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異世界に来たらピアニストになった俺~しかし面倒事は拳で片付る任侠一家の跡取り息子の見聞録~  作者: みえだ
第4章 貴族の国 ~本領を発揮するピアニスト~
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73話 依頼 ランベール卿からの出演依頼

4人、マルコフとメアリーに再会する。




「お父様、メアリーでございます。キョウスケさん達をお連れしました」


 メアリーに屋敷内を案内されると一つの客間の前で止まり中にいるランベール卿に確認の為声をかけると中にいた執事とメイドが扉を開らくと金髪をきっちりとしたオールバックに整えた壮年の男性が奥にあるソファーから立ち上がり出迎えた


「おお、手を掛けさせてすまないなメアリー、マルコフご苦労様だった」


 開口一番メアリーやマルコフを労う男性にメアリーは


「そんな事は御座いませんわお父様。それよりもニオルドは何処に?」


 ニオルドという単語が出た時響介達は一瞬場がピリッとするのを感じた。メアリーは少しご立腹のようなのが直ぐにわかったが


「まあ待ちなさいメアリー。あんな事があったのだニオルドや他の者達が警戒するのも仕方がない。悪く思わんでくれ」


 そう言われメアリーは「そう仰っるなら…」とそれ以上は追及せずにいたが少し納得がいかない様子だった。そのメアリーを横に男性が響介達の前来ると手を差し出し


「お見苦しい所をお見せして申し訳ない。私はアルド・グレノルド・ランベール。お会い出来て光栄だ」


 そして響介達一人一人と握手を交わし自己紹介をすると部屋に招きソファーに座るよう促す。響介達も促されるがままにソファーに座りステラは3人の後ろに控える。対面のソファーにランベール卿とメアリーが腰掛けると執事とマルコフが控える形となった。


「聞いているよ。この度は貴殿の働きに感謝…、いや違うな。娘を助けてくれてありがとう。我がランベール家を代表してお礼申し上げる」


 そうしてランベール卿は響介達に頭を下げ感謝の言葉を述べる。

 貴族が頭を下げる。

本来ならあり得ない事だろう。現に後ろに控えていた執事は明らかに動揺しており


「御館様!何処ぞの者か分からぬ者に頭を下げるなど…」


「ニコラスよ、お前の言うとおりだ。しかしこの場の私は侯爵ではなく一人の親として彼らに接している。一人の親として目の前の彼らに感謝の意を述べ示すことに身分は関係ない。これは私の礼儀の問題だ」


 苦言を呈したニコラスと呼んだ壮年の執事に対してピシャリと言い切るランベール卿。そのやり取りを見て響介達は呆気に取られる中


(貴族と聞いていたからもっと堅苦しいとかあると思ってたが、あの部分はじっちゃんみたいなとこあるな)


 ふと礼儀の問題と言った所に祖父に通ずる所があるなと思っていると不意にノックの音がした。


「来客中に申し訳御座いません御館様。ニオルドで御座います。メアリーお嬢様が此方にいらっしゃると伺いました。メアリーお嬢様にお客様が参られました」


 部屋の外からニオルドという執事の声がした。どうやらメアリー宛に来客が来たようでそれを聞いたメアリーはふと立ち上がり悪い意味でいい笑顔になると


「キョウスケさん、ライミィさん、エリーさん、ステラさん申し訳ありません。お父様、申し訳ありませんが私お呼ばれしてしまいましたのでここで失礼させて頂きます」


 カーテシーを披露し悪い笑顔のまま部屋を出て行く。それを見たランベール卿は


「やれやれ、ニオルドの奴骨を折られなければいいが…」


 ポツリと溢した一言に響介達は思わずランベール卿を見る。そしてライミィがランベール卿に質問をした。


「えっと、どういうことですか?」


「それがメアリーなんだが帰って来た時だったんだが当初よく物を壊してしまってな」


「物を、壊す?」


「ああ、それも力加減を間違えたみたいにな、本人は軽く持った筈と言ったんだが大体が粉々になっていたからどうしたものかと当時は思ったよ」


 ランベール卿は苦笑していたがそれを聞いた響介とライミィはあることが思い当たりハッとした表情になると


「何か、心当たりがあるのかな?」


 ランベール卿に訪ねられた。まあ真っ正面にいてそんな表情をするなら当たり前だが


「多分、何ですが…」

「原因は俺達ですね」


「…?どういうことかね?」


「メアリーさん達を助けた時だったんですがその時レイド化したグランドドラゴンを討伐したんです」

「その時昼飯でグランドドラゴンの心臓近くの肉で作ったポトフを皆さんに食べて頂いたのです」


「ああ、そういえばメアリーも言っていたな」


「どうやら多く食べた方に一定の効果が出たんです」


「効果、かね?」


「これは自分達も多く食べた方に言われて初めて気付いたのですが、ステータスで説明するとその兄弟はお兄さんは魔力が上がり弟さんは総合的な身体能力が上がったそうなんです。ちなみにその兄弟は10杯以上食べてました」


 この兄弟と言うのは響介達と交流があるケインとオットーのマクレイン兄弟である。あの救出クエストの後で気になった響介達が2人ステータススキャナをしてもらって確認したところケインは魔力と魔力保有量が、オットーは生命力と防御力がそれぞれS及びAになっていたという。2人の話によるとライミィが作ったドラゴンポトフを食べてから異様に力がみなぎるようになったと言っていたのを思い出し響介はそういえばケインは14杯、オットーは17杯は食べていた事を思い出した。2人共丸2日は食べてなかったと言っていたしガタイも良かったので食べる事に気にしていなかったがと付け加えると話を聞いていたマルコフが恐る恐る手を上げる。


「そういえばお嬢様、ご自分で11杯は召し上がっていたと…」


「なんだと!?」


「あー、キョウスケこれ」

「恐らくメアリーさんの場合食べた事で攻撃力、主に筋力が上がったんだと思います」


「そういう事だったか…」


 事情を知りつい頭を抱えてしまったランベール卿。その表情はなんてこったと言わんばかりの一種の諦めともう笑うしかないといった感情入り雑じったなんとも複雑な表情を浮かべるランベール卿を見た響介とライミィは


「あー、なんとお詫びすればいいものか」


「いや、君達は悪くない。まさかドラゴンの肉を食べてそんな事になるなんて誰が想像出来ると言うのかね?」


 それに「メアリーも食べ過ぎだな」と言って笑うランベール卿だった。取り敢えずメアリーさんにはステータススキャナで調べて頂くことをランベール卿にお願いしたその時ノックの音が


「来客中に申し訳ございません御館様。ニオルドで御座います」


「うん?入ってくれ」


 「失礼致します」と返答して一人の執事が入ってくる。一礼して入って来たのは明るい茶色の髪を綺麗に整えた中性的な顔立ちの青年。入室すると素早くランベール卿の元へ来ると素早く耳打ちをする。すると


「……そうか分かった。下がりなさい」


 ランベール卿は少し深刻そうに表情を歪めるとニオルドを下げさせた。ニオルドが言われた通り出て行くのを見ていた後ろに控えていた執事ニコラスはランベール卿の表情を見て


「御館様、如何されましたか?」


「クルジット氏が来れなくなったそうだ…」


「なんと……!?」


 誰?言いたい所の響介達だったがランベール卿と側付きの執事が衝撃を受けているようで響介はマルコフに目配せして近くに来て貰い事情を聞く


「マルコフさん、ランベール卿が仰っているクルジット氏という人物は?」


「はい、それが……」


 マルコフの説明によると2週間後にアルス共和国の建国祭が控えていてクルジット氏というのはその時のセレモニーで演奏するピアニストだという。キャンセルの理由は


「オウレオールから他国への出国が規制された。ですか?」


 恐らく十中八九原因は脱走したロン・ハーパーと今オウレオール内での教会の騒ぎだろうと考える響介とライミィに響介達を見て察するステラ。そんな3人を尻目にエリーが


「おじちゃん、お兄ちゃんも、ピアニストだよ」


 エリーがいきなりランベール卿をおじちゃん呼ばわりしだして焦る響介達。いくら子供と言えど侯爵相手に不敬罪と言われかねない発言だったが


「エリー君と言ったね?それは本当かい?」


「うん。お兄ちゃん、すっごく、上手」


 無邪気に話すエリーの言葉を聞いてランベール卿は響介に向き直る。それを見たニコラスは焦りながら


「御館様!」


「焦るなニコラス。キョウスケ君、エリー君の言っていることは本当かい?」


「はい、相違はありませんが、上手かどうかは客観的に見たことが無いので分かりかねます」


「ふむ、今演奏して頂けないだろうか?」


 そう言われた響介は無下に断る事にはいかず


「わかりました。すいませんがここのスペース、使わせて頂いてもよろしいでしょうか?」


 ふと首を傾げるランベール卿から許可を得ると響介は客間の空いているスペースに賢者の懐中時計を取り出しピアノを出す。


「なんと……!」

「!?」


 響介がピアノを取り出すのを見て驚愕するニコラスとマルコフを他所に響介は慣れた手付きで取り出したピアノのチューニングを行う。

 チューニングも本来細かな知識や技術が必要とされるがそれも『天性のピアニスト』の中に含まれているようで流れるように感覚的に行うと響介は座り神経を集中させるとおもむろに弾き始める


(あっ、この曲…)


 最初の落ち着いたイントロの部分でライミィはなんの曲を響介が弾いているのか分かり


(キョウスケ、やる気だね!)


 響介が本気度合いが分かった。今から弾く曲はラミアの隠れ集落でたまに弾いていた曲でエリーやステラの前でも弾いたこと無いライミィしか聞いたことが無い曲。

 低音が印象的なパートに入ったと思った瞬間


「「「なっ……!?」」」


 ランベール卿達は目の前の響介の見たことのないスピードで、まるで連弾で弾いているかの演奏に驚きを隠すことが出来なく、エリーやステラは


「おおー」

「なんと…!」


 目を輝かせて演奏する響介を見ている。

 これは響介のピアノ演奏の中でも得意としている謂わば『発狂ピアノ』というものでまるで狂ったかのようなスピードで駆け抜けるように弾くものだ。この曲はこの発狂部分とイントロのような落ち着いた部分がはっきり別れており余計に発狂部分が目立つ構成の曲。そして2度目の発狂部分、この曲でのBメロ部分にさしかかりまた釘付けになると低音が印象的に響くサビに入りそのままスローダウンをしフィニッシュを迎えると響介は立ち上がり


「ご清聴、ありがとうございました」


 情報屋セフィロトから習った貴族に対してのお辞儀をして締める。そしてその一連を見届けたランベール卿は響介に歩み寄ると


「キョウスケ君。クルジット氏の代役を頼まれてくれないか?」


 このランベール卿直々の依頼を響介は快く了承するのだった。




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