四話
昨日からずっと考えていることがある。
明日美空さんに会ったらどうしようかということだ。私はきっとあの子と仲良くなりたいんだ、そのことはたぶん向こうは気が付いていない。
いや、そもそも彼女は来てくれるのだろうか。昨日まであんなに冷たい態度をとったんだ。もう相手にしてくれない可能性もある。そうなったら…。
だめだ。その場合のことを考えるだけで動機が早くなるのを感じる。
怖いのだろうか、拒絶されるのが。私からは散々拒絶しておいて。
あやまろう。
会えた時にはきっと謝ることにしよう。
もしも…あえたなら。
「千春~今日もきーたよ!」
「っ!あ、な、、美空さん。」
その声に心から安堵をおぼえた。
よかった。きてくれた。そう感じるのはやっぱり自己中心的だろうか…。
そして、気がつく。
私、この子とお話ししたかったんだ…。
なのに私は…
「あれ?どうしたの?」
「あっ、あ、あ、いやっ、なんでもない…」
気がつくと美空さんが自分の顔を覗き込んでいた。顔が近い。
ついドキッとしてしまうのは何故だろうか。
「んー、そう?なんか元気ない?大丈夫?」
「う、うん」
心配してくれているのか…私のことを…。
言わなきゃいけない。ごめんって、謝らないといけない。
「あ、あの…美空…さん。」
「んっ、?どうしたの?」
心臓の音が外に漏れていそうなほどに動悸が早まっているのが自分でよくわかった。
「わ、私…その……き、きのう、まで、さ…」
喉が渇く。途切れ途切れになる言葉の続きをあの子は何も言わず待っててくれる。
「ごめんなさい…酷いこと…いっぱい言って…」
空気が静まる。やっぱり都合が良すぎただろうか…?
「…アッハハハハ!何それ、そんなこと気にしてたの?」
「えっ?」
美空さんはおかしそうにそう言った。
「そんなの気にしてないよ!本心からじゃないってわかってるし!」
「えっ?えっ?」
「あれ?気が付いてなかった?めっちゃ態度に出てたよ?」
そんなの…全然気が付いていなかった。顔が熱い。きっと今頃私の顔は茹でタコみたいになっていることだろう。
「じゃあ、そ、その…えっと…」
流石に、ここから先は厚かましすぎるだろうか…。
でも、言うんだ。
「すごい、厚かましあ、かもしれないけど…私と、友達になってもらうことは…可能、ですか?」
最後の方は声がカスカスになってしまった。まともに言えただろうか…?
返事はもらえるだろうか…。
「ふふっ、また変なこと言ってる…」
「友達っていつのまにかなってるものだよ?それに…お互いがお互いにもっと仲良くなりたいって思ってるならもう友達同士じゃん?」
美空さんは楽しそうにそう言った。
心につっかえていたモヤモヤがスッと腫れていく気がした。
「それと…私のこと、夏海でいいよ。千春。」
笑顔でそんなことを言われた…。
だから一度息を吸って。
「うんっ、ありがと。夏海。」
私はその名前を噛み締めるようにして口にした。