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ここで決めるしかない

チミーを睨んでいた桜の視線は、唐突に結を向く。

結が解呪魔法を編んでいる事が、とうとう気付かれてしまったのだ。


「何を企んでる。これ以上、余計な事はさせない!」


桜は振りかぶって円盤を投げ、結の解呪魔法生成を阻止しようとする。

魔法によって風を起こし、円盤から逃れた結の行動を読んでいた桜。

回り込むように瞬間移動し、円盤を変形させた剣を振り上げた。


「させるかっ!!」


チミーが結の前に回り込み、振り下ろされた剣を弾く。

反対側からの一振りを手首を掴んで食い止め、背後に回る事で桜の腕を後ろに回す。


だがそんなチミーを円盤が襲い、拘束が解除された。


「もう少し、もう少し.....!」


結の解呪魔法は、ほとんど完成に近付いていた。

白い光がバチバチと電流を放出し、力を蓄え始めている。


チミーもそれは感じ取っていた。

ここからが、ラストスパートだろう。

自然とチミーの体には力が入っていた。


地面を蹴り、空中で1回転しながらの突進。

その間にエネルギー刀を両手から片手へ持ち変え、刀を持っていない方の手のひらでエネルギー弾を生成した。


3つに分裂したエネルギー弾を、真正面にいた桜へ発射する。

エネルギー弾は、空中にいるチミーを狙って桜が飛ばしていた円盤と激突した。

黒煙を吐きながら、円盤の進行を阻む。


チミーは黒煙を切り裂きながら、突進を継続。


エネルギー刀を振り上げ、桜と数回打ち合う。

桜は全ての円盤を使ってチミーのスピードに対抗するが、チミーは体を軽々と回転させて円盤を躱していく。


次々と襲いかかってきた円盤を全て躱した後、足を踏ん張って回転を止めたチミー。

続けて放った突き上げるような拳が、桜の顔面をかすめた。


間一髪でチミーの拳を回避した桜。

風圧で長い髪を揺られながら、僅かな隙を狙って蹴りを放つ。


「がっ...!」


上半身に直撃した蹴りによってよろめいたチミーは、続けて放たれた剣の一閃を後方に跳躍することで避ける。

突進を仕掛けてきた桜へ、エネルギー刀を構えて防御体制を取った。





一際大きな音が鳴り、白い衝撃波が散る。

結はついに桜の『呪い』を解除する解呪魔法を、完成させることに成功したのだ。

小さな光を点滅させ、チミーへ合図を送る。


結からの合図を受けたチミーは、いよいよ解呪魔法を打ち込むための準備を始めた。

エネルギー刀で円盤を弾きながら飛び回り、桜を誘導していく。


「おぉぉぉぉぉぉぉっっっっ!!!」


何かのために誘導している事に気付いていた桜は、『呪い』による力をさらに引き出した。

全身から僅かに黒い瘴気が溢れ始め、今までとは様子が一変し。

その攻撃に、勢いが増す。


「くっ!」


それにより、有利に戦ってきていたチミーが少し押され始める。

桜の強さもそうだが、それよりも『呪い』の圧力にチミーの動きが抑えられているのだ。


チミーは円盤を弾き、距離を取ろうと後ろに飛んで跳躍する。

しかし、凄まじいスピードで距離を詰めてきた桜が、休む暇も与えずに直剣を振るった。


チミーはエネルギー刀を縦にして桜の剣を受け止め、飛んできた円盤を刀を切り返すことで弾く。

その瞬間に発生した、ほんの僅かな隙を桜は見逃さなかった。


「はぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」


チミーの顔面に向かって放たれた鋭い突きが頬を掠め、ゴーグルを弾き飛ばした。

プラスチックの跳ねる音が鳴り響き、チミーの付けていたゴーグルが地面に転がる。


「くっ!」


チミーは頬を触り、出血を確認。

地面に転がったゴーグルは剣によって半分ほど破壊されており、使えなくなっている。

ゴーグルの無い状態は、力の消耗がかなり激しい。


ここで決めるしかない。



しかし、ただでさえこの長時間能力を酷使してきたのだ。

これ以上の負荷を体にかけると、どうなってしまうか分からない。




そんな事を考えているうちに、チミーはまた隙を狙われてエネルギー刀を円盤に弾かれる。

宙を舞ったエネルギー刀を見て、チミーは首を振った。



....ここまで来て、何を考えているんだ。私は。





唸りを上げる円盤に囲まれていたチミーの姿は、一瞬にして消えた。

直後、桜の背後に出現。





たとえ身体がボロボロになろうとも。


6年もの長い間、苦しめられてきた桜だけは助けなきゃいけない。


私は...そう思う......!





「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!!!!!!!!」



チミーは叫び、渾身のエネルギーを込めた拳で円盤を弾き、蹴り飛ばす。

円盤は音を立てて校舎の壁に勢いよく突き刺さり、その動きを停止した。


「っ!?」


突然のパワーアップを見た桜の動揺なんて目もくれず、チミーは瞬間移動に近い速さで周囲の円盤3枚を吹き飛ばす。


着地した後、地面に落ちていたエネルギー刀を走りながら拾い、桜の2本の剣とぶつかり合う。


だが、チミーのパワーは圧倒的だった。

エネルギー刀の切り上げを抑える事ができず、桜の2本の剣は砕け、宙を舞う。

宙を舞った剣に一瞬目線を取られてしまった桜に、チミーが突っ込んだ。



「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!!!!!!」



チミーは全力で叫び、腰を落として全力の掌底を桜の胸元へと放つ。

掌底のぶつかった面から水面のように衝撃波が走り、慣性のままに桜が宙に浮いた。



「今だ!結さん!!!」


チミーは声を張り上げて結に合図を送る。

言葉が終わる頃には、既に結は動き出していた。


「穢らわしき幻影の呪いよ、今この潔癖なる光をもって打ち消そう...!」


結は術式のトリガーとなる短い詠唱を済ませ、白く輝く杖を止まっている桜に向ける。


「禁術...!『万呪晴覇天光ヴォイスチャーム・デルダ』!!!」



その言葉と共に、結の杖から一筋の閃光が放たれ、一直線に桜を貫く。



「......。」



止まったかのように静かな世界は、再び動き始めた。

結の術式を受けた桜から力が抜け、空中から勢いよくバランスを崩して倒れ込む。



「桜っ!!!」



チミーが飛び上がり、落ちてきた桜を抱き止めようと手を伸ばす。

しかし桜はギリギリの所で意識を取り戻し、接近してくるチミーの存在に気付いた。



「あれ......チミー...ちゃん......。私、なんで.....。」



桜は初めてチミーの顔を真っ直ぐ見て、その名前を呟いた。



「桜っ.......!!!」



チミーは感極まった表情を浮かべ、ゆっくりと桜の肩に触れる。



その瞬間だった。





「..."殺せ"。」


どこからともなく鳴り響いた男の声。

そして、急激に漂い始めた血の匂い。









「え.....」






気付けばチミーの刀が、桜の胸部を貫いていた。

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