90話 建国祭9 素敵な言葉の贈り物
響介一行、ロンに落とし前をつけさせる。
「そう、今この時が新しいアルスの始まりなのだ!」
わぁと歓声が上がり惜しみ無い拍手が会場を埋め尽くすリベラル劇場。
メアリーさんとの約束でみんなで劇団ロンドターブルの演劇を見に来ていた俺達。
建国祭期間最後、日本でいう千秋楽に当たる今日の公演は沢山の観客が入ったようで劇場は超満員らしい。
らしいというのも俺達はメアリーさん達の計らいで貴族専用のバルコニー席から公演を観させてもらっていたから良く分かっていなかったりする。ライミィもエリーもステラも楽しんでいたみたいで良かった。メアリーさんやランベール卿には感謝しかない。
今も拍手が続き俺達も観客と共に拍手を劇団に贈る中俺はふと振り返る。いやぁ大変だったなあの後。
話はロンに落とし前をつけさせた直後の事だった。あの後報告に行こうとしたんだがそこに避難していたであろう沢山の住民達が戻ってきてしまったんだ。ライミィも元の姿のまんまだしいつの間にかエリーも護符を解除してたみたいで俺は3人担いで逃げようと動こうとした時突然男の子に指を差され
「ガルーダ様だ!」
…はい?ガルーダ様?何それ?男の子の言ったガルーダ様と言う単語が分からずライミィ達に視線を送るがみんな困惑している。そうとは知らずに
「おお、ガルーダ様!」
「我らをお救いしていただきありがとうございます!」
「ガルーダ様!万歳!」
まるで意味が分からんぞ!?俺達4人が更に困惑しているが住民の皆さんは俺達そっちのけで
「でも、本当にこのお兄さんが?このお兄さんってピアニストさんじゃ…」
「ほんとだよ!ボクみたもん!」
「もしかしたら、この方はガルーダ様の生まれ変わりでは?」
「いやいや!この世に忍ぶ為のガルーダ様の仮初めの姿なのではないのか!?」
…なんだろう、どんどん話が飛躍してるよな?頼む、誰か説明を!説明をしてくれ!!俺達の困惑が加速していると
「皆さん!ご無事ですか!?」
メアリーさんとメイドさん達が来てくれた。
本当に助かった。マジで。
住民の皆さんが盛り上がる中俺達はメアリーさん達に皆さんが言っているガルーダ様の説明を求めた。
そして説明から10分、メアリーさんからの説明で大体理解出来た。ガルーダ様というのはアルスの伝承に登場するかつて邪神がけしかけた邪龍を焼き払い民を救ったと云われ地母神ガイアに仕えたとされる伝説の霊獣らしい。アルスでは多くのヒトに読んでもらう為に幅広く脚色した本がいくつも存在しアルス国民に親しまれているそうだ。諸説よるがどの本にも紅に輝く翼が特徴的に書かれておりその炎はヒトビトを照らすとさえ言われているそうだ。
……って、ちょっと待ってくれ。てことはさっき俺が出した朱雀翼をそのガルーダって霊獣の翼と勘違いしてるのか?もしかしなくても思っくそ誤解されてるよな?
「あ、あの取り敢えず落ち着きましょ?ね?」
ライミィが何か察したらしく集まった住民の皆さんに呼び掛ける。
ああ、ライミィの優しさが心に染みる。
と思ったがそんなこと考えてる場合じゃねえ!ライミィ元の姿のまんまじゃねえか!?
「あっ、霊獣様の花嫁様!」
「は、花嫁!?」
女の子からのまさかの思いもしなかった一言で顔を真っ赤にさせるライミィ。
待って君、俺の事霊獣様って呼ぶの止めて?それに真っ赤になってたライミィだったが様子が変だ
「え、えへへ、キョウスケの花嫁、えへへ~~」
…真っ赤になってたのはおもいっきり照れてるのか、花嫁と言われてものすごい幸せそうに笑うライミィに困惑していた俺もつい表情が綻んでしまう。
ってか皆さんライミィやエリーの姿見てもなんも言わないがどういう事だ?
…まさか、俺が霊獣ガルーダの生まれ変わりだの仮初めの姿だのの話題でライミィ達の素性は『些細な事』扱いされてるのか?いやいやまさか
「霊獣様のお側にいらっしゃるんだ!きっと特別な方々に違いない!」
「それにそのラミアの姉ちゃんは俺達を霊獣様と一緒に守ってくれたじゃねえか!種族なんて細かい事を気にする必要ねえ!」
「そうよ!ガルーダ様に見初められるのだから人間じゃなくても不思議じゃないわ!」
些細な事扱いじゃねえか!不味い、騒ぐからどんどん人が集まって来やがった。
頼む、集まって来るのは100歩譲るから俺をそんな神様を拝めるような目で見るのとお祈りは止めて。そんな立派な人間じゃねえし何よりもこっぱずしい!俺の願いが届いたのかこの後ランベール卿達が来てくれ事情聴取という名目でみんなとその場を離れる事が出来、その日は行政区の騎士団本部での聴取で終わった。
そして翌日だ。ライミィ達は先に解放され、ようやく聴取から解放された俺はランベール卿の別宅へ戻ったときの話だ。その時はもう時間で言うと昼を回っており
「あっ、キョウスケおかえりー!」
帰って来た俺を見て変身を解いて全身を使って抱きついて出迎えてくれるライミィ。集落にいるときはいつもこうしてくれて最初は恥ずかしかったが今では安心感を感じるまでにある。しかし俺の目にある光景が飛び込んだ。
「なあライミィ、あれは?」
俺が見たのは沢山の食べ物やアイテム、魔導書を始めとした様々な本。果ては魔法道具まである。今日の今日で沢山買い物でもしたのかと思ってたらライミィが尻尾で差しながら
「えっとね、エリーとステラと3人でお買い物してたんだけど行き先々でお店の人が『霊獣様の花嫁様達からお金なんて頂けません!欲しい物があるならなんなりとお持ちください!』って」
「だから、いっぱい貰った」
…なんてこった。ある種の恐れていた事態になった。人の善意をキチンと受け取るライミィ達は勿論無下に断るなんて無礼な事はしないし何よりも断らないだろう。
むしろここはこの御厚意をちゃんと受け取るべきなのだ。大切なのはアフターケア、それに今そのお題目に相応しいネタがある。
「ステラ、頂いた店は覚えているか?」
「はい、記憶しております」
「エリーも、覚えてるよ?」
「私もー」
3人から回った店の名前を地図で見ながら確認しランベール家の使用人の方に先日の事件での被害を教えてもらいその間に頂いたものの値段を計算した。そして1時間後俺は執務室にいるランベール卿を尋ねた。メアリーさんにも聞いてもらいたく同席をお願いし
「どうしたんだいキョウスケ君、話とは?」
おもむろに俺はランベール卿に合計金貨3万枚が入った袋と1枚の紙を差し出すと驚きの表情を浮かべるランベール卿に
「此度の被害に対して復興支援として援助させて貰いたいんです」
俺の申し出にはランベール親子は驚愕の余り揃って声を上げた。今回の事件、被害は最小限に留められたがそれでも街が破壊されたりと少なからず被害は出てしまっている。ランベール卿は証拠が揃い次第アルスはオウレオールに対して損害賠償を請求する方針だと昨日行われた緊急会議で決まり建国祭後に本会議で決議を取るそうだ。
今でもオウレオールのトリウス教会がロンの事を勇者だと認めている事はセフィロトの調査で判明しておりあの時の聖女達との会話も全部ステラがサウンドセーバーに残しているためそれらを俺達は証拠として提出した事からアルス側の請求は認められるだろうとの事だ。
ただ、請求が認められても直ぐに払われる訳ではなく時間が掛かる事は想像出来る。だからと言って金銭面が理由で復興が遅れては埒があかないというものだ。それに俺達は街の人達から今後の旅で必要な物をいっぱい貰ったということもありライミィ達と緊急家族会議を開いてアルスに寄付する事にした。
「でも、こんなにもの大金を本当によろしいのですか?」
「ええ、ライミィ達とはさっき家族会議を開いてみんなで決めましたから大丈夫です。それにまだ残してますから」
「だとしても、こんなにもの金貨をどうやって」
「レイドグランドドラゴンの報酬です」
それを聞いて2人は「あー」と言わんばかりの理解した表情をした。何よりメアリーさんも食ってるからなぁ、あのドラゴン
「それとこの紙は何かのメモみたいですが」
「その紙はその寄付金の中でも『復興給付金』として渡して欲しい店をリストアップしたものですよ」
それを見たランベール親子は合点がいったような表情をし快く了承してくれた。勿論リストアップした店は俺達にアイテムをくれた店だ。今から払いにいったところで決して受け取らないのは目に見えている。寧ろもっとどうぞと言われかねない、しかし国からの援助金ならどうだろうか?諸々の損害の補填を国がみてくれるならありがたく受け取るだろう。こういうのは持ちつ持たれつの関係が大切なのだ。
と、こんな事を一気にやったから本当に大変だった。昨日一昨日を振り返りながら演劇を見終わった俺達はみんなでランベール卿の別宅へと戻る。
「楽しかったね~」
「うん」
演劇を振り返りながら元の姿に戻るライミィと護符を外すエリー、ライミィもエリーもあれ以来ランベール卿の別宅にいるときは元の姿に戻って生活している。というのもメアリーさんからの提案だ
「私の大切な友人に気を遣わせたくありませんわ。だから此処にいるときはお気がねなくお過ごしくださると嬉しいですわ」
すっかり仲良くなったようで俺も嬉しい。ライミィはそもそも穏やかで社交的な性格だからあの聖女共みたいに敵対姿勢を取らないなら誰とでも打ち解けられるからな、楽しそうにライミィとメアリーさんが話している横で
「エリーさん、今度はこちらの服は如何ですか?」
「ちょっとアン!こっちのドレスの方が似合いますよエリーさん!」
「何言ってるのアニー?エリーさん、こちらのワンピースは」
「しれっと抜け駆けしないのリベラ」
エリーがメアリーさんのメイドさん達に囲まれ着せ替え人形みたいにされていた。エルフから忌子と言われ迫害の対象にされているダークエルフではあるがエルフ以外からは特に忌み嫌われていると言い訳ではないようでラミアと並んで容姿に恵まれた種族らしく、特にエリーは表情で現れない掴み所の無い所が見た目と相まって神秘的な子とランベール家のメイドさん達からは人気だ。そんなところへ
「相変わらず賑やかだな」
「邪魔するよ~」
ロイジュ侯爵とその息子のライアン騎士団長とリアム魔導師団長、それとリノさんが訪ねて来た。リノさんがライミィを見て
「ライミィ、やっぱりラミアだったんだねぇ」
やっぱり?あの時の行動を見るにリノさんのライミィの素性に気が付いていたようだ。
「えっ?気付いていたんですか?」
「クリスが言ってたからね、初めて会った時にラミアのアミュレット付けてたって」
ああ、そう言えば確かにラミアのアミュレットの注意をセフィロトの構成員から言われる前にクリスさんと会ってたな。成る程、ラミアのアミュレットはSランクの魔法道具だから元A級冒険者のクリスさんは知っていても不思議じゃないって事か
「リノリノ殿、知っていて放置していたのですか?」
「ああ、アランが言ってたからね。ライミィの嬢ちゃんがらみになるとキョウスケがヤバいって」
このリノさんの一言で皆さん(ロイジュ侯爵を除く)が「ああ…」と言いたげに俺を見ていた。なんかあったっけ?
「だからあたしは先にクリス達の話しを聞いてたから様子見てたのさ、話で聞いてたラミアと全然イメージ違うからさ」
ああ、そういやあったな。俺もオリビアさん達から教えて貰ったから覚えてる。すると
「いやぁ、合ってるとこ合ってるからさぁ強くは言えないけど」
ライミィが口を開いた。まぁこれは皆さんライミィの口から実際のラミアの事を聞きたいだろ
「合ってんだね」
「そうですよ。そもそもラミアって種族なんですけどまず女の子しかいないんです」
「そうですわね、男のラミアがいたというのは聞いたことありませんわ」
「それでどうやって子孫を残すかってなったら大抵の場合人間に化けて街で行きずりの人と寝て赤ちゃんを作るの」
これには皆さんびっくりで特に男性陣は驚愕してる。俺も始めて聞いた時はびっくりしたのを覚えてる。ちなみに今
「お兄ちゃん、なんで、エリーの耳、抑えてるの?」
エリーに聞こえないように抑えている。流石にエリーには早い
「それで産まれた赤ちゃんをみんなで協力しながら育てるからもうそのラミアのグループは家族みたいなものなんです」
「ふんふん」
「要はその家族同然の仲間に手を出されたらって話ですよ。ランベール卿だってまたメアリーさんに手を出されたらどうしますか?」
「無論、地獄に叩き落とす」
綺麗なまでの即答だな、ロイジュ侯爵が笑っているがまぁ当然と言えば当然か
「そういう事です。仲間意識が強い分その報復を全員で徹底してやりますから多分狡猾で無慈悲って話はここから来てますね」
「成る程ね、誇張されてんのかい」
「仲間意識が強い部族に見られる傾向ではありますね」
「次の男を喰い物って話は、ラミアは女の子しかいないって話しに戻ります。これは確かお母さんが産まれる前の話しらしくて、あるラミアの集団が子孫を作る為に男をさらってたみたいなんです」
「人さらいって事は…」
「その先を言うんじゃないよライアン」
「言いませんよ!」
「それがバレてそのラミアの集団は皆殺しになってその後ラミア狩りがあった話が元で、それが原因でラミアはみんな男を喰い物にするって言われてますね」
「実際は違うんだね」
「違いますよ!そういうイメージしかないから説得力ないかもしれないけどそもそも私達ラミアは無駄な争いは嫌いで一目につかないとこで暮らしてますから」
「それならライミィはどうして旅なんかしてるんだい?」
「それは…」
リノさんから疑問を投げられたライミィは急に顔を赤らめながら
「?」
「キョウスケと一緒に居たかったから、ですけど」
ライミィのこのいじらしい態度にみんなが俺を見た。全員が揃いも揃って生暖かい目で見てくるから内心恥ずかしかったが
「そこでキョウスケが出てくるのか?」
「はい、男達に襲われてる所をキョウスケに助けてもらって、それから一目惚れですね」
「そもそもライミィの嬢ちゃんとキョウスケって何時から一緒なんだ?接点が分からないんだが」
そこにロイジュ侯爵が聞いて来た。そうだよなそこが気になるだろうな、ただ俺も全部が全部正直に言う訳にはいかないからこの間のエリーの時の説明みたいにはぐらかしながら言う事にしよう
「自分元々別の島国にいたんですが空間魔法に巻き込まれてしまって気が付いたらライミィ達の一団が暮らしてた森の近くに飛ばされたみたいなんです」
「「「はあ?!」」」
これには皆さん驚きの声を上げられた。まあそうなるな、でも取り敢えず話は続ける。
「それで、ライミィ達の集団に1ヶ月位お世話になりこの大陸の事を教えてもらって旅をしているって事です」
「はぇ~」
「どうやらキョウスケさんも大変だったんですね」
「これくらい世話ないですよ。それにラミアの皆さんも皆さんいい人達でしたし、結構楽しかったですよ?」
「えっ?不安は無かったのかい?」
「全然、自分自身現状を確認したかったのもあったのとなにより皆さんすごい話が出来たので気にしなかったですね」
「ああ、成る程」
「話が出来る、か」
「はい、自分が一番大切にしてる所ですね。おんなじ人間でも話しが出来ない奴もいますし、自分は話しが出来ない同族よりも話しが出来る別の種族と仲良くしたいですから」
この俺の言葉に聞いていた皆さんが神妙な表情をした。変だったか?
「変ですかね?」
「いや、意外だっただけさ。でもなんでそう考えてるのかは気になるけど」
「人間でもどうしようもないクソ野郎っているじゃないっすか?そういう野郎は掃いて捨てる位見てきてるからですよ」
「こう言ってますが、キョウスケさんってお嬢様と年は変わらないですよね?」
「ええ、確かキョウスケさんは私の2つ程年下のはず…」
「「「「は?」」」」
いきなりリノさんやロイジュ親子が俺を見てきた。こんなことオロスでもあったなぁ
「キョウスケ、あんた何歳だい?」
「17っす」
「「「「嘘だろ?!」」」」
綺麗なデジャブだな、うんもう慣れた。
「嘘だろ!?17でそんな体格って詐欺だろ!?」
「キョウスケ殿を騎士にスカウトするべきか…?」
「いや、ピアニスト殿いろいろ有望過ぎるぞ…」
「キョウスケさん、貴方今までの人生で何があったんですか…?」
なんか色々言われてるが中でもロイジュ侯爵が鋭い疑問を口にした
「17でなんでそんな達観出来てる所が引っ掛かるな、キョウスケお前は何者だ?」
まあ気になるか、もうぶっちゃけるか、ただ任侠って言っても伝わらないからわかりやすく説明する為に言葉を選ぶと
「そうすっね、自分実家が盗賊ギルドやってて自分で言うのも何ですが一応跡取りだったんすよ」
「「「「はあ!?」」」」
皆さん驚くよな、ライミィ達に説明しても全くピンと来てないから疑問だったけどこれが普通の反応だよな
「盗賊ギルドの、跡取り…?キョウスケさんが?」
「ええ、まあ今となってはだったって過去形ですけど」
「過去形?」
「もう2ヶ月も失踪してるんです。ギルドの頭取やってる自分の祖父は厳しい人間でね、例え身内であってもこんな状況なら跡取り対象からは除外されているでしょう」
うん、これも嘘ではない。現に俺は日本では死んだ事になっている以上もう跡取りは別の人間になっている筈だからな。それに
「人は見かけによらないなんて言うが、いやはや…」
「確かに、盗賊ギルドの人間なら人間の黒い部分も見るからそう考えるのも当然といえば当然か」
「その辺りは貴族と変わらねぇのな」
「いやに肝が据わってるのはそういう事かい」
よし、納得してくれたな。盗賊ギルドってのは俺の世界で丁度マフィアに当たる組織でそれこそ任侠やってるとこもあればドギツイ事もやってるとこもある。まあ裏社会の人間なのは変わりがないがそこにメアリーさんが恐る恐る俺に訪ねて来た。
「あのキョウスケさん、どうして黙ってたんですか?」
「メアリーさん?だって聞かれませんでしたから」
「似た者夫婦かっ!」
先のライミィとのやりとりを彷彿とさせるこの突っ込みに暗くなりかけた雰囲気が笑いに包まれたのだった。
この後建国祭も無事終わり2日後、
「皆さん、どうかお気をつけて」
別れの時が来た。全ての準備を整えた俺達が魔導エアバイクを出して準備していると見送りに来たメアリーさんを始めとしたランベール家の皆さんが見送りに来ていた。
「皆さん、大変お世話になりました。改めてお礼を申し上げます」
俺は頭を下げて感謝の意を示す。なんだかんだ俺達に融通を効かせてくれた皆さんには感謝しかない。
「いいんだよキョウスケ君。道中気をつけて」
「ありがとうございます。ランベール卿」
俺はランベール卿と握手を交わす。その時ランベール卿から
「『勇敢な者は旅をする度に故郷が出来る』私からキョウスケ君にこの言葉を贈らせてもらうよ」
「素敵な言葉ですね。ありがとうございますランベール卿もお元気で」
固く握手を交わしその隣では
「お気をつけて、エリーさんの御母様が見つかる事を我々メイドは願っていますわ」
「ステラさんもお気をつけて」
「ありがとう、ございます」
「皆様ありがとうございます」
メアリーさんのメイドさん達がエリーやステラに声をかけて
「ライミィさん。また会いましょうね」
「はい!メアリーさんもお元気で」
メアリーさんとハグして別れの挨拶をするライミィ。それを見て俺は本当に感謝しかない挨拶も済みバイクに乗るとアクセルを吹かし
「皆さんありがとうございました!またどこかで!」
「さよーならー!」
メテオラとミーティアを発進させてルーブルの街の発った。
『勇敢な者は旅をする度に故郷が出来る』か、良い言葉だ。アルスに来て良かった。世界はまだまだ広く拓かれていることを改めて実感しながら次の地を目指し俺達の旅は続く