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異世界に来たらピアニストになった俺~しかし面倒事は拳で片付る任侠一家の跡取り息子の見聞録~  作者: みえだ
第4章 貴族の国 ~本領を発揮するピアニスト~
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81話 前夜祭パーティー2 口は災いの元♪(ライミィ視点)

ライミィ、婚約者と自己紹介する。




「キョウスケさんの婚約者(フィアンセ)のライミィさんですわ」


 私が名乗った後でメアリーさんが改めてロイジュ侯爵達に紹介するとそれを聞いたロイジュ侯爵がどこか意地悪そうに笑いながら


「だとライアン。残念だったな」


「ち、父上!」


 何でか顔を赤くして慌ててるライアンさん、どしたんだろと思ってたら


「ははは、兄上フラれましたか」


 今度はまたライアンに似てる優男風でそれなりに魔力がある貴族の人が私達の所にやって来た


「リアム…」


「お初に御目にかかりますピアニスト様。アルス共和国魔導師団団長リアム・セド・ロイジュで御座います」


 キョウスケと私に一礼するとそのリアムさんが私をまじまじと見てくる。


「なにか?」


 …直感的にあんまりいい気がしないので少しムッとした感じで返してみる。


「いえ、ライアンから聞いていましたがピアニスト様も婚約者様も優れた魔導師だと聞いていましたので、特に婚約者様」


「私?」


 魔導師って言われる程私もキョウスケも得意じゃないんだけど


「ええ、兄上から聞きましたがサイクロプスの眼球に射ち込んだ矢を魔法で爆発させたと、どのような高度な魔法を?」


「えっ?簡単ですよ?弓矢にファイアボールの魔力を込めて射って突き刺さってから爆発するように魔力を操作しただけですけど」


「「「は?」」」


 何でか呆気に取られたみたいになってるけど私変な事言ったかな?キョウスケもロイジュ侯爵達の対応に首を傾げてるし、特にあのリアムって人が面食らってるんだけど


「…そんな方法聞いた事がありませんね、それにこれも兄上が言ってましたが婚約者様は弓矢の扱いが大変手慣れていたと」


「私元々狩人をしてましたから」


「そんなに魔法の扱いが優れているのに?」


「もしも使えない状況になっても自分の身は自分で守れないと死ぬような所にいましたから」


 笑顔でこう言うとロイジュ侯爵達やランベール卿、聞き耳を立てていた貴族達がギョッとしたのが分かった。分かったのだが私は首を傾げてしまう、

そんなに変わった事でもないんだけど…

現にあの人造人間(ターロス)の時はヤバかったし


「そ、そうだったんですね、分かりました」


 うん。分かってないね、お母さんがいたら即座にお説教案件だと思っているとリアムさんは今度はキョロキョロと周りを見渡し始めた。


「すいません、後は治癒術師(ヒーラー)のエルフの子供がいると伺ったのですが…」


「「ああ、あそこです」」


 私とキョウスケは振り向いて指を指す、そこには


「ステラお姉ちゃん、あれ食べたい」

「はい、かしこまりました」


 今回のパーティーは立食形式でキョウスケが言うには交流を主にしたのらしいんだけど食べ物もそれなりにあったの、私達はともかく子供のエリーは大人達の会話なんて退屈そのものだから興味は美味しそうな料理に向いたみたいでステラに取って貰ってた。今美味しそうに食べてるのは羊肉のソテーみたい。それ以外でもステラが持ってるお皿には別のお肉料理が乗ってる。


「今食べているみたいなので申し訳ありませんが話しをするのは食べ終わってからでよろしいでしょうか?」


「あ、ああ。それはいいんですが、彼女は本当にエルフなのでしょうか?」


「? そうですが」


「いや、エルフが肉を口にするのを初めてみたので…」


 ってリアムさんとライアンさんがまるで珍しいものを見るような目でエリーを見ていた。ってかエルフってお肉食べないの?エリーは抵抗なく食べるから気にしたことないけど、でも明らかに見る目が変わったのがなんか気に入らなかった私は口を開こうとしたらキョウスケが


「エリーは生まれや育ちが少々特殊なんです」


 嘘は言ってないね、エリー程特殊な子もなかなかいないと思う。


「特殊とは?」


「自分達も詳しい事は知りません。分かっている範囲で言える事はエリーはどうやら先祖返りのようで恐らく育った環境が起因して肉を食べるのに抵抗が無いかと思われます」


 キョウスケ巧いなぁ。と私は感心したし、キョウスケの説明を聞いていたランベール卿やロイジュ侯爵達が揃って納得したようだ。私やキョウスケとメアリーさん知っている人間からするとエリーは


エルフ→ダークエルフ


 だけど事情を知らないそれ以外の人間が今の説明で察するのは


他種族→エルフ


 ってなる。うん。嘘は言ってない。だって捉え方の問題だから。

 それに私も集落を出てから知ったけど意外と先祖返りで別の種族の子供が生まれることもあるみたいで特にアルス、マルシャン、クオーコ等の大陸南側の他の種族を受け入れている国では年に数件あるらしい。それもあってロイジュ侯爵達はエリーに関してのそれから追及はしなかったしね。

それより私はさっきからチラチラ見てくるライアンさんがスッゴい気になる


「どうしましたか?」


 ライアンさんに尋ねると顔を赤くしてテンパってる。一体なんだろ?


「申し訳ありません婚約者様。どうやらうちの兄上が婚約者様に惚れていたようで」


「リアム!!」


 リアムさんに指摘されて真っ赤にするライアンさん。

 …え?そうだったの?ならここはしっかりお断りしないと


「ごめんなさい。私はキョウスケのものなので」


 私の返答にライアンさんだけでなくリアムさんも絶句してた。ロイジュ侯爵は笑い始めちゃったし、するとキョウスケが


「ライミィ、言い方」

「どしたの?ホントの事じゃん」

「まあ、そうなんだがな」


 ってキョウスケと笑い合ってたら


「お待ちなさい!!」


 いきなり入り口から聞いた事がある女の声がパーティー会場に響いた。ランベール卿やメアリーさんは渋い顔してるしキョウスケもうんざりした顔をしてる。熱反応から振り向かなくても誰か分かる。


来やがったなストーカーもとい、おじゃマムシが


 そのおじゃマムシはずんずんと私とキョウスケの所にやって来ると私を指差し


「貴女みたいな野蛮な下民にこの方は相応しくありませんわ!離れなさいこの下民が!!」


 いやお前の方が相応しくないよ。こんなとこまで来てなんなの?しかもせっかくのパーティーなのに台無しじゃん。キョウスケから教わった言葉で言うならTPOをわきまえろよ。私がドン引きして呆れてると見ていたメアリーさんが苦言を呈して助けてくれた。


「…アンナマリーさん。いい加減キョウスケさんに対して付きまとうのはお止めなさい。見苦しいですわ」


「メアリーさん…!どうして私ではなくそんな何処ぞの馬の骨の肩を持つのですか!?私達は友達でしょう!?」


「友達だとかは関係ありません。ただ決まったお相手がいる殿方に迫るのはお止めなさいと私は言っているのです。それにキョウスケさんもライミィさんも私達ランベール家がお招きしたお客人、そんな無礼は見逃せませんわ」


 この言葉に私とキョウスケがつい頷いた。私としてはせっかくのパーティーだから穏便にしたいんだけどね、それはメアリーさんもおんなじようで嬉しかった。

 でもここでロイジュ侯爵達がなにかを感じたようで私達から距離を取ったことに気がついた。その理由は直ぐ分かっちゃったの、だって…


「……」


 どうしよ、キョウスケ怒ってる。

怒ってる理由は直ぐ分かる。キョウスケ優しいから多分さっきのおじゃマムシの私に対する発言に怒ってる、だから私は


「キョウスケ、落ち着こ?ね?」


 段々顔に出てきたキョウスケを宥める。キョウスケ怒るとヤバいからね、普通に女でも顔パンだよ。それを見たおじゃマムシは面白くないようで


「さっきから殿方にベタベタと!はしたない!親の顔が見てみたいわ!」


 ……あ?このスカタンマダニ女なんて言ったのかな?今お母さんバカにした?ちょぉぉっと私からお話してみようか


「私にはお母さんだけだけど?それが?」


「まあ!片親なのですね!だから大したことも満足に学ぶ事が出来なくて分からないのかしら?それは失礼」


 明らかにバカにした言い方をしてぶちギレたい衝動を抑えて私は冷静に考える。確かにこういう教育?家庭?を理由にして他者を見下す貴族はまだいるとランベール卿の事を調べた時にセフィロトから聞いた。それは今も例外でなく共和国制になっても一部で根付いてるらしいって聞いていたけどこのスカタンがいい例だね。

 そこで私はあることを閃くとキョウスケに素早く『私に合わせて』って合図を出す。足元見えない長いスカートのドレスで良かった。

 だって今から私が聞く事の本当の意味はこのスカタンマダニおじゃマムシは気付かないから


「そうだねぇ、良く分かんないから教えて欲しいんだけど両親がいない人や両親いても継母だとかの本当の親じゃない人ってどう思ってるの?」


 この私の質問にある2人が反応したしキョウスケからもgoサインが出た。それを知らずスカタンマダニおじゃマムシは私が下手に出たと思って嬉々として喋り出す


「あらぁ?殊勝な事ですわ。まず両親がいないってその時点で可笑しいですわ!どうせ一生惨めな人生に決まってます!」


「へぇ、断言出来るんだ?」


「当たり前ですわ!そもそも両親がいないって、どういうことですの?捨てられた子供がマトモに育つ訳ありませんわ!どうせ罪を犯しマトモな人生を送れるとは思えません!それに継母なんて貴族からすれば跡継ぎで揉めるだけ、迎え入れる貴族はどうかしていますわ」


「なんで?貴女の言い分なら両親はいた方がいいんだよね?」


「ふふふ、あなたは本当に分かってないのですね。後妻を迎い入れる貴族は勿論いますが、しかしその場合前妻との子供は後妻には邪魔でしかありません。だってそうでしょう?他人の子供より我が子の方が可愛いのですから。跡継ぎも自分の子供にさせる為に追い出す。そうするとあら不思議両親のいない捨てられた子供ではありませんか。だからそんな事も考えられない貴族は愚かですわ」


 …オッケー。ぶちのめしたい衝動を抑えるの大変だね。少し離れた所で聞いてたエリーとステラも怒ってるみたいだしまんまと言ってくれたよと私は内心笑う。

 貴族達も騒然としてるわロイジュ侯爵は頭抱えてるわでざわつき始めたしもうネタばらししよっか


「だってさ、キョウスケ」


「あら?いきなり何を」

「キョウスケ両親いないよ」


「は…?」


 会場内は一気にどよめいた。はい一つ目の爆弾投下ー、あのスカタンマダニおじゃマムシはさっきまでの嬉々とした表情は何処へやら面食らったように呆然としてる。

 そりゃそうだよね。ストーカーするくらい、いや何度も運命の人だかなんだか言っといて結果その運命の人を貶してるんだから。

するとキョウスケが


「どうも、マトモに育ってない一生惨めな人生を送るだろうと言われた者です」


 笑顔で皮肉たっぷりに言ったーー!!あいつは顔面蒼白してるし今さら会場に入って来たあいつの父親は何事かとあいつに駆け寄ると状況を理解したのか父親に関しては蒼白通り越して土気色になってた。あいつは震えた声で


「ご両親が、いない…?」


「ええ、自分が物心が付く前の2歳の時に亡くなったと自分を引き取った祖父から教わりました。だから自分は祖父と祖父の舎弟達に面倒みてもらいました」


「えっ、あの」


「類は友を呼ぶ?同じ穴の狢?どうとでも呼んで頂き結構。自分も妻も、自分の出生や今までの人生を恥だと思った事は一度も無えよ」


 少し声に凄みを効かせて語尾に素が出たキョウスケにあのスカタンとその親ものっぴきならないといった感じで呆然とする。するとランベール卿が駆け寄ってきた。

ってちょっとタンマキョウスケ、今妻って言った!?


「重ね重ねすまないキョウスケ君!なんとお詫びをしたら…」


 公衆の面前だと言うのに頭を下げて謝るランベール卿にざわつく他の貴族達。その手は震えてたけどそれが怒りで震えてるのは私とキョウスケは知ってる。知ってるからこそキョウスケは


「ランベール卿頭を上げて下さい。自分は気にしてませんから。それにホーカー令嬢は貴方にも意見があるみたいですよ?」


「……!キョウスケ君、ライミィ君、君たちはやはり知っていたのか?」


「ええ、お会いになる前に自分たちなりの方法で調べさせて貰いました」


「そうだったのか…」


「あの、ランベール卿?どういうことでしょうか…?」


「私の本当の母は、私を産んで直ぐ息を引き取りました」


 はい爆弾二発目投下ー、メアリーさんの今のお母さんは継母なんだよ。それを聞いたスカタンは父親みたいに顔を土気色にしてた。


「へ?それでは今のキャリス夫人は…?」


「継母ですわ。そしてアンナマリーさん、貴女の言うとおり跡継ぎ問題で我がランベール家は今大変な問題を抱えています」


 実はメアリーさん誘拐に関わってたのは元王族や奴隷商人だけじゃなかったんだ。ランベール卿と今のお母さんの子供、メアリーさんからすれば異母姉弟に当たるんだけどそっちをランベール家の跡継ぎにしたい継母の両親が元王族達と結託して行われた計画的犯行だったの。

 ランベール卿の事を調べた時にメアリーさんと今の夫人が血が繋がってないことを知った時にキョウスケが


「異母姉弟、なんかキナ臭いな…」


 この反応をしたからみんな気になったの。キョウスケ曰く跡継ぎ問題は円満にいくことはそうそう無いんだって。キョウスケも家の跡継ぎになったのはおじいちゃんがキョウスケ以外認めなかったんだって言ってた。だから余計に気になったんだって。

 だからセフィロトで調べたらもう大正解。継母のキャリス夫人はランベール卿の親が体裁を取る為に用意した伯爵令嬢の後妻。キャリス夫人自体は無欲な人らしいんだけど、問題はその親で孫を使ってランベール家の権力を自分達の物にしたいらしく自分達の腹心の部下をキャリス夫人の側付きとして付かせて隙を見てメアリーさんを亡き者にしようしてたみたい。

 ま、それは私達が介入しちゃった事で失敗に終わって更に私達が持ってる証拠等々を全部ランベール卿に渡したから建国祭終わった後荒れるだろうってキョウスケは言ってた。


「アンナマリーさん、確かに私は跡継ぎ問題で誘拐までされました。まあそれはいいでしょう。ついでに継母だった私を陰で笑っていたのも別にかまいません。ですが私が怒っている理由が分かりますね?」


「え……?」


「このような場で私の大切な友人達を貶されたからです!」


 さっきまで穏やかな表情だったメアリーさんが怒ってた。まあ結構うんざりしていたから仕方ないとは思うけど、あれ?友人?


「そ、そんな、メアリーさん!私達友達でしょう!?」


「なら、その友人関係を解消します。もう付き合いきれませんわ。お父様」


「ああ、後は私の方から行おう」


 あーあ、あの親子怒っちゃったよ。ランベール卿も何度もあのスカタン親子に呆れてたから仕方ないけど、確かこういう場所であんな風に言われるのって名誉毀損って言うんだっけ?まあ頭のいい貴族様なら自分の権力も使うんだろうけど、と思っているとキョウスケがあのスカタンの前に


「あ、あの……!」


 視界にキョウスケが映ったみたいであのスカタンはキョウスケに今にもすがり付こうとして手を伸ばした。でもキョウスケがその手を払うと


「俺はあんたみたいな初対面で馴れ馴れしい奴は嫌いだ」


 と、真っ向からの嫌い宣言で見事KO!もう色々と絶望した表情で崩れ落ちてたスカタンを見ていやぁ、スッキリした!






 この後のことはランベール卿に任せて私達は先においとましてメアリーさんとランベール卿の別宅に戻ると


「大変、申し訳ございませんでした」


 メアリーさんが深く頭を下げて謝ってた。


「せっかく皆さんをもてなそうとしましたのに不快な思いをさせてなんとお詫びを」


気の毒になりそうな位沈痛で弱々しい表情で謝るメアリーさんを見て流石に私達はみんなで慰める。


「頭を上げて下さいメアリーさん」

「そうですよ、メアリーさんのせいじゃありません」

「うん、メアリーお姉ちゃん、じゃないよ?ね?ステラお姉ちゃん」

「はい、責任の所在はメアリーさんにはございませんよ」


「…ありがとうございます」


 こんな感じでこの日はメアリーさんを慰めながらエリーが持ち帰っちゃったパーティー料理をみんなで食べてたの、その時に最後メアリーさんが帰る時に私は


「メアリーさん、ありがとね」


「はい?何がでしょうか?」


「私の事、友人って言ってくれて」


 ってお礼を言ったら泣かれちゃったの。メアリーさんも色々あったんだなぁ。


 翌日、ランベール卿から聞いたのはホーカー家はあのスカタンが言った事が一部不敬罪になるらしく建国祭の期間中自宅謹慎処分で昨日の深夜に強制送還されたんだって。

 いやぁ、怖いねキョウスケが言ってたよ


「こういうのは口は災いの元って言うんだ」


 うん。ホントだね。一連思い返すとホントだよ。それ聞いたエリーが「じゃ家訓に、追加しよー」って言った時はみんなで笑った。





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