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異世界に来たらピアニストになった俺~しかし面倒事は拳で片付る任侠一家の跡取り息子の見聞録~  作者: みえだ
第5章 魔族領へ ~ピアニストと囚われの魔王~
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93話 夜会話 ライミィとの一時

響介一行、ネロの頼みを聞く。




 ステラの父親達の墓を荒らした人獣族(バカたち)をアーリーアント葬に処した響介一行。明日赴く魔族領に万全を期しておくため今日はもう休む事に、その時響介はネロに銃が納められたホルスターを手渡す


「おっ、ありがとなキョウスケ!」


 ボロボロになったマントを外し慣れた手つきでホルスターを装備するネロ。腕捲りをしたカッターシャツの上にブレストプレートを装備しパンツとブーツにオープンフィンガーグローブと3丁の拳銃入りホルスターと見るからに機動力重視の軽装だ。


「でもネロ。何で、3つもあるの?」


「え、ああ黒い魔銃(ウェブリー)は攻撃用で銀色のは回復用なんだよ」


「回復用、ですか?」


「そうだよ。魔銃(ウェブリー)は魔力の込めた弾丸撃って攻撃すんだけど治癒魔法を込めて撃つ事も出来てよ。だから間違えないように魔銃(ウェブリー)の色で区別出来るようにしてるんだ」


 銀色の拳銃を取り出してウェブリーと呼んだ銃の説明をしてくれたネロ。話しを聞くとネロが持ってる魔銃(ウェブリー)というあのリボルバーはダンジョンと化した遺跡から発掘された物らしい。

 ノルン大陸の3分の2程を占める魔族領には沢山の遺跡やダンジョンが存在しそこにはまだ多くの魔法道具(アーティファクト)を始めとしたお宝が手付かずで眠っておりネロの魔銃(ウェブリー)もその一つ、銃自体は人族国家にもあったがどうやら魔銃の戦闘に使う為の活用方法は長い年月を経て失われておりネロも魔王アルフォンスの居城にあった本の記述を元に復元したそうだ。


「以外~。魔族って魔法が得意だったりさっきの奴らみたいな脳筋だと思ってた。ネロって当てはまらないからさ」


 ライミィが率直な感想をネロに話す、するとネロは


「まあ、そう思うよな。俺ダンピールでさ、魔力もあんまりだし魔法もそんなに得意じゃないんだよね」


「ダンピール?」


「確か、人間と吸血鬼の混血だったか?」


「キョウスケよく知ってんな。そうだよ。ダンピールってのは人間と吸血鬼のハーフってやつだよ。一応魔族」


「一応?」


「人間との混血って知ると見下す奴もいてね、ダンピールは吸血鬼より力も魔力もないし見た目は人間だから舐められる。でも身体能力は並みの人間以上だし吸血鬼の弱点は全く効かないからいいとこもあるんだけどな」


 そう笑いながら喋るネロはふと響介を見ると


「でも俺、キョウスケに勝てる自信ねぇぞ」


「なんだよ不躾に、まるで人を化け物みたいに」


「いや、だって魔銃(ウェブリー)あっても撃った弾丸掴んで投げてきそうだし」


「「「それは分かる」」」


「君たち待ちたまえ」


 こぞって響介を人外扱いするみんなに響介は急かさず突っ込みを入れると笑いが起き一行は和やかな雰囲気となり今日はもう休む事にすると


「ネロは寝てていいぞ」


 ふと響介がネロに夜番の免除を告げる。


「えっ?いいのか?」


「お前のその様子から今まで大して休めてないだろう。夜番は俺達が回すからネロは寝てろ」


 この響介の言葉にネロは「ありがとな」と響介に聞こえるくらいの小さな声で言うとテントへ潜っていく。ここまでずっと神経を磨り減らしていたのか疲れが溜まっていたようで床に着くとすぐに寝息が聞こえた。


「やれやれ」


 ふと息をつく響介。そんなネロの様子に無茶してんだなと心の中で呟くと


「人の事言えないでしょ?」


 ライミィが反応して話しかけてきた。響介は声に出てたのかと思い反射的に口元を押さえたが


「いやキョウスケ喋ってないよ。でもキョウスケならそう考えてるかなって」


 そう笑いながら話すライミィを見て響介は思う。ライミィに隠し事は出来そうにないな、とそうしていると野営場所周辺に重力トラップを張り終わったエリーがライミィに聞いてきた。


「お兄ちゃん、顔に、出てたの?」


「そだよエリー。キョウスケは見てれば分かりやすいからちゃんと観察してればその内エリーも分かるようになるよ~」


「じゃ、エリーがんばる」


 ふんすと張り切る様子を見せるエリーを見て響介は自分の顔に手を当てながらステラに尋ねる


「なぁステラ。俺って顔に出やすい?」


「はい。前日習得した『視力強化』のスキルを使わなくてもある程度は判別はつきます」


「…俺もまだまだだな」


 心からそう思った響介はエリーとステラに先に眠る事を促した。






「なんだか久しぶりだね。こうするの」


 エリー達が眠り最初の夜番は響介とライミィ。遺跡前のぽっかりと森の開けた場所は淡く光る月が照らし虫の声も聞こえないくらい静寂に包まれパチパチと鳴る焚き火の音が良く聞こえる。


「ああ、本当だな」


 響介もライミィに同意する。2人で集落を出て旅を始めた頃こうして2人で焚き火をしながら夜を明かしていた。


「でも不思議だね、あの時からまだ2ヶ月ぐらいしか経ってないのに」


「そうだな。いつの間にか賑やかになったもんだ」


 思い返すと色々あり過ぎて濃密な2ヶ月だ。勇者に喧嘩を売りブタ箱に叩き込んだり、奴隷商人共に『お話』しエリー達を助けてエリー含め冒険者になったり、遺跡でステラをみつけたり、貴族に頼まれてピアノを弾いたりと、そして今度は魔王を助けに魔族領だ。


「始めはこんなふうになるとは思ってもみなかったよ」


「そうなの?」


「ああ、そもそも俺がピアニストになろうと思ったのもピアノを弾いて気の向くまま旅をしたいなって思ったからなんだ」


 実際、旅をしたい口実として手に技術をと思ってピアニストの才能を願った響介。そもそも任侠一家の跡取りとしても学生としてもやることが沢山あったこともありその反動か自由気ままな旅というものに憧れていた。そして出来れば腕っぷしに頼らずにお金を稼ぎ世界を見て回りたいと思った。だが


「結局はどんな世界だろうとヒトの根本ってのは変わらないんだな」


「根本?」


「差別意識だとかかな。向こうだと人種差別っていって同じ人間でも肌の色で差別があったんだ。この世界でいう所のエルフとダークエルフだな」


「あ~、成る程、確かにそだね~」


「そうじゃなくても目の色だとか実家の事でもやんや言われてたのもあったし、何かと他人より優れているところを見つけてマウント取ろうとしようとするところとかもな、まあ俺は弱いヒトが虐げられるのを黙って見てるのは嫌いだ」


「……」


「時々思うんだよな。俺のやってる事は要らぬおせっかいなのかって、中途半端に強い事をひけらかして粋がってるだけなのかなってさ」

「それはないよ」


「え?」


 ライミィの思わぬ即答に呆気にとられる響介は思わずライミィを見る。


「それはないよ。だってキョウスケがいなかったら私もエリーも酷い目に遭ってただろうしステラだってあの変態達に連れていかられてたろうしで全うな事にはならないよ」


 変態達とは確かウィクルとかの事だろうか、まぁ確かにマント羽織って水着みたいに露出してる鎧みたいのを着てたからどっちかと言うと露出狂だろうかと一瞬考えてしまった響介。


「そもそも響介はひけらかしてないじゃん。むしろ調子に乗って粋がってる奴をしめてるだけであって弱いヒトだったり悪くないヒトには絶対手を上げずにまず話そうとするじゃん。中途半端に強い奴は話そうとしないよ。だって自分の力を悪用して脅して言うこと聞かせればいいんだから」


 実も蓋もないがライミィの言っている事は正しい。そんな奴らは元の世界でも腐る程いた。そう考えていると


「おわっ?!」

「ん~ふふっ♪つっかまえた♪」


 いつの間にか元の姿に戻っていたライミィに捕獲された響介。白い蛇の体をしっかり巻き付けられて後ろ抱きの体勢でしっかりと抱き締められる。


「キョウスケは優しいし自分に厳しいから色々考えるのは仕方ないよ。そういうとこも好きだから私はいいけどね~」


「ライミィ」


「それに、キョウスケみたいな本当に強いヒトはまず話そうとするんだよ。何でか解る?」


「何でか、か?」


 少し考える響介。この間近いことを聞いたような気がして記憶を掘り返すと


「それって、確か魔法の訓練の時の奴か」


「キョウスケが言ってた『己を知りうるものは賢者なり』だよ。キョウスケは自分の持ってる力をちゃんとわかってるからまずちゃんと物事を理解しようとして判断材料を集めるでしょ?」


「そうだな」


「でも粋がってたり過信している奴はちがうよ。自分の得の為に物事を自分の都合の良いように解釈して横暴になって他人の話を聞かなくなるの」


「例に上げるとあの聖女か」


「そだね~」


 丁度良い悪い見本が有り納得し笑う2人。今となっては2人にはあの自称聖女は良い反面教師でしかなく響介もあの視野の狭さは呆れておりライミィは言うに及ばず


「ありがとうライミィ。それとごめんな」


「ふぇ?なんで謝るの?」


「なんだかずっとこう考えてたり悩んでたりしてるのが、な」


「別にいいじゃん。ぶっちゃけ私はキョウスケみたいに考えられないし、それにキョウスケは出来ない事は出来ないってハッキリ言ってくれるしちゃんと考えてる事とかを話してこうやって頼ってくれるから私は嬉しいよ」


 ふふふっと笑い焚き火を調節するライミィ。焚き火に照らされた柔らかく暖かい笑顔を見て笑う響介はこれから始まる戦いを前に響介は決意を改め、新たな決意を追加するのだった。






「よし、ネロ頼む」


 翌朝。ステラが作ってくれた朝食を食べて綺麗に野営を引き払った響介達はネロに魔族領の転送を促しす


「ああ!その前に」


 ネロは一行の前に進み頭を下げる。


「協力してくれて本当にありがとう。魔族領にいる間は出来る限りみんなの身の安全を」

「ああ、その辺りは気にするな。実力主義なら実力を示せばいいだけだ。な?」


 響介の言葉にライミィ達は頷く。3人共やる気に満ち溢れているようで気の入りようが違った。その響介達4人の様子は敵地にカチコミを掛ける鬼人族のような迫力を感じたネロは安心したようで


「みんななら大丈夫だな!分かった!じゃあ割るぜ!!」


 ネロは自分達の足元目掛けてリタンスフィアを叩き付けると粉々に砕けたその瞬間に足元に魔方陣が浮かび上がり転送が始まる。響介は不敵に笑い呟く


「さぁ、今度はこっちからお礼参りに伺わせて貰おう」




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