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負けるなんて、久々だからな。

こうも簡単に能力を教えてくれる所を見る辺り、少なくとも能力に自信があるのは事実。

彼の言っていることは、本当だと考えて良いだろうとライカは判断した。


「ほらほらぁ!!」


考えている間にも、龍豪寺は容赦なく距離を詰めてくる。

龍豪寺が放った横一文字の大振りを剣で受け流しながら踏み込み、大剣の上を滑る形で龍豪寺の脇をすり抜けた。


ライカが振り向きざまに腹部へ一閃するも、やはり効いていない様子。

大きく通った斬撃の跡など気にする様子もなく、龍豪寺はすぐさま大剣を切り返してライカの方へ振り切る。


「自然錬成系魔術『発風師(ディーロッド)』!」


ライカが魔術を唱えると、前方向....龍豪寺に向かって凄まじい突風が吹く。

しかしそれは龍豪寺に向けたものではなく、風の力によってライカが反対方向に吹き飛ばされるよう発動したものだった。

自身の魔術によって発生した突風の力で、龍豪寺の大剣から距離を取る。


「うおっ!」


龍豪寺は顔に打ち付けられる風に一瞬驚いた顔をする。

しかし焦ることは無く、すぐさま腰を落として脚に力を込めた後、思い切り地面を蹴った。


魔術によって吹き飛ばされたライカよりも速い速度で跳躍し、空中で剣を振るう。

ライカは空中で剣を構えて何とかガードするも、その圧倒的な力により強引に進路を変更させられ、吹き飛ばされてしまう。


「がっ...!」


壁に背中を打ち付けられ、呼吸が一瞬停止する。

衝撃によって発生した肺の違和感にたえつつ、ライカはふらふらと立ち上がった。

しかし、兜の下に見える目は闘志に燃えている。


「まだです....!化学錬成系魔術『牙山鉄火ギルボレッド』!!」

「無駄無駄ァ!!」


床に手を付いて発動された化学錬成系魔術。

地面から鉄の針山が生成され、次々に龍豪寺の身体へ突き刺さしていく。

しかし、龍豪寺は止まらない。


龍豪寺は全身に突き刺さっている鉄の針をへし折りながら、大剣を振り回して突撃。

ライカは構えた剣で大剣を流し、足を狙う薙ぎ払いを放った。

素早く大剣を引き込みライカの剣を弾いた龍豪寺が、体を半回転させつつ剣を握るライカの腕を蹴り払った。


蹴った足を前に踏み、その足を軸として更に回転。

腰に力を込めて上半身をひねり、回転を活かしたスイングを放つ。


「ッ!!」


甲高い音と共に火花が散った。

白銀に光るライカの鎧が大剣によって抉れ、裂けた穴から鎖帷子(くさりかたびら)が覗く。


ライカは魔術によって距離を取ったり、鍛え上げられた反射神経によって龍豪寺の攻撃を防いでいくも、攻撃に対して一切怯まぬ龍豪寺の猛攻を止めるのは厳しい。

消耗の差は歴然であり、ライカは徐々に追い詰められていた。


龍豪寺の剣を受け止めるも、凄まじい威力に耐え切れず再び吹き飛ばされるライカ。

しかし、彼女は再び立ち上がる。

必ずどこかに弱点があるはず。そう信じて。


「『無敵なんて存在しない、必ずどこかに弱点がある...』、もしかしてそう思ってるか?だったら無駄な考えだ。正真正銘、俺は無敵なんだからよ。」

「確かに、斬撃に魔術、何をやっても攻撃が効かない。『無敵の肉体』.....あなたの言っていることは、恐らく本当だと思います。」


両腕を広げて高らかに声を上げる龍豪寺の言葉を、ライカは静かに頷いて肯定した。

しかし、その声は『諦め』による声色では無かった。


「けど、その『無敵さ』こそがあなたの弱点だったんですね。」

「なんだとぉ?」


ライカが付け加えた言葉に、龍豪寺が首を傾げる。

無機質な兜の奥では、ライカは謎が解けたように晴れ晴れとした表情へと変わっていた。


「そうだよ。...『無敵』の能力者なら、うちにも1人いるじゃないですか。」


ライカは自分に言い聞かせるようにそう呟く。

『無敵』と言われている能力者.....『あらゆるエネルギー』、すなわち実質的に『あらゆるもの』を操る能力者であるチミーがいるではないか。

そしてチミーの弱点こそが、この男にも当てはまっていると予想したのだ。


「自然錬成系魔術...!『吸力草(ポーラグ)』!!」


龍豪寺に向けて手のひらを向けると、ライカの伸ばした腕から蔦のようなものが数本伸び生え、四方から龍豪寺へ襲いかかる。


「おっと!」


完全に脱力していた状態で少し焦った龍豪寺だが、1本目の蔦を落ち着いて回避してから大剣を構え、2本目を切り落とす。

大剣を薙ぎ払って3本目、4本目も切り落とし、横蹴りで5本目を蹴飛ばした。


「はぁっ!」


蔦に紛れてライカが剣を構えて接近。

無駄だと言わんばかりに仁王立ちでライカの連続攻撃を受け止め、大きく大剣を振り上げたその時だった。


「は....!?」


龍豪寺の体を斬った剣を通って、龍豪寺の上半身に蔦が絡み付いていた。

剣を握る左手からも蔦を生成しており、剣を伝って龍豪寺の上半身に到着させたのだ。

蔦はさらに勢いを増し、龍豪寺の丸太のように太い腕を覆う。


「『吸力草(ポーラグ)』。この草はその名の通り、『力を吸い取る草』です。」

「うぉぉぉぉぉっ......!?力がっ....抜けていく......っ!?」


上半身を覆った草が発光した途端、龍豪寺は自身の体に異変を感じる。

弛緩した腕は振り上げた大剣の重さに耐えきれず、その場で剣を下ろしてしまう。

後ろに下がりながら、自身に巻き付く蔦を引き剥がそうとする龍豪寺に、ライカが追加で魔術を唱える。


吸力草(ポーラグ)』が、追加で龍豪寺の身体へと巻きついた。

龍豪寺から吸い取ったエネルギーを養分として、吸力草は次々と根を生やしていく。


所詮は簡易的な『魔術』によって生成されたもの。

龍豪寺の力を全て奪うには程遠い代物ではあるのだが、龍豪寺は致命的な弱点を突かれていた。


それは『過剰損耗(オーバーヒート)』の存在。


超能力者が持つ、『超能力を使いすぎると体力を著しく消耗してしまう』という特性である。

通常であれば過剰損耗に至る事は稀な事例ではあるのだが、チミーのように強力な能力を有している場合は別。

高い電圧を与えているとバッテリーがすぐダメになってしまうように、肉体への負担は常人よりも遥かに高い。


それは『あらゆる攻撃が効かない』という強力な能力者である龍豪寺も、同じだ。


体に纏わり付く蔦をほとんど引き剥がし、再び大剣を握った龍豪寺。

しかし、その脚が前に出る事は無かった。


糸が切れるように倒れかかり、膝を付く。

びっしりと汗をかいているにも関わらず、龍豪寺は歯を見せて笑みを浮かべていた。


「ちくしょう.....もう、ダメだ。」

「その割には、嬉しそうですね?」

「ったりめーよ。負けるなんて、久々だからな。」


龍豪寺は地面に手を付き、ゆっくりと体を立ち上がらせる。

が、まだ力が戻っていないようで、ふらふらと後退した後、瓦礫に寄りかかる形で座り込んだ。


深く息を吐きながら、龍豪寺が尋ねる。


「嬢ちゃん、名前は?」

「ライカ・ベルベット。『鏡町騎士団』の、騎士です。」

「カッチョいい名前だな!俺の剣をあそこまで捌ける奴はなかなかいねぇ、覚えておくぜ。」

「...剣を捌くのは、慣れてますので。」


団長との一戦を思い出し、そう言ってライカは兜の奥でふっと笑う。

剣を収め、軽く肩を落とした。




一方その頃、2階。

ライカと同じように、突然出現した超能力と二坂とが睨み合っていた。

サラサラとした赤髪に、ピアスをこれでもかとつけた耳。

派手な見た目をした若い男性が、二坂を置いてさらに上の階に上がっていった警察隊を視線で見送る。


髪をかき上げながら、男は不満げにため息をついた。


「どうせなら、可愛い女の子と遊びたかったんだけど.....」

「構わねぇぜ。ボコボコに腫れた顔で、できるもんならな。」


相対する二坂が指を鳴らしながらそう挑発。

二坂がこの男と戦うために残った理由は至極単純。

なんとなく、その派手な見た目に嫌悪感を抱いたからだ。


「ま、こんな奴相手でも自己紹介くらいはしておこうかな。人間、最初の印象が大事だからね。」


男はそう呟くと、自身の胸を親指で指し、その名を名乗った。


「俺は弓浜ゆみはま 将大しょうだい。『煙星四天王』の一人だ。」

「『四天王』?」


二坂が聞こえた単語を聞き返すよりも先に、弓浜が動く。

右手を高く掲げると、虚空からプリントアウトされるように紅いガントレットが出現し、腕に装着された。

気付けば左手も、同じように紅いガントレットが装着されている。


「そいつが、テメーの能力ってワケか。」

「その通り。言っておくが俺は、結構強いぜ?」


二坂の言葉にそう返した弓浜は、ニヤリと笑って腕を構えた。

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