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俺はバレンタインチョコが欲しい

作者: チョコ貰えなくて鬱

チョコ貰えませんでした

2月14日。俺は、顔に背筋が凍るような笑顔を貼り付け、家を飛び出た。なぜ俺がこんなにも嬉しそうなのか、理由はバレンタインデーであるという以外人は思い浮かばないだろう。だが、これを読んでいる者たちの予想通り、バレンタインデーであるから、俺は喜んでいた。


俺は今まで他人からバレンタインデーにチョコを貰ったことがない。小学6年生の時に、クラスの女子という女子達にせがんでチョコを貰ったことはあった。あの時の虚しさを、今でも覚えている。あんなに心が痛くなったことは今まで全くと言っていいほど無かった。あんな思いはもうしたくない。


相も変わらず俺は背筋が凍るような笑顔を浮かべ電車に乗った。学校に着いたらチョコを貰えるだろう、そう信じて。


学校に着いた。そこにはいつもと変わらぬ日常があった。だが、何かが違う。何かがおかしい。いや違う、いつもと変わらぬ日常があるのがおかしいのだ。今日はバレンタインデーのはずだ。俺の机にはチョコがこんもり置かれているはずなんだ。だが現実は非常で、俺の机の上には、「無」だ。「無」が置かれていた。


芥川賞を手に入れられなかった。太宰治もこんな気持ちだったのだろうか。俺は失意と絶望に打ちひしがれながら、家に帰った。この非常すぎる現実から目を背けたくて、俺は目を閉じた。するとまぶたの裏には、懐かしきあの日がまるで録画のように再生された。


それは、小学6年生の時に勇気を出して5〜6個貰ったこと。それまではお母さんとおばあちゃん以外からは1個も貰えなかったこと...いや、待てよ、そうだ!お母さんだ!お母さんから貰えばいいんだ!俺はそう思い、母にチョコをもらいに行った。


だが、母は冷淡と、それでいて優しく、

「今年はチョコ用意してないよ」

...そう言った。終わった。何故だ。何故俺だけこんなにも苦しい目に合わないといけないのだ。神よ、我を許したまえ、そう神に祈ったが、やはり現実は非常、待ち受けているのは、チョコ0個という惨憺なる様だった。


俺は泣いた。ただひたすらに泣いた。こんな世界いらない、そう思った。だが、これが世界なんだ、そうも思った。俺は前を見た。ひたすらに前を見た。そんな時、ある言葉を思い出した。

「今日、敗者の君たちよ、明日は何者になる?」

それは、ハイキューという漫画のセリフだった。俺はハッとした。たとえ今日敗者でも、明日だ、明日勝者になればいい。俺は手を伸ばした。そこには、きっと輝いているであろう、明日が待っている。

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