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異世界に来たらピアニストになった俺~しかし面倒事は拳で片付る任侠一家の跡取り息子の見聞録~  作者: みえだ
第4章 貴族の国 ~本領を発揮するピアニスト~
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78話 群青 2人の指環

リノリノ、改めて響介を人間でないと知る。




 スタンピードから3日後響介はというと


「ねえねえ、キョウスケこれどうかな?」


「ライミィならこっちのリボンが似合いそうだな」


「じゃあこっちにする!」


 ライミィとデートをしていた。2人がいるのは建国祭を目前に控え活気付くアルス共和国首都ルーブル。その都市にあるショップで今アクセサリーを見て回っている。


 スタンピードを納めた後、事実を知ったランベール卿とアルス騎士団から改めて感謝の言葉を述べられ恩賞としてアルスでの爵位や領地を薦められたが響介達は全て断った。

 理由としては響介を始め4人共貴族が欲しがるような地位や名誉には興味が無く、今の旅の目的はエリーの母親探しの為建国祭での依頼が終わったら次の地へ赴く事も全て伝えるとランベール卿を始めアルスの貴族達からはとても残念そうにされ、騎士団からの申し出も同様に断りを入れた。

 代わりに指輪等のアクセサリーを買うのに何処かいいところは無いかランベール卿とメアリーに尋ねた響介は首都ルーブルにあるアクセサリー専門の店等を薦められた響介は建国祭に備えオルセーを発ちルーブルに前日入りすることを伝えるとランベール卿から最高級の宿を用意すると言われたが


「宿はこっちで取りますよ。ストーカーされてますので」


 と、響介が言うとランベール卿は何も言えなくなり申し訳なさそうに響介達に頭を下げていた。その時一瞬ホーカー子爵を凄い眼差しで睨んでいたのは中々印象的であった。

 そうして響介達は2日前にルーブル入りしており、響介とライミィは久しぶりに2人っきりの時間を過ごしている。


「次はどこ行くの?」


 さっきの店で買ったアクセサリーなどの小物類を手にライミィが響介に尋ねる。


「メアリーさんから教えて貰ったアクセサリーの店に行きたいんだけど、いいか?」


「うん!」


 仲良さそうに手を繋いで歩く2人、端から見たら何処にでもいるただのカップルである。


「でも何で指輪を買うの?」


 ライミィが不思議そうに首を傾げる。響介は少し考えてから覚えてる範囲で伝えることに


「俺の元の世界の風習で婚約した時と結婚した時に形に見える物として相手に贈って薬指にはめるんだよ」


 元の世界での記憶を辿りながらライミィに説明する響介。こっちとは違い結婚適齢にはまだ達していないのもあり知る限りの元の世界での常識の範疇で説明するとライミィから疑問が


「えっ?それって婚約の指輪と結婚の指輪が計2つあるの?」


「確かそうだったな」


「う~ん…」


 響介の話しを聞いたライミィは少し考える。ライミィ達ラミアは着飾ったり装飾品を集めたりする事に必要性を感じない(街に行く事のあったリリスさん始め数人のラミアを除く)。ライミィ自体そういう装飾品より魔導書やマジックアイテムに興味がある為余りピンと来ていないようだ。暫くして「うん」と自分の脳内で結論が出たようで


「指輪は一個でいいよ。いっぱいあってもいらない」


「いいのか?」


「うん。婚約の指輪でも結婚の指輪でも薬指に付けれるのは一つだけでしょ?ならいいよ荷物増やしたくないし、無くしそう」


 あまり物に執着しないライミィらしい至極同然という答えであり、そんなライミィに響介はつい笑ってしまう。ライミィが「でも」と続け


「キョウスケから貰うものなら話しは別だよ!キョウスケから貰うものなら私は嬉しいから」


 はにかみながら笑うライミィに響介はドキリとしてしまい胸中で


(もう、半端な物は選べないな…)


 ライミィの期待に答えるべく次に買う予定の指輪選びに気合いを入れるとライミィから


「それとエリーとステラにも何か買ってあげようね。特にエリーに」


「そうだな、まさかあんなに駄々こねるとは思わなかったよ」


「しょうがないよ~。いつも私達と一緒だったから寂しかったんだと思うよ」


 今回の指輪購入にあたり響介とライミィは2人で買いに行きたいと話したところエリーも自分も行きたいと譲らずステラ含めた3人でなんとか説得し渋々了承してもらい出てきた2人。その結果エリーは今響介達が取った宿でステラとお留守番中だがご機嫌斜めである。


「物で詰め合わせってのはどうも好きじゃないんだがな…」


「そうなの?」


「なんか物で吊ってるようでなんか好きになれないんだ」


「キョウスケは真面目で誠実だからね、多分相手に誠意を見せれてないって考えてるからだと思うよ」






 一方その頃


「……」


「エ、エリー様…」


 ここは首都ルーブルの中でも指折りの宿「ニュドラン」。冒険者から貴族まで様々なニーズに対応出来ると評判の宿で響介達はここのスイートルームに部屋を取った。

 しかし部屋にいるエリーは響介とライミィに置いていかれ頬をぷくーと膨らませて拗ねており、ステラがどうしようかとおろおろしている。


「エリー様、どうか機嫌を…」


 そうエリーに尋ねるがエリーはプイッと顔を向けてしまう


(どうすればよろしいのでしょう、キョウスケ様~ライミィ様~助けて下さい~)


 そんなエリーにどう接すればいいか分からずすっかり困ってしまうステラの胸中は穏やかではなく、早くも響介とライミィに心の中で助けを求めているそんな時だった。エリーが気を取り直すとおもむろにマジックバックから何かを取り出すのを見たステラは首を傾げる、


「あら…?」


 ステラが見たのは小型のディスプレイのような何かの黒い端末みたいなもの、端末みたいと例えたのも自身がいた研究所にも似たようなものがあったからだ。エリーはベッドに寝っ転がり横のボタンを押すとその端末は画面が白く光って起動した


「エリー様、それは?」


「エリーも、よく分かんない、お兄ちゃんのピアノの、裏にくっついてた。ステラお姉ちゃん、一緒に、見よ?」






 所変わってこちらは響介とライミィ。2人は今メアリーから教えて貰ったアクセサリーショップから出てきたところなのだが


「うーん」


 2人の表情、特に響介は険しい表情を作っていた。というのも


「「思ったような物が無い」」


 つい口に出てしまった言葉が全く一緒だったのでつい顔を見合わす2人はどこかおかしくなって笑ってしまう。


「色々あるにはあるんだが、いまいちピンとこない」

「わかる~、なんかこれじゃない感があるんだよね~」


 教えて貰ったアクセサリーショップ、ジュエリーショップを一通り回る響介とライミィ。エリーとステラのアクセサリーの類いは順調に買っているのだが本題の自分達の指輪を未だ買えずにいた。


「エリー達の分は買ってんだけどな」


 ふう、と息を吐く響介。店をはしごして様々な指輪を見たがどうもこれだという物がない。本当にどうしようかと考えているとライミィが足を止める。


「ん?どうしたライミィ」


「キョウスケ、あそこ見てみようよ」


 ライミィが指を差したのは行商人が開いている露店だった。見たところマルシャンの国章を着けているところからマルシャンの商人のようで回りには行商人達が露店を開いており響介には縁日のように見え、その中で何かに気が付いた。


「なあライミィ」

「だいじょぶだよキョウスケ。言いたい事は分かったから」


 何かに気が付いた響介にライミィも察した。それは露店を開いているとある行商人の2人組の男女に物凄く見覚えがあったからだ。


「さあさあ、こっちはマルシャンでも有名なダンジョン街リュインのダンジョンから出た珍しい魔法道具(アーティファクト)だよ!」

「こっちはアルスのダンジョンから出た珍しい魔法道具(アーティファクト)が目白押しさ!是非見ていって下さい!」


 賑やかな露店の集まりの中で特に大きな声で客寄せをする口と顎の髭に特徴のある男性と薄い金髪の美人さんの露店に足を運ぶ響介とライミィに気が付いた男性が声をかける。


「いらっしゃいお2人さん!観光客かい?」


「一応冒険者でーす、ね?キョウスケ」


 ライミィがそう言うとその露店のお姉さんがキョウスケと聞いて「ん?」という表情になり少し考えこむとはっと何か思い出したのか顔を上げ


「もしかして、キョウスケさんとライミィさん?」


「はい、そうですが」


「え?シェルビー姉この2人知ってるの?」


 首を傾げる男性にシェルビーと呼ばれた女性はバシッと男性の頭を叩いた。


「キョウスケさんとライミィさんだよジョエル!母さん達の手紙に書いてあったじゃないか!」


「手紙…?はっ!」


 ジョエルと呼ばれた男性は改めて響介をまじまじと見るとぶつぶつ独り言を口にし


「黒髪に青い瞳、変わった服のイケメン…、間違いない!父さんや母さんがお世話になりました!」

「ありがとうございます!」


 揃って頭を下げる男女に2人はついやっぱりという顔をしてしまう、そんな2人を他所に自己紹介を始める行商人コンビ


「改めまして自分はジョエル・ヒューズと申します!」

「私はシェルビー・ヒューズです!」


 見覚えあったこの2人、マルシャンで助けたヒューズ一家の家族のようで見たところジョセフやマリオンより若く見える事からおそらく弟妹だろうと思った2人は


「まさかとは思いましたがヒューズさんとこの身内でしたか」

「てか何で男の人はショーンさんに似て女の人はカーラさんに似てるの?」


「それは自分らもわかんねぇっす。取り敢えず遺伝なのは間違いないねぇっす」


 そう笑いながら話すジョエルを見て改めて父親に似てるなと思う響介とライミィ


「まさかマリオンさん達に弟妹がいたんですね」


「そうですね、私達みんな二卵性の双子なのでそれはそれは数が多くて…」


「みんな?数?」


「ええ、自分ら五男と五女の双子なんすよ」


「「五男五女!?」」


 今の話しが本当なら大家族である。そう思って驚きを隠せないがライミィが尋ねた。


「えっとヒューズさん家って何人家族ですか?」


「父さん達含めると14人っすね。自分らの下にもう双子と後はジョセフ兄始め1つ違いずつで双子が上に4組ずつっす」

「他のみんなも二卵性の男女の双子です」


「にらんせい?」


「分かりやすく言えば似てない双子。反対に一卵性の双子は似てる双子でライミィに分かりやすく言えばリリーさんとリリアンさんな」


「あっ、成る程」


 ライミィに分かりやすく説明を入れる響介、そこからこの双子と色々と世間話しをするとこの姉弟は魔法道具(アーティファクト)専門で商売をしていてこの建国祭にあわせダンジョン産の珍しい魔法道具(アーティファクト)を集めてきたそうだ。


「結構集めてきたんですか?」


「ええ!色々ありますよ!このような装飾品の類いの魔法道具(アーティファクト)で首飾りとか耳飾りとか」


 シェルビーのこの言葉を聞いて響介は尋ねる


「すいません、なら指輪みたいなので魔法道具(アーティファクト)ってあるんですか?」


「勿論です!そうだジョエルどうせならあのとっておき持ってきて!」


「ちょ、ちょっとシェルビー姉!あれは建国祭当日に売る目玉商品じゃ…」


「いいからはよ持ってこんかい!!」


「はい!喜んで!」


 四の五の言うジョエルを一喝するとまるで居酒屋のような返事で奥に止めてあった馬車へジョエルを向かわせるシェルビー。これを見た響介とライミィは


((この家族、力関係はっきりしてるなぁ))


 と、どこかまったりと眺めていた。カーラさん達女性陣がいろんな意味で強いなぁ、お母さん達みたいと小さい声で言ったライミィの独り言を聞いて確かにと思い頷く響介。そんな事をしていたらジョエルが何か汚いながらも何処か上品そうな箱を抱えて来た


「これだよな?シェルビー姉」


「そうそうこれよ!お二人さん、こんなのはどうでしょう?」


 箱を受け取ったシェルビーは響介とライミィに見えるように中を開ける。そこにあるのは2つ1組の綺麗な紫がかった綺麗な青い指輪で響介は鑑定スキルを使いその指輪を視てみると



群青の双環

アイテムランクS

魔法媒体可

2つ1組の指輪型のマジックアイテム。

 対になっている指輪で装備している者に合わせてサイズが自動調整され装備者同士で魔力の受け渡す『マナトランスファー』を自由に行使することが出来るマジックアイテム。



「キョウスケ!これにしよ!」


 鑑定で視ていた響介だったが一緒に見ていたライミィは直感的に指輪を気に入ったようだ。気に入ったのは響介も同じで


(マナトランスファーか、確かにそれなら俺とライミィが付けていればライミィの負担も軽くなりそうだな)


 ライミィの戦闘スタイルは魔法だけでなく弓矢に魔力を込めたり最近では矢すら魔力で形成して使う為必然的に魔力を使う。その為高い魔力保有量がありながらほとんど魔法を使わない自分と魔力を共有出来ればかなりライミィも楽だろうなと考えた響介。

 響介とライミィが指輪を気に入ったのを理解したシェルビーは


「気に入って貰えたようで何よりです!そこでお値段なんですが…」


「言い値で払いましょう」


『大切な買い物は決して糸目をつけるな』

 これも祖父からの教えの一つ、祖父は普段質素堅実で無駄遣いをしない人間だったがそれはお金をかける所はしっかりお金をかける人間なだけでありケチではなくそれはしっかりと響介も理解している。シェルビーは響介の姿勢に面食らったようでジョエルを連れて裏に引っ込む、暫くした出て来て少し言いずらそうに


「そ、それなんですが…」

「金貨200枚です」


「はいどうぞ。確認して下さい」


 言い値を即決で払う響介。事前に分けていた100枚入りの金貨袋を2つシェルビーに渡す。シェルビー達は中を確認し


「確認しました。ありがとうございます!」


「またお願いします」

「シェルビーさん、ジョエルさん、ありがとうございました!」


 シェルビーから指輪を受け取り別れを告げる響介とライミィ。他愛をない話しをしながらいつの間にか噴水がある綺麗な広場にたどり着くとそこでライミィはとても嬉しそうに指輪を取り出して見る


「綺麗な指輪だね」


 そう言って自分で着けようとするところを響介が手を握り止めた


「ライミィストップ」

「どうしたの?」


 ライミィは不思議そうに首を傾げて宝石のような紫の瞳を上目遣い気味にして響介を見る。そのライミィの一つ一つの仕草にドキリとするがそれに耐えながら優しくライミィに


「こういうのは相手がはめるんだ」


 そう言って響介ははめようとしていたライミィに教える。するとライミィは自分から響介に左手の薬指を分かりやすいようにさし出すと


「じゃあどうぞ」


 この大胆な行動に響介は顔を赤くするが響介はライミィも笑いながらも顔を赤くしていることに気が付く。ライミィも相当腹を括っているのが分かった響介はライミィの左手を取り薬指に群青の双環の片方をはめる。ライミィははめられた左手を見て暫しうっとりとすると


「じゃ、今度は響介ね」


 今度はライミィが響介を左手を取り薬指にもう片方の群青の双環をはめ2人は暫し言葉も無く見つめ合っていると


「ヒューヒュー!」

「お二人さんお熱いねぇ!」

「末永く爆発してろー!」


「「!?」」


 ここで2人はようやく自分達の状況に気が付く。

建国祭を前日に控える、人が集まり出店や露店が出て賑わっている噴水広場のど真ん中で互いに指輪を交換し今にもな雰囲気でイチャイチャしてれば注目されるのは当たり前である。辺りはそんなお似合いカップルに対しやんや言って祝福しているが渦中の2人は


「「あ、あはは…」」


 茹で蛸のように顔を真っ赤にしてただただ照れていた。





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