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いい返事、期待してますよ

この中で、ディーンという人物が何者なのかを以前から知っている者はチミーと二坂くらいだ。

特に二坂は、二度に渡って直接やり合ったという因縁がある。


そうあっさりと寝返ってきた事に、思う所はあるだろう。


「テメェ、俺との勝負はどうした。」

「いつでも相手してやっていいぜ?もちろん、お前が強くなってからでいいぞ。」

「なんだとぉ?」


ディーンの挑発に対し、眉間にしわを寄せた二坂。

そんな二人の睨み合いを無視し、チミーはどこからともなく『宝珠』の入った黒い球体を取り出した。

自分に向かって唐突に放り投げられた球体を、山瀬は慌ててキャッチする。


「おっ....と!これは慎重に扱うべき物だって言っただろう。」

「あ、そうだった。ごめんなさ〜い!」


反省する気のない表情で謝るチミーに、山瀬は困ったようにため息を吐く。

ともあれ、当初の目的である『宝珠』の奪還には成功した。

山瀬は『宝珠』を包む黒い球体を持って、『煙星』のリーダーの元へ詰め寄る。


「何故、これを博物館から奪ったんだ?」

「さっき言ったろ。変な格好の爺さんから貰ったんだ。『もう使い終わったから』とか何とか言って。」

「その老人はどこに?」

「ふらっと現れてふらっと消えたから、分かんないな。」


どうやら『煙星』は誰かから『宝珠』を渡され、そのまま持っていただけのようだ。

その様子から見ても、あまり関係があるとは思えない。


「そうか。」


山瀬はそう呟き、リーダーから背を向けた。

そんな山瀬を引き止めるかのように、リーダーが再び口を開く。


「ちょっと待ちな。一つ、交渉したい事がある。」

「交渉だと?」


リーダーから放たれた言葉に、山瀬が立ち止まって振り返る。

彼の表情を見て、リーダーはニヤリと笑った。


「俺達と、協力する気はねぇか?」

「...なに?」

「アンタら警察が人手不足なのは知ってる。訓練を積んだ精鋭とはいえ、俺達みたいな大規模な組織にこんな最低限の人数でかかってきたのがその証拠だ。」

「.....。」


リーダーの半ば確信を持った言葉に、山瀬は否定をすることができなかった。


「俺達はアンタらに力を貸す。代わりにちょーっとだけ、俺達に対する規制を緩めてくれりゃいいんだ。」


犯罪グループと手を組むなんて。

速攻で断ってやりたい所だが、今の警察に人手が不足しているのは事実。

加えて先ほどのような『能力を持たない者を操る能力』なんて奴が再び現れた時、対処できるかと言われると.....。


「.....一度、署長と話してみる。」

「いい返事、期待してますよ。」


山瀬は苦悶の表情を浮かべ、そう言葉を返す。

こうして、『宝珠』奪還作戦は終了。

後の事は警察達に任せ、用が無くなったチミー達は帰ることにした。


そして、翌日。


「っはぁーー!!!終わったぁーーー!!!」


夏用の制服姿のまま、警察署の『チーム』の部屋に来ていたチミー。

そこで課題を終わらせていた彼女は、伸びをしたあと力尽きたように上半身を机に倒れ込ませる。


ここに来た理由は至極単純、エアコンが効いていて涼しいから。

部屋内に設置されてある冷蔵庫を能力で開け、中にあったチューブ型のアイスクリームを遠隔操作で引っ張り出してくる。

椅子に深く背中を預け、チミーはアイスクリームをチューブの蓋を開けた。


「まさか、あいつの正体が桜だったなんて.....。」


チミーは昨日の出来事を思い出していた。

『マスク』の仮面の下は、チミーが孤児院で生活を共にしていた桜という少女。

あの事件に関する人物だろうとは思っていたが、まさか彼女だったとは。


混乱する頭を、喉を通るアイスクリームの甘さが中和してくれる。

それに彼女が言っていた、『貴様が孤児院に火を放った』という言葉。

あれほどの執念からして、単なる勘違いとは考えにくい。

しかし、自分が孤児院に火を放っていないという事はチミー自身が一番良く分かっている。


.....謎は、深まるばかりだ。




部屋に置きっぱなしにしてある漫画を読んで過ごしていると、静かな音を立ててドアノブが傾いた。

外から、山瀬が現れる。

まさか中に人がいるとは思っていなかった彼は少し驚きつつ、持っていたファイルを机に置いた。


「早いな?」

「学校終わってすぐ来たから。学校のエアコン壊れてるみたいで、暑くて暑くて。」


チミーは手をうちわのようにして仰ぐジェスチャーを行いながら、山瀬の言葉に返事する。


「この時期に故障は大変だな。.....君の能力で、涼しくする事はできないのか?」

「学校にいる間はずっと使ってた。ただ使い続けるのもヤだし、さっさとここに来たってわけ。」

「なるほどね。」


山瀬は相槌を打ちながらファイルを開いて書類仕事を始め、チミーも読書を再開する。

そんな中、再び扉が開いた。


「こんにちは...。」

「お邪魔するぜ。」


顔を覗かせたのはライカと、その背後にディーンが立っていた。

ライカを見て無邪気に手を振っていたチミーは、ディーンの姿を見るなりその手を止めて指をさす。


「なんで、アンタが?」

「私が呼んだんだ。」


チミーの疑問を待っていたかのように山瀬が即答。

聞けばディーンを『チーム』に入るよう勧誘していたらしく、先ほど玄関でたまたまライカと出会ったらしい。


「つーわけだ。よろしくな。」


ディーンは歯を見せて笑顔を作り、重みを持って席につく。

あれだけの巨体を支えているあの椅子が、少し可哀想に思えてきた。


「アンタには恩があるからな。『煙星』にも誘われたんだが、こっちの方がアンタの役に立ちやすいだろ?それに.....」


笑みを浮かべていたディーンは突然、真剣な表情に変わる。


「『マスク』について、話をしたくてな。」


その名を聞いたチミーも姿勢を正し、ディーンの話を聞く体制に入った。

ゴーグル越しでも伝わる真剣な表情に、ディーンが頷く。


「『マスク』はアンタを恨んでいた、とことんな。けど、今のアンタを見る限り、そこまで憎悪を抱かれるような事をしているようには見えねぇ。」

「うん。何かがあるんだと思う。」

「だから、奴の異変を探る所から始める必要があると思ってる。」


ディーンも、チミー達と接触するうちに桜の異変に気付き始めていたようだ。


「普段俺らはバラバラで動いているが、奴の位置は『神の目(ゴッド・アイ)』に頼めば分かる。問題は...」

「ちょ、ちょっと待って!?」


椅子から跳ね起きたチミーが大声を出して立ち上がる。

ディーンはキョトンとした顔でその様子を見ていた。


「なんだ?」

「アンタら、『神の目(ゴッド・アイ)』とも手を組んでるの?」

「あぁ。だが奴でも、『マスク』の素性は知らないと思うぜ。」

「あぁ...そういうことか....!くそっ...。」


チミーは最初に『鏡街』へ行った時の事を思い出していた。

神の目(ゴッド・アイ)』に『マスク』...桜の居場所を尋ねた際、彼は位置が分からないと言っていた。

そりゃあそうだ、協力者の居場所をホイホイと教えるはずがない。

チミーは理解できたからこそ悔しげな顔を浮かべる。


「...続けて。」


新たな事実に頭を抱えながらも、チミーはディーンに話の続きを促した。


「.....『マスク』と戦うのはいつだってできるってワケだ。ただ倒せた所で、アンタと奴との根本的な問題が解消されるとは思えん。」

「確かに。」

「奴の異変を探る方法を見つけないと.....」

「それなら、私にも協力させて。」


ディーンが話している途中に、新たな声が部屋内に行き渡った。

入り口を見ると、以前吸血鬼狩りの際に行動を共にした下風と結の2人が立っている。

言葉を発したのは、結の方だ。


「こんにちは。さっきの話、ちょっとだけ聞こえたわ。」


結と下風は山瀬に挨拶しつつ、流れるように席に座る。

ライカが気を遣ったのか、冷蔵庫に入っていた小袋のチョコレート菓子を2人の前に配った。


「超常現象を研究するのが私達の仕事。だからさっきの話が本当なら、調べてみる必要がありそうだと思ったの。」


下風が超能力の研究を行っていたのは知っていたが、結も似たような事をしている人のようだ。

以前は超能力ではない、魔法という概念を用いて戦っていた辺り、魔術関連の研究だろうか。


「その子を助けよう。一緒にね。」


結は頷き、そうチミーに言った。

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