アンタの弱点は、分かってんのよ
ディーンが『サムライ』と戦っている間に、『永遠なる供給源』の探知能力を使って先へ進むチミーと結。
半ば崩れかけていた暗い廊下の奥から、2つのエネルギー反応。
「!」
一直線にこちらへ突進してくるそれは、恐らく桜の円盤。
背中を反らして1枚目を避け、咄嗟に出現させたエネルギー刀で2枚目を弾く。
これが現れたということは.....
ゴクリと唾を飲み込んだチミーが円盤の飛んできた方向を睨むと、そこには桜が虚空で佇んでいた。
「やはり、お前か。」
呟くように放たれた言葉を聞くよりも先に、チミーが走り出した。
右腕を伸ばしてエネルギー刀を起動し、左右から襲いかかってきた2枚の円盤を刀で弾く。
正面から放たれた3枚目の円盤を右方向に跳躍することで回避し、そのまま壁に足を付けて壁を床のようにして走る。
『永遠なる供給源』による超人的スピードで、桜が体の向きを変えるよりも速く回り込んだチミーは壁を蹴り、桜へ向かって跳躍。
放たれた円盤を蹴り落とし、空中で体を半回転させて桜の上半身に蹴りを入れる。
防御が間に合わなかった桜はチミーの一撃には耐え切れず、壁を突き破って校舎から外へ飛び出した。
桜を追う形で、空いた壁の穴から外へ飛び出すチミー。
それに続くように、結も穴から飛び降りた。
「桜!」
地面に落下し、倒れている桜にチミーが駆け寄る。
しかしその直後、横から飛んできた円盤がチミーの目の前を通って校舎の壁に突き刺さった。
チミーがエネルギーを検知し、背を反らせた事で間一髪の回避ができたものの、気付いていなければ確実に頭が飛んでいただろう。
「気安く...私の名前を呼ぶなァ!!」
「待って!話をっ.....」
怒りの声を上げた桜が放つ円盤を、エネルギー刀で弾きながら、チミーは必死に桜へ訴えかける。
しかしその声は、桜の耳には届いていない。
チミーのエネルギー刀を弾き、空いた懐へ突進を仕掛けようとした桜。
だが前傾姿勢を取っていた彼女は突然、後ろに下がって円盤を構えた。
直後、盾のように構えられた円盤が爆発する。
「ちぃっ!」
見ると、爆発を起こしたのは結のようだ。
彼女は杖を桜へ向けたまま、チミーに伝える。
「やっぱりそうだった。この子は、『呪い』がかかってる!」
結から放たれた、『呪い』という言葉。
どういうものなのかは分からないが、良くないものなのは間違いないだろう。
「『呪い』.....!?」
「それもかなり強力に固定されたものみたい。こんなもの、一体誰が....。」
やはり、桜はその『呪い』の影響でチミーを目の敵にしていたのだろうか。
結は『呪い』を解く解呪魔法を編むために急いで『呪い』の解析を始めるが、すぐに終わるものではない。
それまで時間を稼ぐのが、チミーの役目だろう。
襲い来る桜の攻撃をエネルギー刀で防ぎ、時には地面を蹴って空中で打ち合いを続ける。
そんな中で、チミーは『チーム』の皆に話した事を思い出していた。
6年前に確かに存在していた、桜の思い出を。
「桜ちゃんはね、まだ私があんまり皆と仲良くなかった時に、話しかけてくれた子なの。」
自分の事は二の次で、常に他人の事を考えているお人好し。
そんな桜の存在に、チミーは救われている面もあった。
今回の『呪い』も、誰かを庇って受けたのではないか、と考えるほど。
彼女は自分の心配を、つい後回しにする。
今の彼女を助けられるのは自分だけだ。
そうチミーは思っていた。
チミーは『永遠なる供給源』を発動し、さらに加速する。
一時は死を覚悟したほどの相手だが、相手が桜だと思えば力が湧いてくる。
今のチミーは、圧倒的に桜を凌駕していた。
3枚の円盤を軽々と回避し、桜に接近。
円盤を変形させて作り出した2本の剣と、チミーのエネルギー刀とがぶつかり合う。
「ぐっ!」
「桜!アンタが見ているものは偽物なんだよ!目を覚まして!!」
「皆を殺した上に、まだそんな巫山戯た事を言うのか.....!!」
チミーの必死の呼びかけも、今の桜には全く届かないようだ。
やはり結の解呪魔法の完成を待ち、無理矢理引き剥がすしか手は無いのだろうか。
少し離れた場所からエネルギーを感知。
ちらりと向くと、結がこちらに解析完了の合図を送っていた。
結はこれから、解呪魔法の精製に取り掛かる。
時間稼ぎも折り返し地点だ。
「アンタの弱点は、分かってんのよ。」
そう桜に言ったチミーは一度距離を取り、エネルギー弾を生成して連射する。
当然桜の円盤によって丁寧に防御されるが、想定内だ。
チミーは気にすること無く、続けてエネルギー弾を放っていく。
桜の能力は知っている。
『座標操作』。
チミーの『永遠なる供給源』が効かない理由。
いくらエネルギーを操っても、彼女の能力によって『座標』を固定されているため動かす事ができないのだ。
しかし念力のような恐ろしい能力へと変化しているとはいえ、今も弱点は変わっていないだろう。
真っ直ぐなもの、大きく弧を描いてカーブするもの、行ったり来たりフェイントを行うもの。
多種多様なエネルギー弾を放っていると、桜の円盤の動きに段々と遅れが見えてきた。
その様子を見て、チミーは確信を込めて呟く。
「やっぱりね。昔から変わらない...!」
チミーはエネルギー弾を撃ち続けながら動き出し、桜の方に向かって助走を始める。
「複数の座標を、それも長時間操るのはかなり負荷がかかる。....それは昔から、変わってないんだね!」
桜の目の前まで接近する事に成功したチミーはエネルギー弾を撃つのをやめ、両手でエネルギー刀を生成しながら振り上げた。
「くっ!!」
円盤が間に合わないと判断した桜は、自身の『座標』を書き換える事で瞬間移動し、その場を離脱する。
しかし、チミーは尋常ではないスピードでそれに追い付いていく。
振り下ろしたエネルギー刀が桜の肩部分に直撃する。
切れないような構造にしているとはいえ、エネルギーの塊をぶつけられたのだ。
桜は慣性のままに吹き飛び、校舎の壁に激突する。
「ぐぁっ...!」
「大人しくしておいて。...桜を傷付けたくない。」
そう言ったチミーはエネルギーでできた帯を生成し、桜の身体を拘束する。
縄のように締め付けられ、桜は身動きが取れなくなった。
ひとまずはこれで安心だろう、とチミーが安堵のため息をついたその直後。
周囲から、多数のエネルギー反応が出現した。
「ッ!?」
一斉に現れた、自分達を囲む大量のエネルギー反応に慌てて構えるチミー。
しかし、その一つ一つは大したものではなかった。
まるで.....『一般人』と同じくらいのエネルギー量である。
「これはっ...!?」
そう、『サムライ』の能力だ。
どこに潜んでいたのか、虚ろな目をした大量の一般人が学校全体を囲んでいる。
次の瞬間、『サムライ』に操られている人々が波のようにチミーの元へ押し寄せた。
「邪魔ッ.....!!」
チミーはなるべく傷付けない程度に一般人を吹き飛ばしていく。
大量の一般人とやり取りをしている間に、桜の拘束を引っ張る複数人の一般人が見えた。
手のひらから煙が出ていようとお構いなしに、桜の拘束を引きちぎろうとしている。
「なっ....!?」
あの拘束はエネルギーの塊。
下手に触れれば大火傷を負うくらいには高温のものだ。
それを手が焦げようとも触れ続けている様子を見て、思わずチミーは能力を解除してしまう。
しまった。
そう思った時には既に遅かった。
拘束から逃れた桜が、引き戻した円盤を掴んでこちらを睨んでいた。




