七話
外はすっかり夏の雰囲気に包まれている。熱気の影響で窓の外に見える空間すら歪んでいる気がする…がそんなものはこの快適な空間では関係のない話だ。夏が来ようと春が過ぎようといくら季節が巡ったところで自分には一切関係がない…。
とも、言い切れないのが今年の夏である。
昨日あの子は、私の友人は言ってくれた。一緒に花火を見ないかと…。
それに対して私は何もいえなかった。
「はぁ。」
言いたいこともろくにいえない自分が情けなくて思わずため息が溢れる。
嫌になってくる限りである。
「花火…か。」
一緒に見るのが嫌なわけでは断じて無い。断られるのが怖いとかそういうことでも無い。
ただ単純に…照れ臭いのだ。恥ずかしいことではあるが。
「千春ー!いるー?入るよー!」
「えっ?あ、うん!どうぞー。」
夏海のいつもの声が聞こえて私もそれに反射的に返す。それは心待ちにしていた声だ。
「千春ー!おはよー!花火どうするか決めてくれたー?」
しめた。向こうからこの話題を切り出してくれるなど、願っても無い話だ。あとは一緒に見ようというだけ…いうだけ…。
「あっ、…う、うん…」
なぜだろう。それだけのはずなのに、心臓の鼓動が速くなる。体の体温が上がるのを感じる。この気持ちは…なんだろう。
…。
落ち着いて。息を吸って。吐く。
「うっ、うん。いっしゃに…みよ…」
途切れ途切れだしかみかみだ…。
はずかしい…。
「うんっ!じゃあ当日は夜中にもここくるね」
そんな私を観ても夏海は笑顔でそう言ってくれた。頷いてくれた。
なのに、ドキドキが収まらないのはなんでだろう。