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言ったでしょ?

「ここ.....かな。」


永遠なる供給源(エターナル・エンジン)』の力をもってすれば、到着はほぼ一瞬だった。

手に持っている小さな紙切れと周囲の景色とを見比べながら、チミーは独り言を呟く。

汚れが少ない、塗装したてのような外壁で、とても清潔感が漂っている病院が目の前にあった。


あれが、景野の言っていた病院だろう。


駐車場を横切り、自動ドアから院内へと入る。夕方より少し遅い時刻だからだろうか、広いロビーにも関わらず、その人数はまばらだった。


景野は、どこにいるんだろうか.....?


病院に来れば、案内すると言っていた。

なら、ロビーで待つのが一番景野の目につきやすいだろう。

そう考えたチミーは、近くにあった横長のソファに浅く腰掛ける。


特に時間潰しするものを持ち合わせていなかったため、広いロビーの施設内を見渡していた。景野の姿は見当たらない。


「早いな」

「うわっ!?」


背後から突然声が聞こえ、チミーは大声を張り上げながらソファから飛び上がる。


背後にはいつの間にか景野が立っていた。

チミーの大声に、何事かと向けられた周囲からの視線を、軽く縮こまってやり過ごす。

その後、ムッと口を引いて景野に顔を寄せ、少し恥ずかしそうに小声で注意した。


「あのね、ここ病院なんだから驚かせないでくれる?」

「あぁ、悪い悪い。もう慣れっこだと思ってたから。」

「こっちの世界に戻ってきた安心ですっかり忘れてたよ...ほんと心臓に悪いなぁ。」


反省している様には見えない景野に小さくため息を吐いた後、チミーはソファから立ち上がる。


「こっちだ。.....頼んだぞ。」


景野はチミーに背を向け、早速歩き始めた。

癖なのか、エレベーターは使わずに長い階段をどんどん登っていく景野。

その後ろを、チミーが付いていく。


そうして3階まで登った後、角を曲がり、数メートル歩いた所で景野が立ち止まった。

目の前には小さな扉がある。


「ここだ。」


景野は腕を持ち上げ、扉の横に付いてあるボタンを押す。

すると中から小さくブザー音が聴こえ、1秒後に扉が開いた。


「あぁ...こんにちは。」

「こんにちは。」


部屋の中には女性看護師が何やら作業をしていた。

景野とは顔見知りなのか、景野の姿を確認すると慣れた風に肩を落として挨拶する。


「彩花は...相変わらずですか。」

「今日はちょっと、元気なさそうですね....。」


景野の問いに、女性看護師は少し眉を下げた表情で答える。

斜め後ろに立っていたチミーが景野の視線を辿ると、ベッドに一人の女の子が眠っていた。

あの子が、景野の妹.....彩花なのだろう。


景野はチミーが彩花を見ていることに気付くと、視線だけをチミーに向けて声をかける。


「.....できそうか?」

「.......。」


景野の問いにチミーは答えずに、足を前に出した。

景野の妹─────彩花が寝ているベッドの真横に立つと、おもむろに手を伸ばして彩花の腕に手を置く。


「『永遠なる供給源(エターナル・エンジン)』......!」


能力を発動。

チミーの手のひらを中心に、淡い光が灯る。

その様子を真剣な眼差しで眺めていた景野と、何をしているのかと遠巻きに見ていた看護師。

両者共に次の瞬間、その表情は驚きへと変化した。


彩花と接続してある、心臓の動きを計る計測機の数値がみるみるうちに上がっていく。

低かった脈拍が正常な数値まで上り、血中酸素濃度も上昇。

平均より低い彩花のバイタルが、一般人と同様.....いや、それよりも健康な状態へと変化したのだ。


「この子は、体が弱いから繊細な治療しか受けられなかったんでしょ?だったら.....強くすればいい。」

「な、何をしたんだ......!」


チミーの『永遠なる供給源(エターナル・エンジン)』が強力で、凄まじく汎用性に優れている事は景野も分かっていた。

だが、こんな事すらも可能なのか。


「この子の細胞に、目一杯のエネルギーを流し込んだ。この子の体は今、一段階パワーアップしようとしている。」


気付けば、青白かった彩花の肌が生気に溢れた艶のある肌色へと変化していた。

女性看護師はそんな様子を見て大いに取り乱し、人を呼ぶべく急いで病室から飛び出す。

呆然と眺めていた景野に目を向け、チミーは得意げな顔を作った。


「言ったでしょ?『できる』って。」


チミーが彩花の腕から手を離し、一歩下がる。

すると眠っていた彩花が目を開き、景野の姿を確認した。


「彩花!起きたか。」


彩花に駆け寄った景野。

同時に病室へ、先ほどの看護師が複数人の医師を連れて現れた。

彩花の治療に携わってきた医師達が、モニターの数値を見て驚愕の表情を見せる。


「こりゃあ....同じ人物とは思えん。凄いな。」

「すぐに検査してみよう。もしかしたら、手術を受けられる状態にまでなっているかもしれない。」


そう言って準備を始め、彩花は医師に連れられて検査室へ向かった。

同様に付いていこうと足を前に出した景野は、思い出したように振り向く。


「なぁ染く......」


言いかけたところで、景野の動きは止まった。

病室には、チミーの姿は既にあらず。

彩花が目覚めた時点で、チミーは病室から消え去っていたのだ。


開いている病室の窓から、僅かな風が通る。









次の日。


「おはよ.....」

「おっはよー!」


『宝珠争奪戦』によって体感日時が何日も経っていたチミーは、『チーム』の部屋に入るととユウリが飛び付いてくることをすっかり忘れていて、まともに突進を食らってしまう。


「....もう。」


尻餅をついたチミーは猫のように頭を擦り付けてくるユウリを押し退けて立ち上がる。

そこにはチミーとユウリの他に、いつも通り二坂、ライカ、ディーンがいて、そして.....




「よう。昨日は世話になったな。」


景野が壁に寄りかかって立っていた。


何故ここに?

神出鬼没な景野とはいえ、ここに来たのなら何かしら理由があるはず。

その理由を、景野が自ら口にした。


「今日から俺も『チーム』の一員として入れさせてもらうことになった。これから、よろしくな。」


突然の宣言に、チミーはしばらく固まる。

ようやく状況を理解したチミーが、口を開けて大声を発した。


「はああああぁっ!?」

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