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趣味悪そうな能力ね

3階。そこでは、既に先に上がっていた十名程の警察隊が倒れていた。

チミー達が駆け付けた先に立っていたのは、チミーよりも僅かに年上だろうと思われる1人の女性

彼女が、この警備隊を倒したのだろうか。


「いらっしゃい。私は『煙星四天王』の一人、百合ヶ丘(ゆりがおか) 美優(みゆ)。.....どう?私の『欠乏する空間サクリファイス・デッドゾーン』は。」

「.....趣味悪そうな能力ね。」


痙攣しながら倒れている警備隊を見ながら、チミーは不愉快そうに言葉を返した。

多数の警備隊を一瞬で倒すほどの得体の知れない能力を持つ百合ヶ丘に、チミーが前に出る。


「あら?貴女が戦ってくれるのかしら。」

「戦うんじゃない、倒すだけよ。」


チミーは『永遠なる供給源(エターナル・エンジン)』を発動。

腕を百合ヶ丘に向け、彼女の体内エネルギーを操作する。

見えない力で引っ張られるように、百合ヶ丘の体が宙に浮かんだ。


「!」

「おらぁぁぁっ!!!」


百合ヶ丘に向けた腕を大きく振りかぶり、反対側に叩き付ける。

床のタイルが弾け飛び、顔面に跳ね返ってきた瓦礫を手で弾く。


続けて腕を引き、さらに百合ヶ丘を動かそうとしたその時。

チミーは自身の体に、異変を感じた。


「.....っ!?」


体が、重い。

というよりも、全身に力が入らない。

腕を持ち上げる事も辛くなり、力が抜けて床に倒れ込む。

チミーに叩き付けられ、ボロボロになった百合ヶ丘が目の前に現れた。


息が苦しい。

大きく息を吸おうとしても、喉から先に空気が通らない感覚。

まるで首を絞められているかのような、そんな感覚がチミーを襲っていた。


「ふふ。白くて清潔なその肌。栄養も運動も十分そうで健康的な体。どう歪むかが、楽しみだわ。」


百合ヶ丘は頭から血を垂らしながらその場に屈み、チミーの顎を持って顔を持ち上げる。

チミーの苦しげな顔を見つめながら、百合ヶ丘は子供がアリの巣をつついている時のような無邪気な微笑を浮かべていた。


(体が...動かない.....息が...できない.....!)


動こうとすればするほど締め付けられるような感覚に追われていく。

頭もボーッとし始め、あまり働かなくなってきた。

百合ヶ丘はそんなチミーを見て勝利を確信し、微笑を浮かべて立ち上がる。


「残念だったわね。どれだけの豪傑や英雄だろうと、私の前では無力になる。それが私の能力よ。」


苦しげな表情のチミーとは対称的に、百合ヶ丘は楽しげな様子で話を続ける。

チミーの白い肌は青白く変化し、激しい吐き気が込み上げてきた。


「始めは頭痛や吐き気、集中力の低下。しばらくすると筋力が落ちてきたり、目眩めまいがする。そこからさらに行くと昏睡に陥ったり、最終的には呼吸が止まって死んじゃう。ま、流石にそこまではやらないけど。」


チミーは百合ヶ丘の説明が耳に届かないくらい意識が朦朧もうろうとしていた。

百合ヶ丘はただただ、チミーが気絶するのを待ち続ければ良いだけ。


しかし。


「ふっ...うく....」


チミーは残っていた僅かな力を使い、『永遠なる供給源(エターナル・エンジン)』を発動。

機械のように腕が動き、弾丸の如き凄まじい速度で百合ヶ丘の顎に拳が叩き込まれた。


「がっ.....!?」


強力な能力を所持しているとはいえ、百合ヶ丘本体は人間そのもの。

永遠なる供給源(エターナル・エンジン)』によって加速した拳を受けて、耐えられるはずがない。


顎部分を骨が折れるかのような勢いで殴られた百合ヶ丘。

脳がぐるぐると混ざるような感覚に襲われ、よろめいた。

視界が定まらず、バランスが保てない。


「アンタの能力は、『酸素』か何かでしょ?一瞬で酸素欠乏状態にして無力化させる。相手が私じゃなかったら、間違いなく強かった。」

「なん...で.....。」


チミーの言った通り、百合ヶ丘の能力『欠乏する空間サクリファイス・デッドゾーン』は『酸素』を操る能力。

酸素とはほとんどの生物が生きるために必要としているもの。

それを操作できるというのは、強力な能力だろう。


ただ今回は、相手が悪かった。


生物は何故、酸素を必要とするのか?

それは酸素が、「生物の体内でエネルギーを作り出す」手助けを行う役割を持っているからである。

例えば食物を体内に取り入れた際、酸素の力で食物を燃焼させる事でエネルギーを抽出する。

呼吸が酸素を取り入れて二酸化炭素を排出するのは、そういう原理だ。


酸素が無ければ、エネルギーを体内に取り込む事ができない。


『エネルギーを操り、直接吸収する』なんて事でも行わない限り。


「私の能力は『エネルギーを操る能力』よ。酸素不足で体が動かないなら、直接エネルギーを流し込めばいい。」

「そんな.....滅茶苦茶な.....!?」

「さっきのお返し、させてもらうね。」


動揺する百合ヶ丘に対し、チミーが指を鳴らした。


プツンと糸が切れるように意識が途絶え、ぐるんと目を回した百合ヶ丘は気を失う。

百合ヶ丘が行ったように、チミーは彼女の体内に存在していたエネルギーを抜き取ったのだ。


百合ヶ丘が気絶したことによって空気中の酸素が元に戻り、チミーは大きく深呼吸をする。

やはり直接吸い込む空気は美味い。

ニッと口の端を持ち上げ、両腕を上げて伸びをした。





そして、最上階。

そこには綺麗に整えられた金髪の男性が座っており、傍らには眼鏡をかけた高身長の男性が立っていた。


部屋にいたのは、その二人だけ。


「他の奴らはどうした?」

「みんな、もう既にトンズラしてもらったよ。一斉逮捕とかになると、敵わないからね。」

「.....捕まるような事をしている自覚はあるんだな?」

「たりめーよ。俺たちは、『煙星』だぜ?」


山瀬の言葉に、金髪の男が強気の態度を取る。

恐らくだが彼が『煙星』のリーダー格なのだろう。

椅子に座った状態のまま脚を組み、金髪の男が警察隊に問いかける。


「....で、一体何の用で来たんだい?」

「『宝珠』を返してもらいに来た。」

「......。」


男の視線が明らかに鋭くなった。

黙り込んだまま、指を小刻みに動かしている。


指を止め、ため息まじりに口を開いた。


「分かったよ。」


金髪の男は意外な返答を行うと、椅子に設置されていたスイッチを押す。

左側の床が開き、中から正方形のガラスが出現。

その内部には、光輝く球体が入っていた。

多彩な緑色に輝く球体に、一同は目を奪われる。


「変な老人から貰ったんだ。こんなレアもの、高値で売れるのに何で手放したんだろうな?」


続けて床から、その球体を挟むように2つの半球が現れた。

輝く球体よりも一回り大きいそれは、球体を包む形で断面同士合わさった。

光の球体は、黒光りする球体に封印されたのだ。


「『宝珠』用の容器(ケース)だ。普通の人が触れても、問題ないようになっている。」


男はガラスに手を突っ込み、中から容器に入れられた光の球体を取り出す。

彼らが『宝珠』と呼んだそれをしばらく見つめた後、開いていた背後の窓から投げ捨てた。


「なっ.....!?」

「奪えるもんなら、奪ってみな。」


金髪の男がそう言った瞬間、隣に立っていた眼鏡の男性が風に流される砂のように消滅。

窓から下を見下ろすと、そこには『宝珠』をキャッチする、先程の眼鏡の男性が。


アレを持って、逃げる気だ。


焦りを見せる警備隊を押し退け、ユウリが窓から外へ飛び出した。

柔らかい手のひらの肉球で衝撃を抑えつつ、体を竹のようにしならせて着地。

走ってその場を離れようとする眼鏡の男性を、全力で追いかけ始めた。

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