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異世界に来たらピアニストになった俺~しかし面倒事は拳で片付る任侠一家の跡取り息子の見聞録~  作者: みえだ
第4章 貴族の国 ~本領を発揮するピアニスト~
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72話 再会 貴族令嬢メアリー

リノ達の結論。響介は治外法権




 自分達の知らない所で話題にされているとは露知らず響介達は


「…」

「zzz…」

「すぅすぅ…」

「くぅくぅ…」


 揃いも揃って爆睡中だった。連日の疲れからか皆ぐっすりと寝ており響介に至っては寝息もほとんど立てずまるで泥のように寝ていた。やはり石畳の床では疲れはとれなかったのだった。





「何だか緊張するね」


 そして翌日、一行はランベール卿の屋敷へ向かっていた。街到着から2日目にしてようやく当初の目的に移る事が出来た。

 と、言うのも向こうから会いたいと言われても向こうは貴族、此方は出所不明の冒険者、直接アポを取ろうとしてもポッと出のガキの面会希望など本人に事がたどり着く前に側付きの執事だかメイド長だかに却下されるだろう。

 だが今回は向こうが手紙を送って来たのをこちらが返した。流石に返信された手紙を捨てるバカはいないだろうと響介は考えていた。


「しかし、キョウスケ様のお書きになったお手紙は拝見されているのでしょうか?」


「普通なら読んでるよ。自分から手紙送っておいて返事がきたら読まないってあり得ないでしょ。まっ相手は貴族様だから私もわかんないけど」


 あっけらかんと笑うライミィにつられ笑う一行だった。その時後ろから声をかけられる。


「あの、もしかしてキョウスケさんですか?」


 響介はこの声に聞き覚えがあり振り向くとそこにいたのは小綺麗な御者服を着た青年でその顔を見ると


「貴方は、マルコフさん?」


「そうですマルコフです!いやぁお久しぶりです!」


 以前メアリーと一緒に助けた青年マルコフだった。響介達を見つけたマルコフは嬉しそうに近づく


「いやぁやっぱりオルセーに着いていたのですね!ん?おやその方は?」


「御初に御目にかかります。キョウスケ様達の従者を勤めさせておりますステラと申します」


 ステラはそう言って挨拶、情報屋から買って習ったお辞儀、カーテシーを披露する。

 そしてマルコフは一行を見て全てを理解した。恐らく彼女もやんごとない訳ありであり響介とライミィがエリー同様面倒を見ているんだと、マルコフは余計な詮索はしない人間なのだ。


「初めまして、ランベール卿の使用人をしてますマルコフと申します」 


 差し支えない挨拶で返すマルコフ、ステラの事もそうだが響介とライミィの手を繋いでいるエリーもダークエルフの筈だったエリーがただのエルフに見える事などもマルコフは決して触れない。マルコフは察せる人間なのだ。


「マルコフさん、やっぱりって事はキョウスケのお手紙は」


「ええ、御館様もメアリー様もお読みになられ、メアリー様からはもうオルセーに着いてるはずだから外出時に見つけたらご案内するように申し使っております」


「よくキョウスケってわかりましたね」


「あはは、キョウスケさんは髪の色もお召し物も珍しいですから」


「「「納得」」」


「…そんなに珍しいか?」


 みんなに「うん」と言われて首を傾げる響介。服はまだしも髪の色は珍しいとは感じていなかったからだ。


(ビオラさんとかラミアの方にはちらほらいたんだがな…)


 そんな事を思いながらマルコフに案内される4人。宿のある中央街から南西に抜けると開けた場所に出る。そこは大きな屋敷や邸宅が並ぶ区画でマルコフが響介達に歩きながら説明をする。


「こちらの区画は通称「貴族街」と呼ばれる場所になりオルセーに住んでいる貴族は大体がこの区画に居を構えています」


「ここ、だけ?」


「そうですねエリーさん。ただ準男爵や士爵などの位の低い貴族はあちら北側のオルセーの一般街に住む方達よりも敷居の高い邸宅を与えられています」


「貴族の方が多いのですね、ランベール卿は爵位はたしか侯爵、でお間違いなかったでしょうか?」


「その通りです。かのルーブル革命で御館様はトライユ公爵やロルジュ侯爵を始め志共にする貴族や多くの民達と正しきアルスを得る為に立ち上がり国を解放したのです」


「ルーブル革命を起こした一人って事ですか?」


「ええ、このオルセーの自治を始め首都ルーブルの顔役などこのアルスをより良い国にする為に様々な改革をした立役者の一人と言っても過言ではありません」


 鼻を鳴らして話すマルコフ。それを見た響介は街の様子も考えて今から会うランベール卿は民から慕われているのだなと思うとマルコフが少し複雑そうな表情に変え「ただ」と前置きを置いた。そこを


「その反面、放逐した王族貴族連中や商人達に恨まれている、と」


 敢えて響介がこう口にした。

 当たり前だ。大それた事をしたなら当然相応に恨まれない訳がない。それを聞いたマルコフは響介の言葉を肯定するようにこくりと頷く


「って事はキョウスケ。メアリーさんの事もその仕返しなの?」


「推測だけどなライミィ。ランベール卿が共和制になって一番最初に立てた政策は奴隷制度の廃止だ」


 それを聞いてライミィ達もピンと来たようだ。奴隷売買で利益を得ていた商人達からすれば食い扶持と商売先を奪われた形になる。そしてその法律は奴隷を買った者も同様の罪に問われる為多くの者がアルスで処罰された過去がありマルコフは


「キョウスケさんその通りです。メアリー様の誘拐はかつての奴隷商人とまだ国内に潜む元王族達による犯行と調べがついていてメアリー様をまだ奴隷売買が根付くマルシャンで売り娼館送りにしようとしていたようです」


「しょうかん?」


「エリーは知らなくてもいいからな」

「だね」

「その通りで御座います」

「?」


 響介の言葉にライミィとステラは同調していた。エリーは終始首を傾げていたがまだ11歳の子供が知っていい内容でも無い。そうしているうちにこの貴族街の中で一番大きい屋敷、この場合豪邸と言った方が相応しい邸宅の前に


「ほえ~すごーい」

「おっきい」

「これはまた見事な」


 マルコフが「こちらがランベール卿の屋敷で御座います」と説明してくれるとライミィ達は口を開けて豪邸を眺めていた。

 まぁ確かに貴族の屋敷なんて見る機会無かったからなと響介は改めながらライミィ達の見ている横ではマルコフが門にいる番兵に


「マルコフ、あの冒険者らしき者達は?」


「昨日御館様が仰っていた(くだん)の者達です。入館の許可をお願いします」


「出来ない。まずニオルド様に許可を得てからだ」


「何故です!御館様からはお通しせよとの申し付けの筈ですよ!」


「その者達が本当に件の者か分からないだろう。だから入館は許可出来ない」


 どうやら自分達の事で揉めているようだと響介は会話の内容から察した。助けられたマルコフからすれば焦れったいだろうが下手に口を挟んでも更に揉めるだけだと響介が思っていると


「屋敷の前で何を騒いでいるの!?」


 聞き覚えのある良く通る声が聞こえると豪邸を眺めていたライミィ達も声の方を見る。そこにやって来たのは


「お嬢様、申し訳ありません。マルコフが…」

「メアリーお嬢様。キョウスケさん達をお連れしました」


 番兵の言葉を遮ってマルコフがやって来た貴族令嬢、メアリーに報告するとメアリーは響介達に気付く、メアリーは笑顔になりブロンドの髪を揺らしながら


「まあ!キョウスケさん!ライミィさん!エリーさん!遠路はるばるお礼申し上げますわ!さあ御入り下さい」


 響介達に近づき屋敷へ招くとこの様子に番兵の2人は何処か気まずそうな顔をするとそれに気付いたメアリーはすれ違い様に何か耳打ちするとすこーし顔が強張っていた。それを見たライミィは響介に耳打ちする。


「あの人達に何ていったの?」

「今回だけ粗相は見逃すってさ」

「成る程」


 そうして響介達はメアリー直々に招かれ屋敷に案内され中へと入るとメアリーは響介達に向き合うとスカートの裾を摘まみカーテシーを披露し


「この度は遠路はるばる、私を助けて頂いた事を改めてお礼申し上げます。そしてようこそ私、我が父のランベール侯爵の邸宅へ」


 改めて挨拶をし響介達を出迎えたのだった。




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