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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

追放者スカウト業務

作者: 一ノ瀬 碧

追放者が溢れ出る世の中ですが、誰しもが自分の力だけで這い上がる事は出来ないと思います。

そんな時にこのような仕事の人がいたら助かりますよね。


「イマーク!お前を俺たちのSランク勇者パーティ【神々の剣】から追放する!!」


「そ、そんな!?どうしてだよ!みんなも何とか言ってくれ!どうして黙っているんだ!?」


 僕の名前はイマーク、今を時めくSランク冒険者パーティ【神々の剣】に所属している荷物持ちだ。このパーティはもともと、同じ村で生まれ育った幼馴染四人で始めたものだ。


 あの頃は楽しかった……みんなで冒険をして、新しい発見をして、ちょっとした小遣いを稼いで美味しいものを食べて、綺麗な景色を見たりして。


 しかしそんな楽しい旅は15歳の洗礼の儀までだった。15歳になると神々によって特殊な力が与えられる。その力を授かるのが洗礼の儀と呼ばれるものなのだが、これが僕にとっての悪夢の始まりだった。


 先ほど僕に追放を言い渡したのがこのパーティのリーダーであり、神々から【勇者】の力を授かったルフ。そんな彼の腕に抱き着いている美女は僕の元彼女で【聖女】を授かったハクティ。さらに反対の腕に抱き着いている【大魔導士】で妹のような存在であったエルオーネ。


 そんな1000年に一度と呼ばれるような伝説的力を得た三人に対して、僕ことイマークは【盾持ち】という地味なものであった。


 確かに力を得てすぐの頃は僕も役に立っていた。僕が敵の攻撃を悉く無効化してみんなを守り、ハクティがみんなの底力を上げ、その間にルフとエルオーネが攻撃をする。


 事実この戦法で何度も強敵を屠ってきた。だけどある時を境にみんなの力が強くなり、防御は必要のないものとなってしまったのだ。


 そして気が付けばあれよあれよとお荷物扱いされ、彼女だったはずのハクティや僕を兄のように慕ってくれていたエルオーネからも罵詈雑言が飛んでくるようになり、遂にはパーティから追い出されてしまった。手切れ金と言って軽い袋を投げつけた三人は、項垂れている僕を一度も振り返る事なく酒場から出て行った。


「ちくしょう、どうして僕だけ……仲間も彼女も……うぅ……」


 追放されたショックから酷い飲み方をしてしまった僕は泥酔しており、ずっと独り言を繰り返している。周りの人間たちも腫物を扱うように僕から遠ざかっていくのがわかる。どうして、僕だけがこんな目に……


「失礼します、勇者パーティ追放系幼馴染寝取られタイプのイマーク様でお間違いないでしょうか?」


「えっ?」


 音も気配もなく、その人は突然現れた。酔いすぎて幻覚でも見ているのかと思ったけれど、どうもそうではないらしい。


 何処かの偉い貴族や王族に仕えているのだろうか、汚い酒場には似つかないキッチリとした背広姿の男性がいつの間にか僕の前に現れて声をかけてきたのである。何故か顔がぼやけて良く見えないのだけれど、なんとなく彼の声には馴染みがあって落ち着いてしまう。


 というより、今この人なんて言った?


「あ、あの何か御用でしょうか?今はちょっと話をする気分じゃないんですが……」


「そうですよね、長年連れ添った幼馴染のパーティから追放された挙句、あのビッ……美しい女性二人から見放されてしまった直後ですからね、さぞお辛いでしょう。ただ性格のほうは酷そうなので、結婚せずに済んでよかったと思って明るくいきましょう」


「……」


 なんだこの人、全部の事情を知っている上で話しかけてきたのか。というかいくら何でも失礼すぎるだろう。しかし彼の言う事は全て事実であり、何も言い返す事が出来ない。


「それでは商品の説明なのですが……」


「いやいや!ちょっとは空気を読んでくださいよ!何も欲しくないというか、今のを見てたなら知ってるでしょう!?僕はもうお金も何もかも失ったんですよ!仮に欲しくても買う余裕なんてないですよ!」


「はい、稼いだお金を不当に奪われ続け、可愛い彼女にもあっさり捨てられて…残ったのは深くもない冒険者としての経験とぱっとしない防御力、あとは僅かな小銭のみ。辛かったねぇ」


「改めて他人に言われると余計に腹が立つんだけど……」


「しかし、そんなあなたにこそ!私共はお役に立てるのです!こちらをご覧ください!」


 僕の反論など聞く気も無いのか、何故か涙を流しながら彼はおもむろに取り出した大きな紙を机に広げる。一体なんだっていうんだ。こんな時に買い物なんて必要ないのに。


 まぁ、もうどうでもいいか。どうせ僕にはもう何もない。この人の好きにさせよう。しばらくすれば飽きてどこかに行くだろう。そう思って興味なさげに覗いた紙には、凡そ商品とは思えないラインナップが並んでいた。


「あの、これは?」


「こちらが弊社がご提供しております商品です。現在の一番人気は覚醒!美女救出からのざまぁ復讐もう遅いコースとなっておりますが……話の展開が早くてタイトルとあらすじだけで本編が終わっている事がざらなので大抵途中でお話が止まってしまうんですよ。」


「????あ、あの全然何を言ってるかが分からないんですけど!?」


「失礼致しました、それではご説明をさせて頂きます」


 彼の説明を一通り聞いた僕の混乱は更に大きくなっていた。なんでも彼の仕事は、僕のように裏切りや蜥蜴の尻尾切りなどの理不尽な状況に置かれた才能ある人間のスカウトをする事……らしい。


 なんとなくは理解出来たけれど、僕に才能があるとは思えない。確かに冒険者としてはそこそこの知識はあるけれど、できる事と言えば攻撃から身を守る事くらいだ。


「お客様の性格を考慮するに、復讐やハーレムコースはあまり望まれていないようですねぇ……そうなりますとモフモフ堪能!神獣珍獣大集合コースか、異種族との共存!建国、俺が国王!!コースなどもありますが」


「あの、まだちょっと分からない事ばかりで混乱しているんですが、そもそもどのコースにしても僕にそんな力はありませんよ?あなたもさっき言っていた通り、僕にあるのは防御の力だけなんですから」


「それについてはご心配なく、そもそも適正のあるコースしか見えないようになっておりますし、各コースに必要な技術や能力は弊社の教育担当がそれはもうきっちりみっちりと血を吐かせながら身体に教え込みますので」


 だ、だめだ!相変わらず何を言っているか全く分からない。もう面倒だし、適当なコースを選んで帰ってもらおう。


 そう思って紙を見た時に、一つ気になるコースを見つけた。異様に文字が小さくて薄くて見にくい、まるで隠すように書かれていたコース名を、思わず読み上げてしまったのである。


「追放者スカウトコース?」


 そう僕が口にすると、スーツの男性は一瞬だけニコニコ顔をやめて驚いていたようだった。しかし本当に一瞬であり、すぐに先ほどまでの笑顔に戻る。


「これはこれは、お客様はスカウトコースの素養も御座いましたか……こちらは訓練が特別厳しくなっておりますが一番やりがいのあるコースでもあります。かく言う僕もこのコースを受講したお陰で今の職業に就く事が出来ましたし、大変美しくて強い伴侶を得る事が出来ました。しかも元貴族のご令嬢ですよ?羨ましいでしょう?王族との婚姻を蹴って僕の元に来てくれたんです。あの時は終始振り回されてしまいました……ね?羨ましいでしょう?好きでしょ?ご令嬢」


 いきなり幸せオーラを出されても今の僕にはそれを受け止める余裕はない。それにしても追放者スカウトコース……ようするに今の僕みたいな惨めな人間を救う事が出来るのだろうか。


「つまり、今の僕みたいな人に声をかけて勧誘するのが仕事という事ですか?」


「簡単に言わせて頂けばそうなりますね」


「そうですか、じゃあもうこれで良いです」


「本当によろしいのでしょうか?一番やりがいがあるとは言いましたが、他のコースのように魅力的な異性たちのハーレムや権力、巨万の富は確定しておりませんよ?」


 また真面目な顔に戻った彼が念を押してくるが、僕はそういう言われ方をするとチャレンジしてみたくなってしまう性分なのだ。それにさっき彼が言ったように、復讐や王様なんて僕には似合わない。モフモフコースは少しだけ心惹かれたけれど。


「しばらく女の子も偉そうな人も見たくないですし、お金にも興味ないですから」


「畏まりました、それでは早速ご案内致しましょう」


「へっ?もう?」


 スーツの男性がそう言うや否や、僕の視界は一瞬ブレたかと思うと次の瞬間には見たことも無い場所に立っていた。何やら村のような場所であり、老若男女様々な人々が楽し気に話をしているのが見える。


「こ、ここは!?というより今のは一体?僕は酒場にいたのに……」


「この村に特に名前はありませんが、皆はホームと呼んでいます。彼らは皆、貴方のように追放されてしまい、目標を達成する道の途中にいる方々です」


「僕と同じ……あれ?本当に同じ?」


 思わず僕が指をさした先では、先ほどまで楽しそうに談笑していた人々が、空に大きな魔法を打ち上げたり、体の何倍もある魔物を担いで歩いていたりする姿があった。絶対に僕と同じではないと断言できる。まるで化け物の集落じゃないか、なんなんだあの魔法!?空が割れたのかと思ったよ。


「あぁ、教官職の方々は既に目的を終えた方々ですのでお気になさらず…それに貴方にも近い内にあれくらいの事は出来るようになって頂きます。とは言え、彼らは復讐コースや魔王討伐コースなどの力が主体の方々ですので、スカウトコースのイマーク様には護身程度に留めて頂いて、他の事を学んで頂きます」


「は、はぁ……」


「さて、村の面々への挨拶などは夜の集会の時に致しますので、契約書にサインを頂いて、さっそくトレーニングと参りましょう!ただ、本当に厳しい内容なので今ならまだあの酒場へとお返しする事も可能ですが?」


 なんだか最初に会った時よりも少しだけ楽しそうな彼の姿に戸惑いつつも、契約書とやらにサインをしていく。死んでも辞めさせないだの、逃げる事は出来ないだのと色々と書いてあったけれど、もうここまで来たら断っても仕方がないのでさらさらと書いていく。


「はい、確かに全ての記入を確認致しました。これで貴方もホームの一員ですね。それでは、さっそく開始致します!」


 この時の僕はまだ知らない。何度も何度も死んでは蘇り、身体がバラバラになっても丁寧に繋げられ、精神的に追い詰められても謎の力で回復させられ正気を取り戻すという生活を送る事を。


 比喩表現では無い、本当に肉体も精神も死んだりバラバラになったりするほどの修行だったのだ。しかも何も考えずにサインしてしまった契約書のせいで辞める事も死んだままにしてもらう事も、逃げ出す事も許されなかった。


 今となってはいい思い出……いや、そんな訳がない。ホームこそ、この世の地獄なのではないかと今も思っている。あの人たち、みんな笑顔で人当たりが良いのにいざトレーニングとなると笑顔で殺しにかかってくるのだ。その後の治療行為も、どちらかと言えば実験なのではないかというようなものばかりだった。


 しかし人間とは恐ろしいもので、そんな異常な状態も徐々に慣れ、というか本当はとっくに精神が壊れたのでは無いかと疑っているが……いつしか僕は免許皆伝を貰い、最初に出会った背広姿の男性と同じ、スカウト職を名乗る事を許されたのであった。


 結局僕の人生を変えてくれた恩人である彼の名前を最後まで聞いていない。まぁホームにいればまた会う事もあるだろうし、その時にでも聞けばいいや。




「フィリア・プランセス・レーギス!貴様との婚約を破棄する!!」


 スカウト業務に就いてから数年後、とある王国の舞踏会に僕は来ていた。この国の少年少女たちは身分に関係なく学園に入り、卒業時に王城で舞踏会が開かれる。そして今年はこの国の王子が卒業を迎え、本来であればここで王子とフィリア嬢は長年の婚約関係から正式に夫婦になり、結ばれるはずであった。


 しかし王子は在学中に他の令嬢に気を移し、最悪な事にその令嬢は自らがフィリア嬢にいじめられているという嘘の証言をして彼女を貶めた。既に王族の仲間入りを果たしたと思っているのか、下位の貴族たちまで無理やり従わせて仲間につけている。


 彼女の人柄を知っている人間からすれば嘘だとすぐにわかるような内容にも関わらず、一番長い時間を共にしたはずの王子は疑う事もせずにフィリア嬢を糾弾した。更には彼女の実家も王家との繋がりを失った事を責めて一族からフィリア嬢の名を消し、家を追い出したのであった。


 それどころか、あの王族はフィリア嬢との婚姻を破棄したにも関わらず彼女を狙っていた。というより、実家の後ろ盾を無くすためにあえて王子の好きなようにさせたのだろう。今の彼女を攫うのは赤子の手をひねるように容易いだろう。


 膨大な魔力をその身に宿し、見目麗しく気品があり、長年の妃教育にも耐えた優秀な女性。こんな逸材を王家が簡単に手放すはずがない。会場を出た彼女に向けて、追手がすぐに出された。

 

さて、ここからは僕のお仕事だ。


 王家の差し向けた追手は流石というか、厄介な手練れが多かった。しかしホームの皆に比べればなんてことはない。手際よく追手を無力化した僕はフィリア嬢を追いかけたのだが…既に実家周辺にはいないらしい。


 痕跡をたどって追いついた時、僕を見た彼女は何故か微笑んでいた。というよりも、こんな目にあったにも関わらず彼女は一度も涙を流していないし悲しそうな顔一つしていない。


 それどころか、追い出される前に家から金品を持ち出し、それを売り払って他国へと亡命しようとしているのである。まるで最初から準備でもしていたのかと思ってしまうほどの速さだった。最近の貴族令嬢はみんなこうなのだろうか、それとも彼女が特別なのか。


 このままであれば彼女一人で何とでもしてしまいそうではあるのだが、それだと僕の仕事が無くなってしまう。とにかく話だけでも聞いてもらわねば。


「失礼致します、婚約破棄、そして一族追放系貴族令嬢タイプのフィリア様でお間違いないでしょうか?」


「えぇ、フィリア・プランセス・レーギスと申します」


「え?えっと……」


 なんだろうこの子、他の追放された人たちに比べて随分と受け答えがしっかりしているというか、まったく悲しんでいる素振りが無いから調子が狂ってしまう。大抵は最初の頃の僕みたいに荒れていて話にならないか、敵だと勘違いされて攻撃されるんだけど……本当に調子が狂うなぁ。


「こほん、失礼致しました。実はそんな困った状況の貴女に商談がございまして」


「あら、助けて頂けるのでしたら大歓迎ですわ」


「はい、こちらをご覧ください」


 そう言って僕は懐からコース一覧表を取り出して彼女に手渡す。落ち着いた様子で紙を見ているフィリア嬢を見ていると過去の自分が大変取り乱していた事を思い出して何やら少し気恥しい。


 いや、でもこの状況で落ち着いている彼女のほうが変なのではないのだろうか?まるでこの状況を知っていたかのような落ち着きっぷりだ。最近の若い子は逞しいね。


「えっとイマ……そ、そういえば!貴方様のお名前をまだ聞いていませんでしたわ。私の名前は知っているようですが今一度自己紹介をさせてくださいまし。フィリア・プランセス・レーギスと申します、まぁもう既にただのフィリアになってしまいましたが」


「あっ、これはご丁寧にどうも。僕はイマークと言います、何らかの事情で追放されてしまった方をスカウトしております」


「ではイマーク様。こちらの用紙と先ほどの説明から察するに、ここに書かれているコースでしたら好きなものを選んでよろしいのですね?」


「はい!そちらの紙は魔法で作られたものでして、適正のあるコースしか表示されないようになっているのでご安心を!」


「あら!そんな魔法があるのですね。この大聖女や大魔導士コースなんていいですわね。それに頭脳は大人、身体は子供!人生やり直しコースなども気になりますわねぇ。どれも大好きな魔法が活かせそうで心惹かれてしまいますわ」


 すごいなぁ、僕もあの時落ち着いて対応していればこんな風に将来に希望をもって選ぶ事が出来たのだろうか。フィリア嬢が落ち着いて状況をスラスラ飲み込んでしまうので何も説明する事が無い。


 とは言え、自暴自棄になって選んだスカウトコースも結果としては悪くなかったから良いんだけどね。今までスカウトしてきた子たちも、みんなそれぞれに自分の思い描いた未来を歩んでいると感謝の手紙が届くのはとても嬉しい。魔王と王国討伐記念とか言って両方の折れた旗を持ってきてくれた子もいたなぁ。


「イマーク様、私決めました!」


「はい!ではどのコースに致しましょうか!」


 僕が少し思い出に浸っていると彼女はコースを決め終えたようだった。思っていたよりも早く決まったな。


 これだけ美人で中身もしっかりしていて、大聖女や大魔導士を目指せる魔力まで秘めていて、その気になれば人生を一からやり直せるコースまであるらしい。僕とは素材が違うんだろうなぁ、きっとどのコースでも人生が上手くいくことだろう。


「イマーク様の伴侶にしてくださいまし」


「へ?」


「ですから、ここに書いてあるイマーク様の伴侶コースに致します!」


「えぇーー!?」


 まてまてまて、何そのコース!?そんなコース存在するわけ……って本当に書いてあるんだけど!?しかもこれだけやけにでっかく太字で書かれている上に虹色に光ってるんだけど!?さっきまでこんなのあったか!?というかこんな目立つ表示をしたら悪質な誘導だと思われるだろう!?僕が用意したんじゃないからねこれ!?


 なにこれ!?というか僕の伴侶?お嫁さんになる……ってこと!?故障か?いやでも今まで一度だってそんな事は無かったしそもそも魔法に故障ってあるのか!?ということは本当に適性があるって事?というかお嫁さんの適正って何?家庭的とかってこと?それとも大黒柱の適正とか?確かに僕よりしっかりと稼ぎそうだけれども!!


 まずい、スカウトしにきた僕のほうが混乱させられている。今も昔も僕は常に惑わされる側なのだろうか。というか書かれていたからって普通それを選びますか?


 自分で言うのもなんだけどさっき出会ったばかりのあんまりかっこよくもない男だよ僕は。最近ようやく背広に着られていると言われなくなってきたくらいだよ?


「どうかなさいました?ここに書かれているコースでしたらどれも宜しいのですよね?それとも、やはり私のような一度捨てられた女は嫌でしょうか……明日からは貴族でもなくなりますし。」


「嫌じゃありません!ってそうじゃなくて!えっと……その、フィリア様は本当に僕で良いんですか?」


「はい」


「だって!今さっき出会ったばかりだし、お金だってそんなに無いし、顔も良くないし、こんな怪しい仕事をしているんですよ!?」


「自分の事なのに散々な言いようですわねぇ。確かに私たちは出会ったばかりですが、イマーク様の誠実な人柄は十分に伝わりました。お金も二人で働けばどうにでもなりますし……お顔だって、私好みのお顔ですわよ?」


「そ、そうですか。えっと、どうしよう……本当だったらホームに行ってトレーニングが始めなきゃいけないけど、僕のお嫁さんになるのにトレーニングなんて必要ないしなぁ」


 何とも想定外の事になってしまったけれど、正直な所こんなに良い子が相手ならばこちらからお願いしたいくらいだ。それにコースの紙に書かれているならば問題ないだろうし……よし、とりあえずホームに行って皆に紹介しよう。


「よし、じゃあ僕の家に……ホームに行きましょう!ちょっと転移して景色が変わりますが安心してください」

 

 そういうと彼女はすっと目を閉じて僕の手を取る。本当に肝が据わっているというかなんというか。


 ホームに戻るとやはり大規模な魔法が飛び交っていたり、魔物と肉弾戦をしていたりと相変わらずの風景が広がっている。フィリアさんはその様子を見て何故かニコニコその様子を眺めている。


「ここがホーム、追放された人たちの村です」


「えぇ、相変わらず綺麗な所ですわね」


「落ち着いていますね。僕なんて初めて来たときは戸惑いと吐き気で大変な……ん?相変わらず?」


「えっ!?そ、そうですわね!とっても驚きましたわよ!?あぁ凄い!最上級魔法がポンポン飛んでますわ!」


 落ち着いていたと思えば急に取り乱したり、飛び交う魔法に目を輝かせたりとコロコロと表情を変えている。何だか不思議な人だけど、一緒にいてとても楽しそうな人だ。


 今回は予想外の結果になった。もちろんいい方向になので何も問題は無い。これからも追放された人をスカウトしつつ、彼女と暮らしていく為にもより一層努力しようと決意を新たにした僕であった。



 追放者スカウト業務。

 それは理不尽な目にあった人々に新しい道を示し、圧倒的ハッピーエンドを作り出す者達である。


ここまで読んで頂いてありがとうございます!


勢いだけで突き進んでしまった作品でしたが如何だったでしょうか。

主人公イマーク君は仲間に振り回され、スカウトマンに振り回され、ヒロインにも振り回されと目まぐるしい人生を送っていますが最終的に幸せそうなので良かったです。

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― 新着の感想 ―
[一言] フィリア!貴様何者だ!
[良い点] 主人公もしっかり幸せになってとても面白かったです [一言] 最初のスカウトマンの人と同じ王族との婚姻を蹴って嫁に来た元貴族令嬢(優秀さから見てわざと破棄されるよう動いた疑惑が…)という偶然…
[良い点] ちゃんとハッピーエンドなところ。(^ー^) [気になる点] 主人公のその後や、 出来れば幼馴染たちの軽い末路とかも見たかったかな。(*^_^*) [一言] 面白かったです! これからも頑張…
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