8/14
八話
「いやーでも花火楽しみだなー、私初めて見るかも。」
「またその話?言っとくけどほんの少ししか見えないからね?」
一緒に見ると決めてから、夏海はずっとこんな調子だ。やれやれ、と言った態度を演じつつも私とて内心穏やかではない。初めて友達と見る花火はきっとかけがえのない思い出になるだろう。今から楽しみで楽しみで仕方がない。
それを知られるのが気恥ずかしい。ただそれだけだ。
「…あっ、そろそろ時間っぽい。んじゃあーまたあしたねー!」
「あーうんうん、また明日。」
いつものように診察の時間となった夏海を見送って私は小さく息を吐く。机に置いておいた小さなカレンダーを見つめる。約束の日まではあと一週間。
「たのしみだな…」
誰に聞かせるわけでもなく、私は小さくそう言った。