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十一話
大好きだよ。
「…なによ、突然…て、照れるじゃない」
花火に照らされた千春は恥ずかしそうに顔を逸らしてしまった。
きっと、私がこの子に向けているのは、友愛ではない。でもそれは…きっと今の私が伝えるべきことではない。
だから…。
「ありがとう。千春。」
空に、華が咲いた。
楽しい時間は、あっというまにすぎてゆく、それこそ、瞬きでもしている間に。楽しかった花火の
時間は、終わってしまう…。
「綺麗だったね…。」
「うん…。」
「きっと、いい思い出になるよね…?」
「…また、来年もみたいね。」
千春の言葉に、私は返事を返せなかった…。
不思議と、わかっていた。もう私に。来年は訪れない。もう私は…。
「んっしょっ。ふぅ…じゃあ、花火も終わったし。私はそろそろいくね。」
千春の隣から立ち上がり。扉にその手をかける…。
「夏海!!」
後ろから、声が聞こえた…
「…また明日、ね?」
私は振り返って彼女の顔を見ることが、できなかった。
顔を見せることができなかった。
「うん!またね。千春。」
私は、声を作って、彼女の部屋を後にした。