二話
私の名前は美空夏海。
最近というより…。ここに来て気になる人ができた。
それはこの病院に入ることになってという意味だ。その子の名前は中静千春、とてもかわいらしいいいこだ。私と同じで病弱らしい、というところにも親近感をおぼえる。
勝手な話だとは分かっているが、そんなことはどうでもいい。私はいつものようにその病室を尋ねる。
「千春ー。いるー?遊びに来たよー!」
千春はいつもと同じようにベットの上で本を読んでいた。
「…何しに来たのよ…美空さん。」
「んー、何しに来たはひどくなーい?せっかく会いに来たのに!」
冷たい風を装ってくるがしっかり閉じてしっかり体もこっちに向けてくれているところにはほほえましさすら感じる。
「会いにきたって何よ。お見舞い感覚?あんたも患者なのに?」
そう答える彼女の顔はほんのり赤い。顔をそらしてそんなことを言うあたり照れているのだろう。
「んー、まぁ別にいいじゃん!ねーねー!歳も近いでしょー?お話ししようよー。」
「うるさい。話すことなんかない。」
顔をそらしたままにそんなことを言われるが、もう三日ほど通っているのに出入りの禁止を言い渡されたりしないあたり、きっとそこまで悪くは思われていない…。とおもう。
「えーけちだなー。千春は。」
「呼び捨てやめてよ…美空さん。」
「私は呼び捨てでいいのにさ。」
一瞬言葉に詰まる理由を私は知っている、私のことを美空と、そう呼んでくれそうになったのだ。
いっそ呼び捨てでいいのに、私はそう思う。
「ねーねー千春はなんで入院してるの?」
「…。」
答えは帰ってこない…
やってしまっただろうか踏み込みすぐてしまった。
「ん。言いたくないならいいや。」
とっさに話をそらしてしまう私はきっとずるい。
「私はね。なんとかって言う病気なんだって。詳しくは知らないけど。」
「自分のことなのにそんな風なの?」
「まぁ別にいいよ。死んでないし。」
答えは返ってくる、その事実がたまらなくうれしい。
「お気楽なものね。」
「それくらいの方が楽しいからねー!」
.....うそだ。
「あ!私そろそろ検査の時間だから!行くね!」
「何しにきたのよ本当に…。」
「時間まで暇だったから!じゃね!」
彼女の部屋を後にする。私はうそをついてしまった。なぜだろうか。
もしも…。
もしも仮に彼女に真実を話したら…。
私はもう長くないとそう知ったら、ほんの少しでも悲しんでくれるのだろうか。