半身を起こすだけで精一杯だった。

ヴァルグリーズの背中から見えていた『橙色の何か』も、装甲が既に再生し切ってすっかり見えなくなっている。


しかし、その光景を見ていた桜の表情は苦痛と共に、希望を含んでいた。

桜はできる限り息を吸い、戦っている皆に見えたものを伝える。


「中心の部分です...!人間の、心臓の部分に、奴の動力源があります!!」

「やっぱりか。.....おい二坂!」


桜の声を聞いた景野が二坂を呼ぶ。

景野に呼ばれた事が癇に障ったのか、苛立ちのこもった顔で振り向く二坂。

景野は親指でヴァルグリーズを指し、二坂に指示を出した。

その指示は、至極単純。


「アレをぶっ壊せ。お前の得意分野なんだろ?」

「得意どころか、右に出る奴はいねーよ!」


景野の煽りにそう返した二坂は、大きく仰け反る形で上半身を振りかぶる。

ねじれた体を戻すと同時に左腕を振り下ろし、虚空を引っ掻いた。


「『消し去るもの(デリーター)』。」


二坂が能力を発動すると、震えるような音と共に、引っ掻いた空間が『消去』される。

消えた部分を補完するように空間が縮み、その現象に二坂が引っ張られることで、ヴァルグリーズの胸部へ一瞬で肉薄することに成功した。


「おぉ、らぁっ!!」


二坂が放った全力の蹴りが、ヴァルグリーズの胸に突き刺さる。

金属のひしゃげる音を立てながら、『反発力』が消えたヴァルグリーズの装甲に二坂の足が食い込み始めた。

内部の配線が傷付き、電気が漏れ出はじめる。


しかし、その次の瞬間。


ヴァルグリーズの肩部分が駆動し、内部から機関銃が展開。

自身の胸に蹴りを放つ二坂へ、照準を合わせた。


「ちぃっ!」


銃口が光り、激しい集中砲火が二坂を襲う。

二坂の『消し去るもの(デリーター)』で銃弾そのものを『消去』する事は可能だが、この至近距離では間に合わない。


直感的にそう判断して後ろへ下がった二坂だが、機関銃に注意が逸れた隙を狙ってヴァルグリーズが右ストレートを放った。


「だっ.....!?」


咄嗟に『衝撃』を消すも、完全に『消去』するには間に合わなかった。

凄まじい勢いで吹き飛ばされていく二坂を助けようと影の手を伸ばした景野も、ヴァルグリーズの横蹴りをまともに受けてしまう。


背後の上空からディーンが狙ったが、すぐに捕捉され180度回転したヴァルグリーズの腕に掴まれてしまった。

ディーンが不死身である事を理解しているのか、掴んだ手でその体を地面に押さえつけ続け、話す気配は無い。


そうこうしているうちに、二坂がようやく空けた胸の穴もすっかり塞がっていた。

剣を構えるライカに、ヴァルグリーズが目を光らせて睨みつける。


と、その瞬間。


どこからともなく飛び込んできた一筋の閃光が、横からヴァルグリーズに衝突する。

砲弾のように飛び込んできたそれと衝突したヴァルグリーズは大きくよろめいた後、傷を修復させながら姿勢を戻した。


飛んできた『何か』が着地したであろう方向を、ヴァルグリーズが目のライトで照らす。


崖の一端が崩れ、周囲は爆煙のごとき土煙が上がっていた。

ライカとユウリは土煙に咳き込みながら、漂う土煙を手で払う。


バチバチと激しい電光を纏いながら、『それ』も土煙を払った。

土煙の間から姿を表した手のひらが、握り拳を作る。

同時に衝撃波が走り、周囲の土煙を一気に払って消滅させた。


「ごめん、待たせた。」


土煙が晴れ、現れた『それ』の正体。

それは今まで昏睡状態に陥っていた、チミーだった。

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