十話
「こんばんは。夏海…。なんか、夜にこうやって会うのは新鮮ね。」
「うん!こんばんはだねー。あ、花火はどう?」
いつものように私は夏海を迎えいれる、いつもと違うのは時間くらいのものだ。あたりの暗くなり始めたその夜中。私は彼女をいつも通り迎え入れる。
「そろそろ始まるよ」
夏海を手招きして隣に呼ぶ。夜野街を彩る光が、空の華を見るために、ぽつりぽつりと消え始める。
「私、初めて見るかも…花火って。」
「…私も、友達と見るのは、初めて」
ちょっと照れくさいけど、あなたに友だとはっきりそう伝えたかった。
「…うん。そうだね…私も、一緒。」
…あらかじめ電気は消してある。外の薄暗い中で二人で顔を見合わせる。
「ねぇ…千春…」
夏海が何かを言おうとしたその時…空に、華が咲いた。
「あ、始まった。」
「えっ?あ、う、うん…」
色とりどりの華たちが、夜空に浮かんで消えてゆく。
一瞬だけ美しく浮かんでは…消えていく…。
「まるで、私たちみたいだね…。」
「ねぇ…千春…」
「どうしたの?夏海。」
「私ね…」
「あなたのことが…」
「大好き。大好きだよ…。だから…。」
「ありがとう。」
窓から差し込む華の光が。私たちを照らしていた。